第11話 冒険者登録
「アリルさん達、また会えるかな」
「タケルさん!生きていればまた会えます!それに市場が見えてきましたよ?お買い物しなくて良いんですか?」
そうだ。僕たちは冒険に出たんだ。
もっとこの世界を、ミリアとの旅を楽しまなきゃな。
「そうだね…。あ、魚を売ってる店だよ!」
「お魚さん!島でもたくさん見ました!」
「うん、でも色味が違うね」
「そうなんですか?なるほど、土地が違えば獲れるものが違うんですね…」
そう、ミリアは色などは判別できない。
僕がそこら辺はしっかりしないと!
「くんくん…。あ、良い匂いがしてきましたよ!」
鮮魚市場が過ぎ、屋台が多くなってきた。
焼いた魚や、少ないが肉を焼く店もある。サンドイッチやホットサンド、生の果物をカットして売っている店もあるようだ。
「お昼前だけど何か食べてみようか」
「!そうしましょう!」
「ミリアはどういうのが食べたい?」
「お肉!お肉が良いです!」
肉か…。
以外かと思うかもしれないが、ミリアは肉食派だ。
この世界の教会は清貧とは縁の無いようで、食べるものには制限が無い。
お酒はあんまり勧められない程度らしい。
「魚は島でも船でも毎日食べてたからね。すみませーん!この串焼き2本ください!」
屋台のおじさんは屈強な海の男!って感じだったが、焼いているものは普通の串焼きだ。
「お、にーちゃん、声かけてくれなかったら俺から呼ぼうかと思ってたぐらいだぜ。これはなジールって言う焼き串だ。この国じゃ珍しくないぜ」
「へえ、ジールって言うんですか。おいしそうです!」
「“そう”じゃなくてうまいんだって!ははーん、にーちゃん達、さては外の国からだな?待ってな、今焼き終わるやつ食わしてやるから!」
そう言うと何度もやって手慣れてるであろう手捌きで焼かれていた串を取り、何かの粉末をかけるとこちらに手渡してくる。
「ほら、彼女にも食わしてやりな」
「ありがとうございます!」
もらった串を一本ミリアに手渡す。
ミリアは瞑っていた目を見開いて、感激した様子。
「おお…、これが夢にまで見た”買い食い”ですね!」
「島には出店とか買い食い出来るお店無かったもんね」
そう、ワルート島には観光客がいないことから出店が無かったのだ。
島生まれ島育ちのミリアは買い食いを初めてすることになる。
「――!おいひいでふ!」
口に手を当てながら美味しいことを報告してくれる。
どれどれ…。
少し固めの肉は脂身が少なめで噛み応え抜群だ。ピリッとしたスパイスとハーブだろうか爽やかな風味が加わってなんとも言えない味わいだ。
…まあ、実際は日本の夏祭りの屋台で食べた串焼きよりは美味しくないが、この世界の料理にしては雰囲気込みで最上位だ。
「おいしいな!うーん、もう2本ください!」
「…え?私もう十分ですよ?」
「アイテムボックスに入れておくのさ。これでいつでも熱々で食べられるでしょ?」
すると、その会話を聞いていた店のおじさんは、僕を呼び止める。
そして小声になって耳元でこう囁いた。
「にーちゃん、あまり人前でアイテムボックス持ってること言わない方がいいぜ」
「え?そうなんですか?」
「ああ、外国じゃどうか知らねえが、ここらではアイテムボックス持ちなんて居ねえからな。悪い大人に聞こえる前に口を噤んどくんだな」
そうか…、島では悪い人なんて一握りだったし、一捻りだったからな…。
そういう悪い人も居るんだと思って気をつけないと…。
おじさんの店から離れた僕らは路地裏に入って、人目につかないところで串焼きをアイテムボックスにしまった。
「市場を抜けたことだし、町の中心部に行こうか。冒険者ギルドに登録しないと」
「そうですね。お腹はいっぱいです」
所持金は金貨19枚と銀貨9枚、銅貨4枚である。
串焼きは2串で銅貨3枚だった。4串頼んだのでこうなっている。
「冒険者ギルドに登録したら、冒険に必要なものを買いに行きましょう。島では品揃えがなかったので、ここならあるはずです」
「そうだ。遊びに来たわけじゃないからね」
町の中心街に出てみると、広場があり、そこに面するように冒険者ギルドがあった。
「あそこだね」
「どこですか?」
「あの左右対称な三角形になっている大きな建物だよ」
「ああ!あそこですね!」
正面に立ってみるとその大きさが異様だ。
島には二階建てなんて領主の家くらいだったが、それと比べても大きい。
もっと大きな町ではもっと大きいそうだ。
大きな両開きの押戸を開く。
ギルドの中は意外と静かで、武器を携帯している人や、フルプレートの鎧を纏った人も数人いる。
正面奥のカウンターに向かうが、周りからの視線が刺さる。
そんなムードの中、受付嬢に話しかける。
「ギルドに登録したいんですが」
するとギルドの中が一気にうるさくなる。
「おい、あいつ冒険者になるんだと!」
「聞いたよ、笑えるな!」
なるほど、そういうことか。
「嬢ちゃんもか?」
「まさか、見たところ尼さんだぜ?見物だろうよ」
わいわいガヤガヤとうるさいな。
それにミリアの事なんて言った?
自分のことならいざ知らず、ミリアのことを笑われると虫唾が走る。
少し実力を見せるか。ここに居る奴らなら簡単に後ろを取れるだろう。
気配を探り、足運びを見ればすぐわかる。
すると――
「私のことなら良いですが、タケルさんを貶すなんて許せません!」
次の瞬間ミリアが消えたかと思うと、開口一番に笑った冒険者の前に現れたかと思えば、持っていた魔法具兼鈍器のメイスで股に向かって振り上げる。
一閃、僕のことを笑った冒険者5名が股を打ち抜かれ、床に突っ伏し転がり回る。
そして、ミリアの事を笑っていた冒険者は顔を青くして、急いでギルドから出て行く。
ミリアはその光景を見てもなお、ぷりぷりと怒っていたので、頭をなでておく。
それから静かになったギルドで登録料銀貨1枚ずつ払って登録をする。
Gランクかららしい。
あ、そうそう、ミリアのことだが、彼女は僕と同じくらい強い。
体術や武器のみを使えば僕が勝つと思うが、魔法まで使われれば負けるのは僕だろう。
魔力の流れや風、振動が見えるのだ。
人や生物、動くものは魔力が伴って動く。
体より先に魔力が動くので、それが見えるミリアは強い。
島にいたときも、ちょくちょく訓練していたし。
しかし、今日のミリアは…
「ミリア、今日手加減してたな」
「え!?わかりました?もう!さすがタケルさん!これ以上タケルさんを好きにさせてどうするんですか!」
そんなつもりじゃなかったんだけどな…
クネクネするミリアを連れて、冒険者ギルドを後にした僕らだった。




