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繰り返しの元聖女は聖騎士改め暗黒騎士を守りたいのに溺愛される  作者: 氷雨そら
第2章 闇の聖女と暗黒騎士は未来を塗り替える
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勇者の剣たちの作戦会議

お越しいただきありがとうございます。ブクマや★評価、感想をくださった皆さま。本当にありがとうございます。

 

 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「それでは作戦を話し合うか。まず、リディアーヌ、アルフリート。知ってる情報は、全て話してもらえるか?」


 勇者は、城の一室にある円卓にキサラギ領の地図を広げた。既にその地図には赤いバツ印がいくつかつけられている。


 アルフリートが口を開く。


「魔獣の出現箇所は、その時によって違いました。ですが、桁違いに強いのは黒い龍と魔石を額に埋め込んだ3匹組の魔獣です」


 今、円卓を囲んでいるのは勇者シンジ、アルフリート、リディアーヌ、執事ギルマン、ギュンター。そしてもう一人、妖艶な美女がいる。


(この人、4回目と5回目で会ったことがある。直接戦ってはいないけど、ギュンターさんと一緒にいた)


「魔石の魔獣は、人を食べます。倒せないと、王都が襲われます。おそらくその前に、キサラギ領の人々も……」


 2回目の最後を思い出す。あれは、恐ろしい体験だった。思い出すだけで震えてくる。


(2度とあんな目には会いたくない。誰も会わせたくない)



 すでに、共有事項としてリディアーヌが人生を繰り返していることを、ここに集まった者は理解している。


「4回目と5回目の人生では、黒龍は既に倒されていました。そのあと出会い戦いになった時、ギュンターさまは、2回とも片目を失っていました」

「ふーん、片目だけの損傷で黒龍を倒すなんて、やはり対魔獣戦では超一流だな」

「……400年前、無傷で倒した御方が言ってもな」

「…………無傷では、なかったさ。身体は無事だったが、俺はあれで半分以上成り果てた」


 おそらく、400年前も勇者は黒龍と戦ったのだろう。そしてその死闘の末、世界の一部を忘れてしまった。そこから先は……。


(2回目の時のアルフリートさまも、あのままギュンターさまに倒されずに戦い続ければもしかしたら)


「すまないな。リディアーヌとアルフリートが、壊れずに魔王にたどり着くのが闇の聖女誕生の絶対条件だった。あの時の俺も、黒龍をひとりで倒してしまったアルフリートを生かすわけにはいかなかったのだろう。……俺を憎むか?」


 そこまで黙っていたアルフリートが口を開いた。


「リディアーヌ様が、あのような形で繰り返していたのを救ったのが貴方です。憎むことは出来ません。しかし、次に魔王に成り果てれば俺が屠ります」

「死ねない俺を、か?」

「死だけが世界とのつながりを断つ方法ではないでしょう?貴方の女神のように」


 その呼び名が出た時、勇者は暫し俯いた。そして外見に見合った爽やかさで微笑んだ。


「そうか。その時は頼むよ。アルフリート」


(勇者さまとアルフリートさまは、同じ宿命。もしアルフリートさまが……)


 リディアーヌの手を、アルフリートが強く握ってくる。見上げると、夜空と月のような瞳がこちらを見ていた。


「なりませんよ、俺は。貴方を悲しませたくはないですし、俺が死ぬと貴方も死ぬ。そんなの俺が赦せる筈ないでしょう?」


 他のヒトが聴けば、呪いのように思える、2人の命を繋ぐ魔法。けれどソレは、いつも互いに自己犠牲的だったアルフリートとリディアーヌを変えていく。歪んだ理が、少しずつ少しずつ綻んでいく。


 既に魔王に成り果てて聖女とともに消える筈だった魔王は、勇者に返り咲いた。


 黒龍を倒し、魔王になる筈だったアルフリートは、勇者の剣となった。


 愛するヒトを忘れ、魔王を倒す筈だったリディアーヌは、闇の聖女となり未だ愛するヒトのそばにいる。


 綻んだ理の先に、何が待っているかは誰にもわからない。しかし、運命の歯車は廻り続ける。その先の未来へと。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 勇者やアルフリートは、まだ作戦を練っている。会議室を一足先に出たリディアーヌに、先ほどの妖艶な美女が声をかけてくる。


「闇の聖女様。私、序列四位、フローリアと申しますわ」

「フローリア様、私はリディアーヌと申します。どうぞよろしくお願いいたします」

()聖女様、私の生まれた村は理外れが多くおりましたの。……これを見ていただきたいですわ」


 元聖女、という言葉に少しの引っ掛かりを感じながらも、リディアーヌはフローリアから差し出された手を見つめた。


 シュルリとその手にはめていた黒い手袋が外されると、その手の甲には紫色の石が埋まっている。


「いかん!フローリア!」


 高い幼い声が聴こえた気がしたが、世界が歪んだような感覚にリディアーヌは、思わず口を押さえた。


「代々の聖女と聖騎士は、理外れを次々と処断していきましたわ。今は過去、聖女の命により私の村も火を放たれましたの」

「フローリア、なんということを」


 黒髪の威厳がある幼女が、リディアーヌに駆け寄る。


「私は聖女などと共に戦えませんわ。長老がこの場におられたのは残念ですの。聖女と聖騎士を千載一遇の好機に仕留め損ねてしまいましたわ。それでは、ご機嫌ようですの」


 そう言って、フローリアは消えた。

 グルグルと混濁する意識と、強い吐き気。何度も繰り返すリディアーヌには、死が迫っていることが理解できた。


「転移の宝珠か。……大丈夫。死なせはせぬ。そなたは、わしらの希望なのだから」


 長老の体から、黒い焔が溢れ、リディアーヌを包んでいく。その焔は、悍ましい見た目と違い、柔らかく暖かかった。



最後までご覧いただきありがとうございました。ブクマや感想、★評価いただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 夜空と月のような瞳、ずっと見つめてしまいそうです^_^ [気になる点] リディアーヌが?!長老ー!信じてますよ〜(ToT)
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