第54話 凍てつく森、開幕
新しい一日、新しい冒険の始まり。
白銀の世界に足を踏み入れる、その瞬間──
ログインと同時に世界が静かに動き出す。
ログインした瞬間、耳に飛び込んできたのは、いつもと違う澄んだ鐘の音だった。
カァーン──……と静かに空気を震わせ、続くようにワールド全体に響き渡るアナウンスが、
天から落ちるような音色とともに流れ始めた。
《【イベント告知】
限定エリア“凍てつく森の来訪者”が開放されました。
専用ワープポイントからの入場が可能です。
エントリー条件:レベル15以上のプレイヤー。
報酬:限定装備・称号・探索アイテム……他》
ギルド前の広場に降り立ったシアンは、周囲を見回し、
ログインしてくる他プレイヤーたちの興奮やざわつきを肌で感じる。
「……いよいよだな」
隣にぴょこんと現れたロアスも、どこかそわそわと地面を見つめていた。
いつもより少しだけ、気温が低い気がするのは気のせいだろうか。
噴水広場の中心には、イベント用の巨大なモニュメントが出現していた。
きらめく氷の結晶でできたゲートがそびえ立ち、青白い光がゆっくりと脈打っている。
その中央にある台座に手を置くと、ぬるりと空間が揺れるような感触が手のひらを包んだ。
──画面がふっと切り替わる。
そこには、一枚の幻想的な“映像”が広がっていた。
まるで現実のドローン映像のように、上空から森を映した視点。
深く覆われた森一帯が、氷と雪に包まれていた。
冷たい風が木々を揺らし、凍りついた湖面をそっと舞う雪が横切る。
白銀と蒼の世界。
その中心には、巨大なクリスタルのような塔が静かにそびえ立っていた。
「……これが、イベントフィールド……!」
静かに、そして確かに。
この映像は、プレイヤーたちに「これから始まる特別な冒険」を印象づける演出だった。
そして、画面に文字が重なる。
《準備が整い次第、“凍てつく森”へ入場してください。
※ワープ後のエリアは危険地帯です。十分な準備をおすすめします。》
画面が元に戻ると、ワープゲートの結晶が淡く点滅していた。
シアンはロアスと顔を見合わせ、そっと頷く。
「行こうか、ロアス。……俺たちの準備は、もう済んでる」
ロアスがぴょんと一跳びして、彼の足元へ並ぶ。
意を決して、結晶ゲートへ手を伸ばす。
白い光が視界を包み──
シアンとロアスは、“凍てつく森”へと旅立った。
いよいよイベント開幕回
幻想的な雪の映像、ワールドアナウンス、ワープ演出と、オンラインゲームならではの演出要素をふんだんに詰め込みました。
次回はついに“凍てつく森”の探索開始!
シアンとロアスがどんな冒険を繰り広げるのか、お楽しみに。
次回更新:18時予定




