先輩悪役令嬢に聞く、婚約破棄は回避できる!
深夜テンションです。
今回、我々は乙女ゲーム規定路線である、婚約破棄を見事に回避した公爵令嬢Aさん(現在は王太子妃)から、お話を聞くことが出来た。
ーー不躾な質問ですが、乙女ゲームの悪役令嬢と気がつかれたのは?
「十三歳の時ですわ。流行り病にかかり、高熱で死にそうになったんです。その時、あっと気がついた感じですわね」
ーー十三歳ですか。では、まだ婚約は、されていなかった?
「はい。一応、候補には、あがってはいたのですけど、数人のうちのひとり、という感じでした」
ーー悪役令嬢と気がついた時、どう思われました?
「そうですわね。簡単に言えばショックでしたわ。私の所業で、うちの家が没落するなんて。家格的にあり得ないとは思いましたが、私の父はその、厳格すぎて敵の多い人ですから、きっかけがあればあり得るのかもと。さすがに、私、ひとりならまだしも、家族を巻き込むわけにはいかない、と思いました」
ーーそれで、どうなさったのですか?
「とりあえず、婚約者になるというのを回避しようと思いまして。ゲームでは、王立学校の、魔法専科に進むところを、一般学部に進むことにいたしましたの」
ーーつまり、魔法の勉強をやめたということで?
「ええ。貴族としては、ある程度の魔法の知識が必要ですので、婚約者になる条件の一つではあったのです。ただ、私、それほど魔法は昔から好きではなくて。家族は反対しましたけど」
ーーどのように説得されたので?
「これからの時代、貴族たるもの婦女子といえども、領地経営のノウハウは必須。魔法で領地経営はできません。地に足をつけた学問こそ、必要だと説得いたしました」
ーーご家族はなんと?
「父はすぐに納得してくれましたが、母は、そのような学問は縁談の邪魔になるのではないかと、最後まで反対してました」
ーーしかし最後には、ご母堂も納得されたと?
「そうですね。実際、私に魔法の才があまりないことを、母は知っておりましたので」
ーーなるほど。つまり、ゲームの舞台である王立学校の『魔法専科』に立つことを回避なさったと。
「はい。殿下と無縁の生活を選べば、婚約者にはならない。婚約者にならなければ、破棄されることもないと」
ーーしかし、実際には、殿下と出会われてしまった。
「はい。王国祭の仮面舞踏会に呼ばれまして。私も公女ですから、行かないわけにはまいりませんでしたので」
ーー流行のドレスではなく、ご自身のデザインされたドレスをお召しになられたとか。
「はい。自分としては、壁になろうとしましたの。ただ、かえって目立ってしまったようですけど」
ーー殿下の美しいプロポーションが際立つデザインということで、社交界でドレス革命がおこったドレスですよね。
「本当に、あの反響は計算外でしたの。レースも宝石も最低限しかつけなかったんですもの」
ーードレスをお作りになられたとき、ご両親は反対されませんでしたか?
「最初は、眉を曇らせてましたわよ。ただ、仮面をつけて楽しむ会ですもの。こういうシンプルな装いをしていれば、いつもと違う景色が見えるのではないかと説得しましたの」
ーーその会場で、殿下にお声を掛けられたと伺っておりますが。
「はい。そうですわね。一曲だけということで、ダンスを踊りましたわ。そのあと、少しだけお話をして、私は早々に帰ったのですけど」
ーー王太子殿下は、殿下に一目ぼれされたという噂ですが。
「……(お顔を真っ赤にされる殿下)」
ーーその後、すぐに縁談があったとうかがっております。
「……はい。私は自信がないということで、しばらく保留にさせていただいたのですが、何分、父の立場もありますので、お断りできなくて」
ーー最初は断りたかったと?
「だって、婚約破棄からの没落コースなんて、嫌じゃないですか。ヒロインちゃんは何をしているのかな、って思って、仲を取り持ってあげようとまで思ったんですけど」
ーーヒロインさんとは?
「はい。仲の良いお友達になりましたのよ。私、もともとあのゲームのヒロインが大好きで。実際の彼女も本当に素敵な女性です」
ーー恋のライバルにはならなかった?
「そうなんです。彼女、好きな男性が他にいたんです。ずっと彼女を守ってくれていた方だそうなんですけど」
ーーずいぶんと、ゲームと違う流れになっていた、ということですね。
「はい。それがわかっても、殿下との婚約は、私にとっては呪いのようでした」
ーーそのお気持ちが、変わられたのは?
「実は、おかしな奴と思われることを覚悟で、包み隠さず、婚約破棄の話をしたんです。そうしたら、殿下が、それなら、自分が王太子をやめると言いだしまして……」
ーーというと?
「そこまで、ゲームから現実がズレてしまえば、私の呪いは消えると。その時、私、本当に自分が愛されていることを知りまして。私も、先のことがどうなっても、この方を守りたいと思ったのです」
ーーなるほど。
最後に、これから『悪役令嬢』に転生されるであろう、みなさまに、何か一言。
「そうですわね。とにかく、自分に正直に。そして人を信じることが未来を変えたのだと思いますわ」
ーーありがとうございました。
続く……かもしれない。