表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
繰り返しの元聖女は聖騎士改め暗黒騎士を守りたいのに溺愛される  作者: 氷雨そら
第3章 理は崩れていく
55/63

氷のメイドは思い出と決別する

ご覧いただきありがとうございます。氷のメイドのターンです。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 エリーゼは追い詰められていた。魔獣を操るフローリアは、序列四位を名乗っていただけあって剣の腕すら超一流だった。とどめを刺されると覚悟したその瞬間、フローリアの動きがぴたりと止まる。


 フローリアは手袋を外した。その手に埋まっていたはずの魔石は粉々に砕け散っている。


「ああ……間に合わなかったですわ。……エリーゼ、これから何が起こるか、貴女は理解していますの?」

「何を……」

「ヒトはこれから魔獣と己の力のみで戦わなくてはならないのですわ。ヒトビトが代償さえ支払っていれば、理の恩恵を受け続けることができたのに」

「何を言って……」


 フローリアの表情には、それでも絶望は見られない。むしろその顔は喜びと覚悟を前面に表していた。その笑顔はすべて旧知の仲であるエリーゼへと向けられていた。


「魔獣を使役する力は、理外れのこの魔石によるものですの。もう、この魔獣たちは私の命令を聞くことはないのですわ」

「フローリア……貴女は」

「ふふ。争うのはもうお終いですわ。私の願いは叶わなかったですの。ここは、私が引き受けることに致しますわ。……お行きなさい、エリーゼ。あなたの望む未来へ」


 そういうと、フローリアは魔獣と戦い始めた。その姿はまるでエリーゼを守るかつてのフローリアのように見えて。


「……っ。なぜ今になって!フローリアお姉さまは、私だけをあの時の惨劇から助け出して!まだ私、何もあなたに返すことができていないのに!」


 エリーゼは叫ぶ。どうして自分たちはともに戦うことができなかったのかと。


「あの時もっと私に力があれば、貴女の家族は今も生きていましたわ」

「それは私だって!」

「ふふ。最後に貴女とまたこんな風にお話しできてうれしいですわ。でも、もう私たちの未来は離れてしまいましたの。貴女は貴女の信じる方法で大切な人を守りなさい。エリーゼ」


 フローリアの決意はもう変わることがないと。エリーゼは、選ばなくてはいけないことを理解する。自分の大切な人たちを守るためには、すべてを手に入れることができないのだと。


「……さようなら。フローリアお姉さま。貴女への恩は忘れないわ」

「忘れてくださって構わないのですわ。幸せな明日を生きるために」


 エリーゼは走り出す。リディアーヌを守るために。そして、少し頼りないのになぜか全員から絶対の信頼を受けているあの男が助けに来るために必ず戦線を維持してみせると決意して。


 エリーゼの持つ短剣から、氷と水の魔力が同時にほとばしる。彼女を止める魔獣はもういない。属性という彼女の弱点は、すでに彼女の最大の武器になっているのだから。


「バル!1週間といったわね。遅れたら絶対に承知しないわ」


 そう呟くと美しい氷と水を散らしながら、吹雪のように残酷に時に美しくアイスブルーの髪の毛をゆらしてエリーゼは魔獣の中を駆け抜けていった。

最後までご覧いただきありがとうございました。


【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブクマ、感想など頂けるととてもうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ