鼻出血
始めにレイヨが登ることになった。腕を怪我しているので、下から押し上げる必要があると考えたからだ。ダクトに登る足場になりそうなものを探したが、不安定なものばかりで使えそうもなかった。仕方がなく、菊池が彼女に肩車をすることになった。菊池はダクトの穴の下に片膝をついてしゃがんだ。
「それじゃ、乗って」
彼女が彼の肩に跨ってきた。ミニスカートからスラリと伸びた足が彼の首に当たり、菊池は赤面した。
「それじゃ、立つよ」
彼女の足首を掴むと、ユックリと立ち上がった。
「う・・・お、重い」
彼が想像した以上の負荷が足腰にかかってきた。
「失礼ね!私はそんなに重くないよ!」
しかしウェット・スリープで足腰が弱くなっている彼にとっては、レイヨの体重は十分に重く、ヨロヨロとふらついてしまった。
「きゃ!いや!」
彼女は彼の頭にしがみつき、必死に太ももで彼の首を絞めた。
「く、苦しい・・・」
すぐに菊池の顔面がうっ血して真っ赤になった。彼は跪くと、ミニスカートから伸びた彼女の足を叩いて緩めるように合図をした。
彼女は我に帰ると、すぐに足の力を緩めた。菊池は大きくむせ込んだ。眼には涙が滲んでいた。
「あ、ごめん。大丈夫?だって、怖かったから」
「ゴホっ、だ、大丈夫。それじゃ、もう一度やるから、手が届いたら急いで上に掴まって。そしたら押すから」
彼は再び彼女を肩車すると、今度は壁に手をついてゆっくりと立ち上がった。彼女は手を伸ばして穴につかまると、身体を引き寄せた。
「それじゃ、そのまま穴に入って」
「わかった。でも、絶対に上は見ないでね。約束だよ」
「わかってるから、は、早くしてくれ!」
レイヨは穴の中を見た。所々の換気口から部屋の光が入り込んでいて、薄ぼんやりとだが中が見てとれた。それほど汚れてはいないようだ。菊池は彼女の足を抱えて持ち上げ、穴まで押し上げた。そして彼女は片腕でダクトの壁を押さえながら、上半身を穴の中に滑り込ませた。彼女の足が彼の首から抜けたが、彼は下着を見ないように下を向いて更に足を押し上げた。
その時、彼女の手にヌルっとした物が触れた。
「きゃー!」
彼女は思わず悲鳴を上げた。
「どうした!」
菊池はびっくりして思わず上を見てしまった。すると眼の前にミニスカートの中の白い下着が露わになっていた。
「うわ!」
彼はあわてて仰け反ってしまい、後ろに倒れてしまった。思いっきり尻餅をつき、尾てい骨を直撃した。電撃痛が頭のてっぺんまで響き、一瞬動く事ができなくなった。
「イタタ。だ、大丈夫か?」
彼は呻きながら、彼女を確かめた。彼女は穴から下半身を出したままぶら下がっており、足をばたつかせてぎゃーぎゃーと騒いでいた。
「助けてー!タカヨシ!助けてー!」
彼は自分の尻をさすりながら立ち上がると、彼女の足を掴んで押し上げようとした。しかし、ばたつかせている彼女の足に顔面を蹴られて、彼は再び呻くことになった。
「お、落ち着け、レイヨ!今助けるから、足を動かすな!」
彼女は足の動きを止めた。体がずり落ちてきて、服がヘソまでまくれ上がっていた。彼は急いで彼女の両足を抱えると、そのまま穴に押し込んだ。
「ふう。なんとか上がれたな」
菊池はその時になって初めて鼻血が出ている事に気かついた。




