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黒曜石の呪縛  作者: 紗 織
本編
12/129

<第12話> N県観光

 翌日からの調査状況も、芳しくない日々が続いていた。

 そうなってくると台頭してきたのは、N県観光である。


 N県は、日本史を選択していた自分にとって、実際に史跡を肌で感じられる街並みで、魅力に溢れた場所であった。


 N市のD島やG島は、江戸時代から戦後の日本経済の文化・工業の発展の歴史を見て回ることの出来る場所であった。


 D島は、想像していたよりも小さくて驚いたが、鎖国時代の雰囲気が再現された街並みが楽しかった。


 そして半日かけて回ったG島の雰囲気には、圧倒されっぱなしの迫力があった。


 高度経済成長時代の労働環境と説明されたが、頭の中には何故か映画のパズーが働いていた風景が浮かんできて、楽しく見て回っていた。


 N市の次は、H市の観光をした。鎖国貿易で栄えたこの街は、異国情緒が溢れた日本の城下町と西洋文化が混在した不思議な雰囲気の街並みだった。


 またこの街は、建物だけではなく更に自然も美しかった。

 文化遺産にも認定されている棚田も見たし、海岸の景色も格別で、観光には2日をかけてゆっくりと見て回った。



 その日の夜、ホテルに戻って部屋でゆっくりと過ごしていた。


 ベッドに横になり、今日の旅行風景を思い返しながら天井をぼんやりと眺めていたら、大学時代の友人との会話が頭に浮かんで来た。



 その友人は、体育会の空手部に所属していた。

 鍛えられた身体は見事で、Tシャツ姿が様になっていた。



 その彼は、いつもクロスのペンダントを身に着けていた。


 彼と仲良くなってから、彼がバンドの趣味も無く、男気に溢れた性格である事も分かると、僕の中では、ますますそんな彼に対して、アクセサリーを身に付けている事に違和感を覚えていた。



「ねえ、何故クロスのペンダントをいつも身に付けているの?」



 ピアスや指輪を付ける事は一度も無く、ペンダントのみをいつも身に付けている彼に、その疑問を聞いた時の事だった。


「これか?

何故って、俺がキリスト教徒だからだよ。」


僕の質問に、彼は、少し驚きながらあっさりとそう答えた。



 N県出身の彼が、その時教えてくれた。


 N県のキリスト教信者は、東京都と同じ位の人数がいるのだと。


 ただし、N県の人口は、東京都の十分の一位なので、信者の割合は、10倍いる事になるのだそうだ。


 彼の家族は、全員キリスト教徒で、生まれた時に彼は洗礼も受けているそうだ。


 僕らがランドセルにお守りを付けて歩くのと、自分がロザリオを身に着けている事は、同じような事だと、笑いながら彼は教えてくれた。



 『キリスト教徒』


 なるほど。

 言われてみれば、あっさり納得できる理由で、彼はロザリオを身に着けていたのだ。



 そうかぁ、街並みを歩いていて感じたけれど、彼の話を思い出してより一層そう思うな。

 N県はキリスト教の信者の数も多い県なんだよな。




 そう言えば、江戸時代には、迫害された事もあったんだよな。



 当時、隠れキリシタンと呼ばれながら、宗教を信仰し続ける為に、神様を隠す様にしながら町自体もひっそりと存続していた場所が点在しているのも、この地方のその時代の特徴を反映しているそうだ。



 S市は、江戸時代のキリスト教徒の反乱として有名な乱が起きた場所。



 そうだ。最後の観光は、S市にしよう。


 隠れキリシタンの村があった島々を回ったりして、当時の雰囲気を実際に感じて、今回の旅行を締めくくる事にしよう。



 僕は、最後の2日をS市観光をする事を決めて、眠りにつく事にした。


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