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最弱召喚者は這い上がる(凍結中)  作者: 多田野箱
地の底編
7/35

一難去ってまた一難…ありえなくね?

流石に長いよなって思ったので分割してみました。

 現在一行は今回の訓練の終わりの階層である30層までやってきていた、ダンジョンウォルタの階層的に言えばまだここで約三分の一だ。ウォルタを含めてダンジョンは全て100層以上の階層を保有していると言われている今までで一番奥へと進めたのは昔の勇者であるマーキュリーが到達した71層と言われている。

 階層が上がるにつれて凶悪性も上がるトラップは魔物と同じく再出リポップすることはあるが28層までは確実に網羅されている。しかしここは30層、罠にかかる心配は少ないが所々にはあった。

 30階層の探索はそれまで来ていた時とと同じく先頭を行く小司たちと団長達騎士団員数名だった。しかし急に立ち止まり、兵士の一人が強い個体が出た際に合図として使うとダンジョンに入る前に言っていた赤く光る鉱石が掲げられた。

「気をつけろ、もしかしたらこの階層にいたボスモンスターかもしれん。半年前にここに来た時にはちゃんと討伐されていたはずだったが…まさか再出か?」


 団長がそう言った直後、すぐ近くの右の曲がり角から3ートルはある人形の何かがぬっと出てきた。

 しかし体は鱗で覆われており、顔はトカゲで手には2ートル程のやや錆びた大斧を持っている。その古びた斧のが歴戦の猛者という雰囲気を醸し出し、それを全身の力強い筋肉が尚更強調していた。


 そしてその魔物は前衛にいる小司や団長達を見つけるやいなや息吸い込み

「ぐぎぃぃやぁああああああああああああ!!!!」

 通路に響き渡る程の強烈な雄叫びを上げた。それは生物の本能とも呼べる感覚に作用し、その咆哮をモロに浴びて前衛組は硬直してしまう。

 その隙に前衛の生徒に攻撃しようとする魔物だったがすぐに後ろから出てきた男子生徒数名や朝日、騎士団の兵士数名に防がれる、さすがは朝日、男気が溢れ出ている。

 朝日達が攻撃を受け止めてすぐに動き出した小司たちだったが足がまだふらついている。咆哮がよほど堪えたようだ、朝日も斧を受け止めた剣からの衝撃で手がジーンとなったのか剣を落としそうになっていた。

 これはつまりあの魔物は小司や朝日の力ではまだ力不足だということだ。

 今の状況では非常に分が悪い、言い換えれば劣勢、数の暴力でどうにかならないかという思考が一瞬頭をかすめたが団長の動揺しながら放たれた言葉にすぐに打ち砕かれる。


「お前らは逃げろ!!もしものことがあれば私は国にこの首を渡さなければならなくなる。あれはボスモンスターと呼ばれている強力な魔物、リザードマンだ!体は鉄並みの硬度を持った皮膚で覆われていてランクは金だ!まだお前らのレベルじゃ敵う相手じゃない!私が倒すから、巻き込まれないように後退しろ!」


 あの陽気で最強な団長が切羽詰るってどんだけの魔物だよ、と広成は思ったが先ほどの小司たちの姿を見て確かに…と納得する。ここまでは超がつくほどに順調だったがここはダンジョン、次に何が起こるか一切分からない場所だというのを今まで忘れていた。

 さらにその一言で周りの生徒たちが小司でも敵わないなら勝てない、とパニックに陥り始めた。


「俺も戦います!やられたらやり返さないと、それに団長も置いていけないんで」


「気持ちは嬉しいんだが駄目だ!あれはお前のレベルじゃまだ歯が立たん、でもとかだっては要らない、俺たち騎士団はさっきも言ったとおりお前らを全員無事に国へと返さなきゃならんからな」

「…わかりました、下がってます」


「うぉっと!…それでいい、タロン、皆を誘導してやれ。あと小司、お前も皆をまとめろ」


 見た目からして破壊力抜群の大斧をブンブンと棒の様に振るリザードマンの攻撃を捌きながら指示を出す団長、本当に凄いの一言だ。


「了解っす、皆さんこちらです!付いてきてください!」


 タロンと呼ばれたひょろりと縦に長い男が敬礼した後にクラスの全員に声をかけて誘導する。


「皆この人に付いて行くぞ!、ここは団長達兵士の人が対応するから、でもせめてもの助けに強化魔法は掛けといて」と小司も次いで号令をかける。

 その一言で落ち着きを取り戻した生徒の何人かが身体強化魔法を団長にかけている、その他の生徒たちも落ち着き始めてるのを見ていると、やはりこういう時にはカリスマ性MAXの小司が便利だと言える、むしろ小司教でも出来そうなくらいだ。

 全員が走って30階層に来た時の階段に来た。しかし小司は途中で「やっぱり一人であの人一人置いていけない、俺見てくる!」と一人で勝手に行ってしまった。

 タロンは「あーもう、しょうがないっすねぇ。まぁ団長のことだからもうそろそろだろうけど…」とつぶやいていた。

 なんのこっちゃい?と広成たちが首をかしげて尋ねた所トロンから「あの人、団長はこのベルラーラで毎年開かれている剣術大会で20歳の時からの22年間ずっとチャンピオンに君臨してるんっすよ、しかも自分の傷は入っても掠り傷程度の傷に留めて」と驚愕の事実が語られた。

 この話を聞くまでは判断力に優れた陽気な男と思っていた広成たちだったが実はベルラーラが抱える物凄い人物だった団長に思わずぶるっと震え、じゃあ、あのリザードマンは・・・と全員の思考が一致する。


「皆さんが想像している通りっす。試合と違って強化魔法も入ってるっすから今頃あのリザードマンはお陀仏のはずっすね」

 

 これからは団長に逆らわないようにしよう、そうしよう。


 広成含む生徒たちがそう決心を決めた直後、小司がハァハァ言いながら帰って来て「大変だ!団長が…団長が…」というので何事!?と聞くと何と「リザードマンを圧倒してて、挙げ句の果てに首を切り落として勝ったんだ!!」とクラスの皆が「あぁ・・・それは・・・」となる事実を言ってきた。その後小司にこのことを説明するとえぇっ!?と面白い反応が取れたという。



 リザードマンを倒したところに行くと案の定団長がピクリとも動いていないリザードマンの上にどっしりと座り、斧を観察していた。


「この斧の材質は鉄鋼鉄てっこうてつか、柄の部分からは鉄に少量の・・・」とブツブツと鉱石の名前を言っている。かなりの量の血が相まって絵面がガチ目に怖い。


「おっ…お前らか、何回か攻撃を受けてしまったが倒せたぞ。前はこんな攻撃は余裕で躱せたんだがなぁ…俺ももうステータスが下がるような歳か?しかしこの斧、人間にもちゃんと装備できるみたいだ。結構重いが早速帰ったら副団長にプレゼントしよう。リザードマンはちゃんと倒したからもう安心していいぞ」


 衝撃と安堵を同時にもたらす言葉を生徒にかける団長。

 魔物が使っていた武器は魔物の特性がそのまま残っているものが多く、いま団長が持っている斧がその例だ。これらは一般的に「魔装」と呼ばれており色んな用途に使用されている。これを人間にもっと合うように調整がなされた物を「魔法武具」と言うのだ。

 しかし中には人間には持てないほどに大きい巨人の武器や恨み辛みが詰まって出来た一部のアンデット系の武器は大抵の人間には装備できず、後者は付けたとしても呪われる事があるという。

 呪いの効果は様々で、10分ごとに体にランダムで切り傷が刻まれる物や基礎防御力を上げる代わりに受けた傷が魔法では治らなくなるなどのマイナスな呪いが多いのでそういった呪いの武具はあまり好まれて使われず、大抵見つかれば王都に保管されるという。しかし一部のマニアなどは裏でそういった武具の売買を行なっているらしい。

 本来ここが一番気合を入れなければならない場面なのだが、団長のかけた一言と圧倒的な強敵が倒されたことにより皆は気を抜いていた。


「じゃあもう安心して行けんじゃん、さっさと進んで訓練を終わらそうぜ!」


 と小林が提案し、「俺はこばやんに同意」と黒髪イケメンの青木清流あおきせいりゅうが賛同する。その隣ではやけにデカイ男が「え、ええ…」としどろもどろになっているのはお構いなしだ。

 団長も「ここまでくれば大体大丈夫だろう、それにさっき以上の状況が起こるとは考えにくいし…だがひとまずは休憩な」とノリ気だったため、訓練は続行することになった。

 だがまずは団長の言った通り休憩せねばならない、肉体的にも精神的にも疲れているのは皆同じだからだ。


「疲れたー、結局団長ってヤバ人だったんだな」

「さっきの奴すごかったな!小司達でも敵わないなんてさ!それを倒した団長もすげぇ!!」


 見張りの兵士を残して他の者は座談会が始め、今しがた起こったことなどの会話が弾む。

 その中でクラスメートの一人、太め(デブではない)の男、満川京次郎みつかわきょうじろうは常人よりも疲れやすいためにその場の壁に背を寄りかかり、ふぅーっと安堵の息を吐く。

 すると、満川がもたれ掛かった壁に魔法陣がひっそりと浮かび上がった。ぼぉっ、と薄白く光っていたのだが満川は目を閉じ、瞑想まがいのことをしていたために気付かない。

 かろうじて気づいた生徒に「おまっ、後ろ!!」と言われて初めて気づいたが、時すでに遅く。


「えっ?なn――――」


 何?と言う前に広成たちの周りには通路目いっぱいに広がる巨大な魔法陣が一瞬で出現し、近くにいた者の輪郭すら見えなくなるほどの眩しい光が皆の視界を塗り潰した。そして異世界召喚された時に感じたのと同じような浮遊感が体を包む。


(ドンッ!)


 鈍い音と共に自身の臀部に衝撃が走る。地面に叩きつけられた痛みに目を開き周囲を異世界に初めて来た時と同じようにキョロキョロと見回す。

 どうやらあの魔法陣は転移魔法だったらしい、今の魔法技術ではムハマドが言っていた通り実現不可能だが、古くから存在しているダンジョンの魔法ではできるようだ。

 現に広成たち一行は周りは草一つない地面にゴツゴツとした岩がそこかしこに転がっていて、四方が恐らく100メール、高さが30メートルほどありそうな巨大なドーム状の場所に転移されていた。

 広成たちの前方には階段があった。それを確認するとほぼ同時に団長からは「全員立ち上がって前にある階段目指して全力で走れ!!」と指示を飛ばす。

 慌てて全員が立ち上がりすぐに走り出す。だが、前進することは叶わない。なぜなら目の前にまた巨大な魔法陣が出現し、そこから黒い馬のような魔物が出てきたからだ。

 しかし大きさは地球にいた馬のゆうに2倍はあるだろう。それに頭には1本の薄白く光る角が生えている。まるであのメルヘンに出てくる幻獣一角獣ユニコーンのようだ。

 その魔物を見た瞬間、広成の脳裏にベルラーラ国立図書館で読んだ酷く劣化した『勇者伝説』と言う本に出てきた魔物が浮かび上がった。


 その名は




邪黒馬じゃこくば…ガマラス!?」



 その一言はだだっ広いドームの中でやけに大きく響いていた。


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