第十一回 25
上房の戸を丫鬟がゆっくりと開く。
主である熙鳳が家へ戻ったのを見るや、平児はすでに暖めておいた家常的衣服に着替えさせた。
「家の方は変わったところはなかった?」
熙鳳が聞くと、平児は茶を差し出しながら言った。
「特にこれといったことはありません。あるとすれば、三百両の銀子の利銀を旺児の媳婦が持ってきたので収めたくらいです」
「……そう」
熙鳳は髪を結いなおしながら答える。
「それから瑞の大爺さまが人をよこして奶奶がおられるかどうか尋ねてまいりました、ご機嫌をうかがいに参りたいとのことです」
淡々と平児は述べたが、熙鳳は手を止め、ふんと鼻を鳴らして言った。
「あの畜生! 身を滅ぼすのは決まってああいうやつよ。のこのことやって来たら……、どうなるか見ていなさい!」
平児は首をかしげた。
「どうして瑞の大爺さまは奶奶に会いたがっているのでしょう?」
熙鳳は平児に背を向けた。
「ことの始まりは九月、寧府の寿辰の祝いの宴からなのよ……」
平児は前かがみになってことのいきさつを聞いていたが、聞き終えると歯を食いしばりながら言った。
「『蝦蟇が白鳥の肉を欲しがる』とはこのことですわ。人倫もわきまえぬ輩がよりにもよってそんな考えを起こすなんて、きっとろくな死に方はしないでしょう!」
熙鳳は言った。
「あいつが来たらどうするかちゃんと考えているから」




