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祭り

 どうしても祭りを見て回ると人目についてしまう。

 それは仕方のないことなのだろう。

 シィルは少し苦笑しつつ目の前のマリナを眺めていた。

 その優雅なドレス服姿は祭りという人混みにいてもなお目立ってしまう。

 しかもその周りを兵士たちが守っているからなおさらだ。


 しかし、それでもマリナの楽しそうな顔を見ると普段はこういったことができないだろうし、仕方ないか……と理解はできた。



「シィルさん、こっち、こっちにきてください!」



 マリナが大きく手を振っていた。

 何かを見つけたようだ。仕方ないなとシィルがそちらに近寄るとそこにはさまざまな生き物の形をした飴細工が置かれていた。



「とっても綺麗です……」



 その一つ、透明の鳥をうっとり眺めていたマリナ。

 流石にここまで細かいものだと値がはるのではないだろうか?

 値札がないものかと見ていたが、どこにも張られていなかった。



「すみません、これの値段って……?」

「おや、もしかして坊ちゃんはポーションを売ってる子かな?」

「はい、そうですけど?」



 どこから広まっているのだろう?

 そのことを少し不思議に思いながらも頷くと屋台のおじさんはにっこりと微笑んだ。



「よし、なんだったら坊ちゃんのポーションと交換でもいいぜ!」



 親指を立てて笑みを浮かべてくれる。

 もしかすると自分に気を使って安い値段をつけてくれたのかもしれない。

 シィルは頭を下げてお礼を言うとカバンからポーションを一つ取り出しておじさんに渡す。


 その代わりにマリナが見惚れていた飴細工を受け取るとそれをそのままマリナに渡す。



「えっと、あの……本当にいいのですか?」



 少し動揺したようでなかなか受け取ってくれないマリナ。



「えぇ、構いませんよ」


 

 シィルが笑みで返すとマリナの顔は花が開いたような笑い顔になる。

 頬を紅潮させ、感動のあまり体を震わせていた。

 そして、それでも堪えきれずに思わずシィルに抱きついてしまう。



「ありがとうございます、シィルさん」

「い、いえ、それはいいのですけど……」



 シィルは慌てて彼女を引き離そうとする。

 素直に離れてくれたもののリウ達からは冷たい視線を送られる。

 あれはきっと自分たちの分はないのかも言っている目だ。


 シィルは助けを求めるようにおじさんの方を見る。

 するとおじさんは苦笑を浮かべてさらに人数分の飴細工を渡してくれた。



「こいつはサービスだ、取っといてくれ」



 そのおじさんの心意気に感謝しながらその飴細工を受け取るとおじさんに何度もお礼を言いながらその屋台を後にした。

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タイトル

『大賢者は休みたい ~最強の賢者は転生しても頼られる~』

あらすじ

『最強の大賢者マグナスはたくさんの依頼に追われ、慌ただしい毎日を過ごしていた。


休みも取れず心身ともに疲れ果て、そのまま倒れるように眠りにつく。するとそこは自分の知らない場所だった。


つまり誰も自分ことを知らないこの世界……。


「よし、この世界ならゆったりと過ごせそうだ!」


それでも彼の力に気づき、取り入ろうとする人々は現れる。

しかしマグナスはそれらを躱し、全力でぐうたら生活を送ろうと決意する――。』

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