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第34話 鍋のはじまりと、パンプキンの香り

必要なものを揃えて、初めて料理が形になる。

今日はその「はじまりの日」。


「……鍋がないと、作れないな」


ギルドから受け取ったレシピには、使う道具まで細かく書かれていた。

シアンはパンプキンポタージュの材料を確認しながら、必要な道具――「鍋」の購入を決めた。



街の道具屋に足を運ぶと、NPCの店主がにこやかに迎えてくれる。


「お、君はギルドでよく見る子だね。料理道具かい? それなら初心者向けの鍋があるよ」


カウンターの奥から差し出されたのは、手頃なサイズの銀鍋。火加減に応じて熱が均一に伝わる設計らしい。

値段も手ごろだった。


「……これをください」


料理ギルド所属でなくとも、NPCとの会話はスムーズだ。

アップデート後の“感情豊かな応対”が、こうして少しずつ世界の輪郭を広げていく。



食材は昨日、厨房の片隅でもらった余りものを使う。

かぼちゃ、ミルク、香辛料――冷蔵保存していたため、状態もよかった。


街外れの噴水広場。風が穏やかな午後。

シアンは鍋をセットし、火加減を調整しながら丁寧にかき混ぜていく。

鍋の中から漂う甘くてほっこりする匂い。


やがて、香ばしいパンプキンポタージュが完成した。


そのときだった。


「……いい匂い」


ふいに背後から声がして、振り返ればそこにはロアスがいた。

人の目を避け、こっそり近づいてきたらしい。


「……食べるか?」


差し出されたスープを、ロアスは静かに受け取る。

ひとくち、口に運んだそのあと――


「……おいしい」


ぽつりと落とした言葉が、空気に溶けていった。


会話はそれ以上、続かない。

けれどこの時間が、ゆるやかに何かを繋いでいく。


道具を揃え、初めてのレシピを自分の手で完成させる。

小さな一歩だけれど、それが「この世界で生きていく」という感覚を育てていくんですね。


この物語は 毎日18時に更新 しています。

シアンとロアス、そして少しずつ広がる“味とつながり”の旅路を、これからもよろしくお願いします。


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