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第50話 赤子の名?素晴らしい以外の言葉が見つかりませんわ。



 『成程、そうゆうことだったのですね。』

 夜、食事も終え、寝室に戻ったジュリアと、それにつき従うフレイヤ。女官達は外で待機させ、いつものように結界を張るジュリア。少ししてウインド、アクア、ストーンが姿を現し、事と次第を説明した。さすがに時間を置いたからか、ウインドはすっかり落ち着きを取り戻し、いつもの平然とした顔でジュリア達を話しをしていたが、アクアとストーンはまだクスクス笑っている。

 「いい加減笑うのやめろよな!」

 そろそろフレイムの怒りの鉄槌が下されそうなので、アクアもストーンもなんとか笑いをこらえようとしている。

 「はぁー。なぁ、今からでも最初の方の姿にしねえか?今ならまだごまかせるんじゃないのか?」

 どうあっても前の姿の方がいいらしいフレイムはまだ駄々をこねている。

 「そんなわけにはいきませんわ。今更急に姿を変えられても説明に困るだけですもの。観念したらどうです?」

 当然、却下するジュリア。

 『ねぇねぇ。そんなに言うなら僕、1度見てみたいなー。』

 ストーンがプカプカ浮かびながら指をくわえてフレイムに言った。

 「あ?良いぜ。よーく見ておきな!俺様の絶世の美女姿をっ!!」

 「あ!ちょっと、止めた方が・・。」


 ボフンッ


 ジュリアの制止もむなしく、ジュリア達の前にメスゴリラが現れてしまった。

 『・・・。』

 『・・・。』

 『・・・。』

 それを見た3人は皆、固まってピクリとも動かない。

 「はぁー。だから言いましたのに。」

 「あ?何でだ?こいつら俺様が美しすぎて見とれているだけだろう?」

 ウインド達のこの絶句という反応を見てもなお、自身に満ち溢れるフレイム。

 「馬鹿なことを仰らないでくださいまし。皆、その姿に驚き、絶句しているだけですわ。」

 ジュリアがフレイムを諌めていると、真っ先にウインドが我に返った。

 『そ、その姿で最初は行こうとしたのですか?蘭妃の元に。』

 「ああん?悪いか?別に変なところはないだろう?」

 鏡を見て、確認するが、フレイム自身は至って本気でこの姿を美しいと思っているのだから、たちが悪い。

 『悪いのはお前の頭と目だ。そんな姿で他の者たちの前に出でもしたらあっという間に未確認生物として捕獲されるぞ!』

 「なにっ!!?」

 もはや人間認定すらされずに、ディスされたフレイムは本気でショックを受けている。

 『そ、そうだよ。それならまだあっちの姿の方が100倍ましだよ。薔薇妃、よくこれを許さず、あっちの姿にしてくれてありがとう。こんなの僕ら妖精たちの恥だよ。』

 続いて意識を取り戻したアクアがジュリアの肩をポンポンと叩き労った。

 『ほぉーんと、びっくりしたー。魂抜かれるかと思ったもん。凶悪すぎるよ、フレイム。その顔。』

 意識を取り戻した廃位がブルブルと震えだすストーン。

 「なんだよ!!そこまで言わなくてもいいだろ?!そんな言うならお前たちこそ立派に女に化けれるんだろうな!」

 散々悪口を言われ、半泣き状態のフレイムが叫ぶ。

 言われた3人は互いに顔を見合わせ、ボフンと音を立てて姿を変えた。

 「これくらいはお手の物でしょう。」

 「まぁ、妖精だしね。可愛い女の子に化けれないなんて、ありえないよ。」

 「んー。こればっかしはフレイムに問題があるとしか思えないよねぇー。」

 (まぁ!これはこれは・・・。フレイムの女性に変身姿がアレでしたから、正直あまり期待はしていませんでしたが。これはいずれ使えるやもしれませんわね。)

 3人の変身した姿を見て1人ほくそ笑むジュリア。



 「よう、なんだか賑やかだな・・って、なんだそれは。なんでここにゴリラの化けモンがいるんだ?」

 いつものように突然現れたジュダルが、フレイムを見て、目をパチクリとさせている。

 「なんだと?!俺のどこがゴリラの化けモンなんだよ!」

 別にフレイムの事を名指しで言ったわけでもないのに、すっかり自分の事だと思い怒るフレイム。まぁ、彼の事を言っているのは間違いないのだが。

 「いやー、妖精ってもんは化けるのを得意とするはずなんだけどなー。お前、才能ないんだな、フレイム。」

 (あら。さすがに分かりますのね。)

 ゴリラの化け物を見て、フレイムとすぐに当ててくるあたり、さすがは大賢者。

 「他の3人はちゃんと美人になっているのにな・・・って、なんでもう変身解くんだよ。」

 ジュリアが現れるやいなや、すぐに元の妖精姿にもどったウインド・アクア・ストーンの3人。

 『あの姿で貴女とあうと、身の危険があると感じましたので。』

 『ザ☆女の敵だもんね。。ジュダル。目が合っただけで孕まされそうだもん。』

 『お母さんに、ジュダルの前では女になるなっていわれてるからぁー。』

 (ストーンのお母様、大正解です。)

 3人の意見にこくこくと頷きながら同意するジュリア。だが、ふと気づくと目の前にジュダルの顔があり、心臓が飛び出そうになるほど驚き後ろに飛び跳ねた。

 「ななななな、なんですの?!」

 まだばくばく言っている心臓を落ち着かせながら、ジュダルと向き合う。

 「お前、絶対失礼なこと考えていただろう?」

 ぎくーんと身体が勝手に反応するジュリア。

 「ホホホっ何のことか分かりませんわ!あー、今日は熱いですわね。」

 パタパタと扇で仰ぎながら目を逸らすジュリア。

 「ほほーう?お前がそのつもりなら、エリザベスと赤子の事、お前に報告しないからな。」

 今度はジュダルの方もプイッと顔を背ける。

 「お、お待ちください!わたくしが悪うございましたわ。確かに少々失礼なことを考えてしまいました。許してくださいまし。」

 エリザベスと赤子のことが心配だったジュリアなので、ここは素直に謝っておく。

 「最初っからそういえばいいんだよ。ほんっと、かわいげがねぇんだから。」

 (別にジュダル様に可愛げなんて出したくありませんもの。)

 「なんか言ったか?」

 ジュリアの心の声に間髪入れず反応を示したジュダルにジュリアがブンブンと首を振って、真顔でジュダルを見つめる。

 「・・・まぁいっか。あんま時間もねぇようだしな。」

 「?」

 『時間がない』とジュダルに言われて、首を傾げるジュリア。別にまだ夜が明けるような時間でもないし、そもそも時間なんて気にするジュダルでもないのにそのようなことを言うなんて。何か違和感を覚え、ジュダルの一挙手一投足に気を配る。

 「とりあえず報告な?エリザベスもグレンも無事、ラージラス公爵邸にたどり着いたよ。それは盛大な歓迎を受けてな?その後すぐ、2人して家を出て、俺と落ちあい、赤子を受け渡した。公爵家には赤子を偶然拾って、かわいそうだから自分たちで育てることにしたってつたえたみたいだな。まぁ、既につかまり立ちぐらい出来るサイズだったから、説明するのにも苦労してたみたいだけど。」

 新婚の、それも結婚式の翌日に子供を拾ってくる夫婦なんて聞いたことがないと、公爵家は唖然としていたそうだ。

 「赤子も、『闇の魔力』と結構相性がいいらしくてな。特に今のところ魔力を暴発させるようなことはなさそうだぜ?ま、定期的に俺も見に行ってやるから、そこんとこは安心しな。」

 (別の意味での心配はしてしまいますが・・。)

 ジュダルと交流を持つことで性格に影響を及ぼさないか不安になるジュリア。

 「あ、因みに名前はヘンリーにしたらしいぜ?ラージラス公爵家初代当主と同じ名前らしい。」

 「それは・・とても良い名ですわね。」

 初代当主の名前と同じ名にするということは、彼らが赤子をまぎれもなくラージラス公爵家の一員として扱うという意思の表れだ。これで赤子が軽んじられることはないだろう。

 エリザベスとグレンの赤子を想う気持ちに感謝するジュリア。

 「んじゃあ、報告も終えたし、俺、そろそろ行くわ。」

 「え?もうですか?」

 いつもはジュリアが早くいなくなれと思っていてもずうずうしく居座るのに、来てからまだ1時間も経過せずして去ろうとするジュダルが不思議でならない。

 「あ?あぁ、ちょっとな。野暮用で。じゃーな。」

 特に説明をすることもせず、瞬く間に姿を消したジュダル。

 「ウインド、ジュダル様が何をあのように慌てておいでか、理由をご存知ですか?」

 答えをウインド達妖精に求めるが、4人とも首を横に振った。

 『ジュダルの事ですから、何か魔法に関することでしょうけれど。昔からあの者は何を考えているか分からないところがありましたので、私にも察することが出来かねます。』

 申し訳なさそうに言うウインドに、ジュリアは気にしない様に言い聞かせる。

 (何かよからぬことを企んでいらっしゃる様子ではないようですが、何か胸騒ぎがしますわね。でも、後宮を出るときに感じた胸騒ぎも結局は取り越し苦労でそこまでひどい事態にはなっていなかったようですし・・。気にしすぎ・・かしらね。)

 その日は結局エドワードも現れず、フレイムを残して3人の妖精も姿を消し、ジュリアはそのまま眠りについた。心配事もあったが、長旅で疲れていたのもあり、割とすぐに眠ることが出来た。




   ――――*――――*――――*――――*――――*――――*――――


 

 「おいおい、なんで後宮で奴の気配がするんだ?」

 深夜。後宮の中心の庭で、ジュダルがぼそりと呟く。その顔にはいつもの余裕な表情はない。

 「一体誰が・・。まさか、アイツが?」

 ジュダルは心当たりの人物がいるであろう方向をジッと見た。そして、何かに気づき、ジワリと額に汗を浮かべた。

 「まじかよ・・。この時代でも、あの悲劇を起こそうって言うのか?それとも他に何か目的があるっていうのか。」

 頭を乱暴に掻き、その場にしゃがみ込む。

 「ったく、仕方がねぇ。アイツにも相談しておくか。気はのらねぇが、奴が相手となると俺1人じゃ無理だしな。」

 しばらくしゃがみ込んだ後、スッと立ち上がり、もう一度ある1点を見つめた後、ジュダルは姿を消した。

 ジュダルが見ていた方向、そこは咲く時期が過ぎ、すっかり花が落ちてしまった牡丹の庭の先の、牡丹妃の間だった。 

50話です!(番外編やプロローグなどを除き)

この後続けて登場人物紹介を投稿します。

あまりまとめることが出来ず、登場人物紹介にしては少し長めの紹介分になってしまいました。

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