第16話『影虎の記憶武装』
『影虎の記憶武装』
第16話:語り手 vs 忘却者
記録の墓所。
崩れゆく書架の海の中で、《白書》を手に入れた影虎たちは、語りを拒む影《無言》と対峙する。
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無言との邂逅
黒衣の存在は、足音すら立てずに現れた。
その全身は、まるで“影虎自身の影”が巨大化したかのようにも見える。
> 「語るな。
物語は呪いだ。記録は檻だ。
おまえは、“誰かの語り”に支配されている」
無言が手をかざすと、周囲の記録の断片が砂のように崩れ始める。
誰かの思い出、夢、後悔、それらが名もなく消えていく。
> 「おまえは“語られている”と気づいていないだけ。
記憶は物語に変わった瞬間、他者のものになる」
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影虎の反論
影虎は《白書》を強く握る。
その表紙は、まだ何も書かれていない“真っ白な物語”。
> 「俺は……俺自身の物語を語りたい。
誰かに決められたんじゃない、“自分が選んだ言葉”で語り直したいんだ!」
《白書》が淡く光を放つ。
記憶の光景が空中に再構成される――
幼い灯りを背負って歩く影虎。
ミコトと共に、雨の都市を駆け抜けた日。
記憶を喰らう敵と、戦い、逃げ、生き残った“軌跡”。
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戦闘:記憶の再構築 vs 忘却の霧
無言が手を振るたびに、“語られた物語”が壊れていく。
影虎の《白書》はそれを“語り直す”ことで再構築し、守り抜く。
> 「俺たちの記憶は……ただの過去じゃない。
今を生きる意味だ。俺はそれを、語り続ける!」
白書のページがめくられるごとに、過去の仲間、失われた町、封印された記憶武装が幻影として現れ、力となる。
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灯りの“語り”
ふと、灯りが影虎の背に手を添えた。
> 「私も……語る。あなたと歩いた物語を」
灯りの《灰鎖》が共鳴し、《白書》と結びつく。
語り手が二人になった瞬間、記録の空間に“言葉の雨”が降る。
“語られなかった記憶たち”が喜びに震え、静かに響いた。
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決着:語りの力
白書の最終ページが開かれる。
そこに綴られていたのは、ただ一つの言葉。
> 「これは、俺たちの物語だ」
その瞬間、《無言》の黒衣が裂けるように消滅する。
その奥にいたのは――
小さな子どもだった。
口を開かず、ただ震えていた“語られなかった少年”。
> 「……ありがとう。
誰かが、語ってくれた」
彼は静かに微笑み、記憶の光となって消えた。
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終焉、そして再開
《ムネモシュネ》が崩壊を始める。
> 「ここは“語られた”ことで役目を終えたの」ミコトが説明する。
影虎たちは急ぎ脱出する。
記憶の空間が、物語となって、完全に世界に“定着”する直前だった。
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エピローグ:旅の再始動
記憶武装《白書》を携え、影虎たちは地上に戻る。
> 「これで全部、揃ったんだよね? 七つの記憶武装と、“語る力”」
イリスが頷く。
> 「残るはただ一つ――“あなた自身の記憶”の封印を解くことです。
全ての武装を揃えた今、いよいよ《原初の地》へ至る鍵が揃いました」