第六話 16
「太太には申し上げたの?」
熙鳳は周のおかみに尋ねた。
「姑奶奶のご指示をお待ちしておりました」
熙鳳は言った。
「ちょっと様子を見てきてくれる? もし来客があったり、用事がおありだったら仕方ないけれど、お暇なようだったらお考えを聞いてきて」
周のおかみはうなずくとそのまま出て行った。
「お客さまに果物をお持ちして」
熙鳳が言うや、数名の小丫鬟が出て来て山盛りの果物を三皿、炕へと捧げ持ち、劉ばあさんと板児のところまで給仕した。
「お孫はいくつにおなりなの?」
果物が卓に置かれたころ、熙鳳が聞いた。
初めてまともに尋ねられ、劉ばあさんは狼狽し、板児の歳が浮かばなくなってしまう。
「おまえ、今年でいくつになったかね?」
劉ばあさんはそう聞くが、板児は果物を食べるのに夢中なためか、幼い子ども特有の人見知りを発揮しているのか、劉ばあさんにもきちんと答えようとしない。
仕方なく劉ばあさんは少し時間をかけて指折り数え、
「六つでございます」
と小声で答えた。
「あら、うちの娘と同じじゃないの」
熙鳳は驚いたように言う。劉ばあさんは図らずも話のきっかけができたことを嬉しく思い、口を開こうとする。だが熙鳳が続けて、
「でも、ちょっと違うところもあるわ」
とため息交じりに言うのに、劉ばあさんはさきほどのやり取りを思い出し、暗い顔になってしまう。
「お宅のお子は今にも駆け回りそうなほどにお元気なのに、うちの娘ときたら年中風邪ばかりひいておりますのよ。今日も咳が出て止まらなくなってしまったので、お医者にお見せし、別の室で休ませているところで……」
と言うので、何かいたわりの言葉をかけなければと考えていたところ、室に下人の媳婦たちが大勢報告にやってきた。平児が取り次ぐと、熙鳳が言った。
「今はお客さまとお話しているから、晩にお願い。急ぎの用ならこの場で片付けます」
平児は媳婦たちを連れて出ていくと、すぐに戻ってきて言った。
「急ぎの用はありませんでしたので、そのまま帰らせました」
熙鳳がうなずくと、周のおかみが戻ってきて言った。
「太太がおっしゃるには、今日は手が離せないので、二の奶奶が応対してくださればそれで十分です。わざわざお気遣いありがとう。もしお越しいただいただけなら構いませんが、何か御用があれば二の奶奶にお伝えください、とのことでした」




