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黒曜石の呪縛  作者: 紗 織
本編
22/129

<第22話> 島の名は・・・

義夫は、少し考え込むような表情をしていた。


それから周囲の様子を少し気にした後で、ギリギリ青野に聞こえるような声で、・・・つまり今までよりも随分小声で話し始めた。


「ふむ・・・。


 

 青野君は、警察になろうとしているような人だ。

 じゃあきっと条例が制定された原因と考えられている当時の事件が、一体どんな事件だったのかが当然気になっているよね。」


 

「ちょっと、ちょっと義夫君!!!」


 声をかけながら、なっちゃんが足早に店のカウンターから出て来た。




「んっ!


 どうしたっ!、なっちゃん?」


 急に店の奥からなっちゃんが出て来て、自分達のテーブルまで急ぎ足でやってきたので、義夫は驚きながら話を一旦中断した。




「もう少しだけ、話すのを待っていてくれないかな。


 ほらっ、店内の他のお客さんがちょうど帰る所だからさ。」


 なっちゃんは、お店のレジで精算をしている客の方へ義夫の視線を促すような仕草をしながら義夫と同じように小声になって話しかけてきた。


「ほらっ・・・、ね。」


 義夫にそう言うと、なっちゃんは店の入り口の方まで歩いて行き、店内の最後の客が出て行くのを笑顔で見送った。


 

 そして客が店からある程度離れたのを確認してから、店の外に掛けてあった『営業中』の札を外し、きっちりと扉を閉め鍵を掛けた。





「ね、すぐだったでしょ。




 あのね義夫君、『壁に耳あり障子に目あり』だよ。


 いくらなんでも、他のお客さんがいる店内で、条例違反なんかを堂々としちゃぁ駄目だよ。


 もしそれが原因で、うちが営業停止にでもなったら、どうするの?


 漁が終わった後に、美味しいビールとお昼が食べられなくなっちゃうよ。」


 なっちゃんはわざとらしく怒った素振りを見せた後に、すぐに笑顔に戻って言った。




「ごめんごめん。


そうか、なっちゃんのいたカウンターの中まで話が聞こえていたんだね。」




 「そうだよ。


  だから心配になって義夫君を止めようかどうしようかと迷っていたら、何やら深刻な顔をして急に小声になって話を始めようしていたから、『これは一大事!』と思って慌てて止めに来たんだからね。」


 

 「そうだよな・・・。

  確かにもしも俺のせいで店が営業停止なんて事になったら、本当に一大事だった。

  

  ごめん、なっちゃん!!」


 義夫が神妙な面持ちで謝った。




 「義夫君、本気で怒った訳じゃないよ。


  きっと大丈夫だよ。


  義夫君が原因でそんな営業停止になるような事、きっと無いと思う。


 

  義夫君は、カウンターの中まで話が聞こえちゃったって思っているんだよね。


  でもね、そうじゃないんだよ。 


 


  実はね・・・、私が気になっちゃったんだよね。



  だからこっそり近くまで来て、聞き耳を立てて聞いたんだよ。


  義夫君の話は、それでようやく聞こえた声の大きさだったよ。



  だってさ・・・、義夫君達がわざわざ奥のテーブルにまで移動してきて、一体何を話すんだろうってさ・・・。ごめんね。



 

  だからね、入り口の方に座っていた他のお客さんにまでは、当然聞こえてなんていないと思うわ。」



  なっちゃんが義夫に申し訳なさそうに言った。





 「なっちゃん、俺達の話が気になったのかい?


  そいつは、またどうして?」


  義夫が不思議そうにたずねた。




 「あらっ、当り前じゃない。


  わざわざ店内にまで入って来て何かを話し始めたのよ。 


  それだけで『何だろう?』って十分気になるにでしょ。」


  なっちゃんは、さも当然でしょという顔をしながら言った。




 「はっはっは、そうか、そりゃあそうだな。


  悪かった。最初から一緒にどうだいって俺が誘えば良かったな。


  じゃあ、今からでもぜひ加わってくれよ。」


  義夫は、あっけらかんと答えた。




 そしてここからは、新たになっちゃんも話に加わる事となった。





 「青野君、お待たせしたね。


  それじゃあ、今から黒バラ島の事件についての話を始めるぞ。





   『黒バラ島』



   いいや、本当の島の名前は、



   『()()()()()()





  条例制定のきっかけとなった旅行客の減少は、あの島で起きた殺人事件が原因だったんだ。」



  義夫は、真剣な顔で話しを始めた。








 「義夫さん、ちょ、ちょっと待って下さい。


  今、()()()()()()()()()()を何と言いました?


 


 『こ、()()()()()()


 ですか?



 あの・・・、『こきぃむ』ってもしかして漢字で『光輝夢』って書きますか?」



 僕は、あまりの驚きで頭が付いていけなくなりそうなのを必死に抑えながら、なんとか義夫に聞き返していた。


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