第55話 白銀の森、ロアスと共に
踏み入れた先は白銀の世界。
静けさの裏に潜む危険と、美しさの中に眠る可能性。
始まったばかりの雪国探索、その第一歩。
白く、眩しい世界だった。
ワープ直後、シアンとロアスは“凍てつく森”の入り口に降り立った。
地面はふかふかと雪に覆われ、足元が少し沈む。頬を撫でる空気は鋭く、肌にピリリと冷たさが走った。
「……思ったより、寒いな」
用意しておいたローブをぎゅっと閉じながら、シアンは辺りを見渡す。
雪に覆われた針葉樹の森が視界を囲み、空は曇天。明るいが、太陽の温もりはない。
足元にいたロアスは、ふわふわと雪をかきわけて進んでいく。
その様子があまりにも軽やかで、思わず笑みがこぼれる。
「おまえ……平気なんだな、寒さ」
ロアスはぴょこんと振り返って一声鳴いた。
その体には、一切の寒冷デバフが表示されていなかった。
シアンの視界には、【状態異常:軽度の冷気ダメージ/スタミナ回復速度低下】のアイコンが点灯していた。
確かに、スタミナゲージの減りが通常より早い。
「これが……雪国仕様ってやつか。なるほど、スタミナ管理が重要になるな」
シアンはさっそく、持ってきた回復アイテムのひとつ──「温かいハーブティー」を選び、鑑定スキルを起動した。
《温かいハーブティー》
・体温上昇【中】(15分間)
・スタミナ自然回復速度【小】上昇
・寒冷デバフ一時解除
「これだな……こういうのがないときついかも」
口に含んだ瞬間、体の芯からじんわりと温まる感覚が広がる。
デバフ表示がゆっくりと消えていき、スタミナの消費速度も落ち着いてきた。
ロアスはというと、ぴょんぴょんと先を進みながら、木の根元に顔を突っ込んでいた。
ひとつの木の根から、小さな赤い実をくわえて戻ってくる。
「お、何か見つけた?」
赤い実の情報を調べるため、シアンは再び鑑定スキルを発動。
《氷雪のベリー》
・食用可。微量ながら魔力を回復
・凍結耐性【極小】を一時付与
・採取から30分以内に使用しないと凍る
「魔力回復用……かつ、凍結耐性。こいつはありがたい」
さっそく数粒をアイテムストレージに保存し、ロアスにも頭を撫でて礼を言う。
森の道は複雑に入り組んでいたが、イベントマップの初期エリアということもあり、プレイヤー向けに細い“踏みしめ道”が続いていた。
が、そこに油断があった。
ガシャン──!
突如として、足元の雪が抜けるように崩れ、シアンの身体が数十センチほど沈む。
すぐにロアスが横から引っ張ってくれたが、視界に罠の表示が浮かび上がった。
《冷気トラップ:踏み抜き型》
・低確率で発動
・寒冷デバフを強化し、凍結状態(5秒間)を誘発
・ロアスには無効
「なるほどな、トラップまで寒冷特化ってわけか……」
シアンは気を引き締め、ルートを少しずらして進み始める。
森を抜けた先、小高い丘の上には、雪で屋根が白くなったログハウスのような“村”が見えていた。
その手前に設けられたゲートには、雪の装飾がされた看板がぶら下がっていた。
《ようこそ、“雪霜の村”へ》
村はまだ静かだったが、これから多くのプレイヤーが訪れることになるだろう。
シアンとロアスは、そこへゆっくりと足を踏み入れた。
今回は“凍てつく森”探索の最初の一歩
寒冷デバフや鑑定スキルを活かしたフィールドの知恵比べが始まりました。
ロアスは寒さに強い設定、今後の活躍にもご注目!
次回更新は18時予定




