第32話 氷と剣と、火加減と
出会いが情報を生む。
言葉が知識をつなぎ、経験が力になる――そんな一幕。
「へえ……氷魔法って、料理にも応用できるんだ?」
広場近くのベンチで、ユイが感心したように声を上げた。
その隣でレントも「冷蔵庫いらずってやつか」と頷く。
「応用……というより、スキルの相乗効果だった。氷魔法スキルと料理スキルで“氷結保存”が出た」
「マジで? それ、超便利じゃん。保存系アイテムって序盤めっちゃ高いし、時間で腐るし」
「戦闘はどう? 氷って当てづらそうだけど」
レントの問いに、シアンは短く「確かに」と返す。
「詠唱は早いが、動く相手に当てるのは難しい。けれど、魔力操作を覚えてから、少し感覚が掴めてきた」
「操作系スキルか……地味だけど、絶対必要だよね」
しばらく言葉を交わし、自然な流れで【野犬討伐】のクエストを受けることになった。
野外に出ると、風が冷たい。日が少し傾いてきて、地面にロアスの影がのびる。
草原を駆ける影を見つけた瞬間、シアンの指先に力がこもる。
「ロアス。左へ回り込め」
ロアスは無言のまま頷き、地を蹴った。
一瞬のうちに敵の背後へ回り込む。
「――《フロストスパイク》」
シアンの詠唱と共に、冷気を帯びた氷の槍が敵の動きを封じた。
ロアスの蹴りが直後に入り、動きを封じた敵は簡単に倒れた。
「連携……できてるな」
「すごい。やっぱ氷って、当てれば強いんだな……!」
ユイが目を輝かせて言った。
レントも「戦い慣れてるな、シアン」と素直に感心している。
シアンは少しだけ口元を緩めた。
他者とともに動く戦闘。その感覚が、どこか心地よかった。
氷は使いこなせば強い。けれど、それには“繋がり”が必要だ。
そんなことを少しずつ理解していく回でした。
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