第33話 それでも、ひとりでいたい理由
踏み込みすぎない、でも繋がっていたい。
そんな関係も、きっとある。
「なあ、シアン。一緒にパーティ、組まないか?」
クエスト帰りの草原の風が吹き抜ける中、ユイがまっすぐにそう言った。
隣ではレントも頷いている。
「俺ら、今日だけでも手応えあったし。氷魔法とテイマーって、面白い構成だと思うんだよな」
「……ありがとう。でも、俺はパーティは組まない」
シアンの返答は、やや間を置いて返された。
驚いた様子のユイに向けて、シアンは淡く笑う。
「でも、また会えたら話したい。……友達として」
それ以上、何かを言う前にシアンは静かに立ち上がり、ロアスを連れて歩き出した。
ユイとレントはその背中を見送りながら、少し寂しそうに、でも納得したように頷いた。
「……不器用だな、あいつ」
「でも、ちょっと羨ましいよ。あんな風に信じられるものがあるのって」
*
その日の夕方、シアンはギルド酒場の受付にいた。
「厨房手伝い、ね。ちょうど空きがあるわよ」
そう言われて通された厨房には、スキル使用可能な作業スペースが整っていた。
氷魔法を使って冷却処理をしたり、料理スキルでスープの味を整えたり――。
厨房での仕事は静かだが、どこか心が落ち着く。
シアンにとっては戦場とは違う“自分を生かせる場所”だった。
「明日もお願いできる?」
「……はい」
そうして二日間、ギルドの厨房で働いた報酬として、彼は新たなレシピを手に入れる。
――【獲得:レシピ《パンプキンポタージュ》】
魔法と料理の交差点に、またひとつ、新しいページが加わった。
一緒に戦える。でも、同じ方向を向いて歩くわけじゃない。
そんな関係の“優しい分岐点”でした。
この物語は 毎日18時更新 です。
ロアスとの距離、シアンの歩み。これからも見守っていただけたら嬉しいです。




