第十六回 20
賈璉はうなずく。
「太上皇と皇太后は今上陛下をこうお称えになった。『これこそ孝心の至り、純なる仁と言えよう。これこそ体天格物、天を体し、物に格る行いであろう』と」
趙ばあやは頭をひねりながら言った。
「難しいことはよく分かりませんが、大そうお褒めになったのですね」
賈璉はゆっくりと首を横に振る。
「それだけではありませんよ。このお二人の老聖人はさらに御旨を下された」
「それはどういった……」
「妃嬪の親族が宮中に入るとしても、きっとそこには“国”の影が差し、儀礼がその交情をさえぎるのは免れない。母と女が心ゆくまで語り合うことはできないだろう」
王熙鳳はつぶやいた。
「……そのとおりね」
「そこでさらに格別の恩賜がなされ、後宮の妃嬪の殊にやんごとなき外戚に向けて御旨をくだされた。さきほどの恩典にくわえ、幾棟もの楼を有し、別院のある家で、御駕をお迎えして、それをお護りするにふさわしい備えのある家であれば、内廷に願い出て、妃嬪の御輿をお迎えしても構わない」
きょとんとしている趙ばあやに、熙鳳がささやく。
「妃嬪をお迎えできる広さの邸で、別院があり、妃嬪の御輿をお守りすることができれば、賈家にもお迎えできるということです」
「……はあ」
賈璉は再び咳払いをした。
「こうすれば骨肉の私情を尽くすことができる。天倫の中の至性とはこのことだ」
熙鳳が心配そうな趙ばあやにささやく。
「こうすれば母子が仲睦まじく過ごせるだろうということです」
賈璉はしみじみと言った。
「この沙汰を聞いて喜ばない者はいないよ」




