↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/78

第49話 女装の延長?使えるモノはゴリラでも使いますわ!



 「おい、なんであんなこと言ったんだよ。」

 蘭妃の間のから帰る途中、まだ女装姿を解くことを許されていないフレイムがジュリアの1歩く後ろをゆっくりと歩きながら聞いた。

 「どのようなことですの?」

 振り返ることも足を止めることもせず、聞き返すことだけをするジュリア。

 「何で、俺が、今後もこの姿で蘭妃と会うことを許したのかって聞いたんだよ。」

 「あぁ、そのことですか。」

 フレイムがこうも不機嫌を露にしている理由。それは、蘭妃の間を出る際にクリスティアナに言われた言葉。

 『できれば、今後、薔薇妃様が私と共に早朝の鍛練をする際、そちらのフレイヤという女官の方もお連れいただけませんでしょうか。是非お相手願いたいのですが。』

 という頼みごとに対して、ジュリアが二つ返事で了承したことだ。

 「別に構わないではありませんか。これからフレイムにはその姿でしばらく後宮にとどまって頂くことになるんですもの。」

 「何っ?!どうしてだ!もう蘭妃の疑いも解けたから、元の妖精の姿に戻って監視を続けた方がいいではないか!」

 青天の霹靂とはまさにこのこと。フレイムはこの姿がどうも気に入らないらしく、蘭妃の間にいる際もずっとそわそわしていた。クリスティアナに姿を見せ、先日の気配の主がフレイムだと分かったのなら、これ以上この姿でいる必要もないと思い、安堵していたところにこの延長指示が下ったのだから。

 「甘いですわ。まず、貴方をわたくし付きの侍女と紹介したのだから、それをわたくし付きの女官達が知らないわけにはいきませんわよね?あぁ、大丈夫です。彼女たちへの説明はすべてわたくしがいたしますもの。次に、女官長マリア様へも説明をします。女官達を取り仕切る彼女もしておくべきですし。」

 「おう、それくらいなら構わないが、ひとしきり説明を終えたら、もう姿を消しても構わないだろう?あまり長くこの姿で居続けるほうが色々とまずいと思うぜ?」

 確かに、がに股でそのように乱暴な言葉遣いの侍女がいれば、良くも悪くも目立ってしまい、身動きが取れにくくはなると思うが。

 「紹介したばかりで姿を消す侍女がいるものですか!最低でも1週間はいて頂かなくては。」

 「何故だ!元々俺はお前たちが後宮を離れている間だけの助っ人要因という設定だろう?ならもう、俺はお払い箱のはずだぜ?」

 「確かにそのように設定を設けましたが、実際には助っ人として女官達の手助けをしていない貴方を女官達に何と説明すればよろしいのですか?大丈夫です、わたくしに全てお任せいただきましたら、悪いようにはしませんわ。」

 口ではどうあってもジュリアに勝てないと、フレイムはがっくり肩をおとし、しぶしぶジュリアに従うことにした。

 (ふふっ。上手くいきましたわね。これで蘭妃様に対しての駒が増えましたわ!)

 ずっとジュリアの背中を見ていたフレイムには分からないだろうが、ジュリアの顔は悪だくみをする悪女そのものであった。

 (蘭妃様のフレイムを見るときのあのお顔。どのような種類の物であれ、少なからずフレイムに好意を抱いているお顔でしたもの。これは利用するに他ありませんわ!)

 ジュリアがほくそ笑むのも無理はない。側室達に対して少しでも良いカードが欲しいジュリアにとって、クリスティアナがフレイヤの姿をしたフレイムに送る尊敬や憧れのような視線は喜ばしいものだったからだ。図らずともクリスティアナに対して好カードを手に入れるきっかけが出来たジュリアが、それを見過ごすはずがない。


 『あれぇー?フレイムみたいな女の人がいるー。』

 突然、ボフンと音を立ててジュリア達の前にストーンが姿を現した。

 「あら。ストーン、もうお加減はよろしいんですの?」

 セシリアのせいでもっか体力回復中と聞いていたジュリアなので、とりあえずその身を案じる。

 『うん、もうだいじょーぶ。』

 にこにこふんわりしているストーンに癒されるジュリア。

 『ところで、そこのフレイムみたいな女の人はだぁれ?』

 ふわふわ浮かびながらストーンがフレイムの前に行く。因みに彼ら妖精はジュリアの前に姿を現しても契約している人間以外には妖精の意志なしでは姿が見えないようになっている。もちろん中には妖精との相性がよかったり、魔力が高い人間の中には、その気配を感じたり、姿を捉えることも出来るようだが、魔力が高いと言ってもエドモンドやジュダルレベルでなければならないし、相性がいい人間は同じくらい稀少だ。クリスティアナがフレイムの気配を感じ取ることが出来たのは、ジュリアと一緒に鍛練をしたせいで魔力が上がったことと、探知能力に優れていたこと、そしてなにより彼女がフレイムと同じ火属性だったことが要因だ。故に、

 「うるせぇぞ、ストーン。」

 自分の姿が見えていないはずの侍女にこういわれて、ストーンは目を丸くした。

 『あれぇ?なんでこの人僕の事が見えてるのー?』

 くるくると観察するようにフレイムの周りを浮かびながら回るストーン。

 「当たり前ですわよ、ストーン。何故なら、この方はフレイム本人ですもの。」

 ジュリアを見て、その後フレイムに視線を移したストーンは少しの間、ボーっとフレイムを見ていたが、すぐに満面の笑みを浮かべた。

 『えー?これ、フレイムなの?なんで人間の姿になってんのー?しかも、女の人だなんてっ!クスクス。』

 『何々?なんか楽しそうじゃん?』

 ストーンの笑い声につられてきたのか、アクアもその場に姿を現した。

 『うっわ!きっも!!何コレ、フレイムなの?うける!!何でこんなことになったの?』

 アクアは一目見て、フレイムと気づいたらしい。本人の前で大爆笑している。

 「なっ!!だから、俺はあっちの姿の方がいいって言ったんだ!!いいか、お前ら、俺は本当はもっと美人に化けれるんだからな!おい、笑うなって!!」

 フレイムの制止も聞かず、ストーンとアクアは笑い続けている。

 『なんですか、騒々しい。このようなところで立ち止まって、一体何を・・・フレイム?』

 遂にウインドまで現れてしまった。アクアと同じくすぐにフレイムに気づいた彼は普段はその表情をほとんど崩すことがないのに、一瞬固まった後、盛大に噴き出した。

 『す、すごい恰好ですね・・。ブフっ・・あ、貴方の趣味ですか?』

 何とか平静を保とうとするが堪えきれず笑いが漏れるウインド。フレイムは顔を真っ赤にしてプイッと顔を背けてしまった。

 「もう、こんなところで全員大集合なんてして、下手に目立つと困りますわ!一旦薔薇妃の間に戻りますので、ウインド達は先にそちらへ向かってくださいまし。」

 ウインド達の姿が他の人に見えないからといって、誰もいないところに話しかけるジュリアやフレイムが誰かの目に目撃されたのであれば、頭のおかしい人認定をされるに違いない。ジュリアの指示に素直に従った

3人はすぐに姿を消した。そのままジュリアはフレイムを連れて薔薇妃の間に向かって行った。



   ――――*――――*――――*――――*――――*――――*――――


 

 「ふあー・・。おっきい方ですね。」

 開口一番間抜けな顔でフレイムを見上げるルカ。

 薔薇妃の間で、突然大女を連れ帰ってきた主に困惑する女官達。

 「皆様、ご紹介いたしますわ。こちらはフレイヤ。わたくしの実家の方に仕えている侍女ですわ。」

 ジュリアの紹介の後、ぺこりと頭を下げるフレイム。

 「父の指示によって、ちょっと悪さをしていたところを、わたくしが捕まえてきましたの。」

 「えっ?勝手にこの人後宮に入ってきたんですか?!」

 女官達は彼女たち専用のネットワークがあり、大抵の事は共有できるようになっている。下位の側室ならまだしも、薔薇妃の侍女を後宮に入れたのであれば、その噂はすぐに広まるだろうし、何よりここにいるのは薔薇妃付きの女官。彼女たちに知られずして後宮に入れるわけがないのだ。

 「それが、父がこっそりいけない手を使って後宮入りさせたようでして・・・。わたくしの実家とはいえ困ったものですわ。一応明日、女官長様にはご説明に伺います。おそらく彼女も知らぬことでしょうし。ただ、その悪さの過程で蘭妃様や蘭妃様付き女官の方々にフレイヤの存在を知られることになってしまったの。きっと早いうちにこのフレイヤの話が出回ると思いますわ。フレイヤには1週間後にはここを出て行ってもらう予定です。それまで貴女方と一緒にこちらで働くことになりますが。もちろん、その間悪さをしないよう、わたくしが徹底して説教をしましたので、その点については安心してくださいまし。」

 一通り説明しきると、再びフレイムがペコリと頭を下げた。

 「ブラスター侯爵様がですか・・。あの御方ならやりそうですけれど、薔薇妃様は大丈夫なのですか?」

 心配そうにジュリアの表情を伺うユーリ。

 「何がです?」

 「僭越ながら、先日拝見させて頂いた限りではブラスター侯爵様はかなり困った様子の方、という印象を受けました。彼女はもしやブラスター侯爵様の密偵ではないのですか?」

 (あら、中々鋭いですわね、ユーリ。悪さをしたと言うことしか申してませんのに、その悪さの内容が密偵と気づくなんて。)

 正しくは監視をしにきたことにしている、だが。ジュリアの設定をこうも簡単にくみ取るなんて、中々出来るなと、ジュリアは感心していた。

 「それに、ブラスター侯爵様がなさったこととはいえ、それはすべて薔薇妃様の評判に繋がってしまいます。この件で薔薇妃様が悪く言われないか心配で・・・。」

 それは他の4人も同じ思いらしく、皆一様に頷いていた。

 「ご心配にはおよびませんわ。彼女がもしわたくしの意に反することをするのであれば、死ぬこと以上に恐ろしい目に遭ってもらおうかと思っていますし、それにこれしきの事でわたくしの立場が揺らぐことはございませんもの。多少の悪口は捨て置いて構いませんわ。」

 本当に、ジュリア自身としては痛くもかゆくもないので、心からの言葉で女官達を安心させた。

 「フレイヤの1週間の間の行動につきましては、わたくしと行動を共にしてもらいます。その方がわたくしの監視の目が届きやすいですし。この娘が仮になにか起こそうとしましても、止められるのはわたくしぐらいでしょうしね。」

 ジュリアとフレイヤを見比べて一回り以上も大きいフレイヤと止められるのだろうかと再び心配し始める女官達。だが、すぐにジュリアの能力と、指にはめた魔石のことを思い出し、それ以上心配することはなかった。

そろそろ登場人物が溢れすぎているので、次回は50話と共に、登場人物紹介を投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。