<第21話> 義夫の驚き
「でも、なんだかちょっと信じられません。
そんな条例が本当に制定されているだなんて・・・。」
青野は、条例についての感想を口にして、そのまま考え込んでしまった。
(『それにしても、そんな極端な内容の条例を制定しなければいけなかった、その当時の状況とは、いったいどんな事があったのだろう・・・?』
でもこんな僕の疑問をもし口にしてたずねてしまった場合、きっと義夫さん達は条例違反をして教えてくれる事になるのだよな・・・。
いや『きっと』なんて可能性の話じゃないだろう。
条例を制定しなければいけなくなった理由を聞くのだから、ここからがむしろ本筋って事じゃないか。
そんな条例違反のど真ん中であろう内容を聞く事なんて、初対面の僕に許される事なのだろうか・・・・。)
僕は結局、義夫さん達にこの先の話を聞く事を促す事も出来ずにいた。
しかしとても気になっていたので、自分のこの気持ちをどう処理すればいいのか戸惑いながらその場に立ちすくんでいた。
「そうなのですね・・・。
そんな条例が・・・。」
結局青野の口からポロポロと出てきた言葉に、自分でも驚くほど情けないものだった。
青野は、長く考え込んでしまったので、その間の会話を中断させてしまっていた。
それなのに、ほとんど先程と同じような内容の言葉をただ繰り返してしまったのである。
「青野君、どうしたんだい?
なんだか難しい顔をしているなと思っていたら、急にまたさっきと同じような事を繰り返したりして・・・。」
義夫は、青野の事を心配しながらそう言ってくれた。
「えっ。そんなに僕、難しい顔をしていましたか?
すみませんでした。義夫さんの話を伺って色々と考え込んでしまいました。
その・・・
『そんな条例を制定しなければいけなかった原因って、一体何だったのだろう』って・・・。」
(ああ。心の中の疑問を言ってしまった・・・。)
青野は、義夫の優しい言葉にちゃんと答えなければと、ついに促されるように心の中の疑問を義夫にたずねてしまった。
しかし条例違反を犯す事になるであろう『教えて下さい』という表現を使うことはどうしても出来なかった。
だから結局、今思っていた疑問だけをそのまま口にしていた。
「えっ!
もしかして青野君は知らないのかい?
俺はこの話をしたら、聞いた者はすぐに条例の原因となったあの事件の事を思い出すものだとばかり思っていたよ。
そうなんだな・・・。
俺たちにとっては、十年前に起きたあの事件の事も、条例の事も知っていて当然の事なのだが、旅行者で、まだ若い青野君にとっては、そんな十年も前の事件なんて知らないのが当然なんだな。
いやぁ正直、本当に驚いたよ。
話した自分が言うのも何だが、こんなにも認識が違う事が、こんな変な気持ちになるものなんだな。」
義夫が驚きながらしみじみと言った。




