やめろォ!
翌日、日本時間で言えば7時半に朝が来たことを知らせる、鶏代わりの「ダレガル」と言う魔物がデゥドラッカーー!!と鳴く頃、広成は絶賛抵抗中だった。
「やめろォ!絶対に嫌だ!多分死ぬから、というか行ったら100%死んじゃうから、頼むからHA☆NA☆SE☆!!」
「いつものキャラが崩壊してんじゃねぇか、ほらさっさと行くぞ」
「大丈夫だって、古市が守ってくれるからさ」
「俺なのかっ!?まぁいいか…とりあえず一緒に行こうぜ花爺」
「いぃーやぁーだぁー!!!」
そう言いながら抵抗するも、両腕と首根っこをガッシリと掴まれている今の状態では広成は足をばたつかせることしかできないためズルズルと自室から引きずり出されていく、どうやら親友の中に慈悲の神はいないようだ。この世界に神とか精霊が本当にいるのかは広成にはよくわからないが…
一応クラスの何人かは精霊を視認してお願い等ができる。もちろんあのチートの塊である小司もその何人かの中に含まれているのは忘れてはいけない。
「お前らはチートだから良いけど俺は違うんだよ!!魔法武具使ってようやく一般人並だぞ!!!!」
「うるさい、来ないとお前がむっつりだってことをクラスの全員にバラs「よし、今すぐに行こうさぁ行こう、みんなはどこだ?」
「切り替え早ぇな!そんなバラされたくねぇのか…」
足だけで器用に立ち上がり、真顔で白石に聞く広成、顔が若干近いためそれなりに怖い。普段は笑うことが多いため笑顔が印象的な広成だが真顔になると恐ろしく不気味だ。
例えると漫画のヒロインが可愛い表情から一転して般若の顔に変わるくらいの怖さだろうか。しかし広成は結局この一言のせいでダンジョンに行くことになった。
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そしてあれから1時間が経ち、現在広成たちはウォルタの目の前に来ていた。
あの抵抗の後、白石に対する呪いの言葉を発しながら訓練場に深夜のような可笑しいテンションで来たためにローグ団長からは苦笑いされた。
今の広成は顔を風邪を引いているように赤らめている。
そんな話は置いておくとして、さすがはダンジョン、10メートルはありそうな巨大な門がそびえ立っている。
しかし見事に御開帳されていてその真横には受付があり、白と紺の縞模様の制服をピシッと着た受付のお兄さんがテーマパークに入るようなノリでにこやかに入退場者のステータスボードを見ている。
その横ではメガネをかけたTHE秘書なお姉さんが帳簿にダンジョンに来た人を記録していた。団長によると入って来た人と帰ってきた人が何人だというのを記録しているのだという。
団長にしてはオブラートに包んではいるがつまりは死人が何人出たかを記録しているという事だ。それと彼ら受付さんはそこそこの冒険者と言う補足もされた。数いる冒険者の中からこれまでの実績等からしっかりとしている者を冒険者ギルドの人達が選定してるとか。
その隣には素材売買と書かれた大きな看板が目印の買取所があり、今しがた帰ってきたのか冒険者が何人か並んでいる。解体作業講座と書かれている紙も貼られていた。
ダンジョンの浅い階層は初心者冒険者には稼ぎ場所だがダンジョン内で馬鹿騒ぎして死ぬ者、ダンジョンの中で他の冒険者が付けている装備品目当ての殺しなどもあるらしい、怖い。
「とりあえず全員入るぞ、まずは一階層からだ。浅い階層の魔物が弱くても油断はするな、もしものことが起こるかもしれんからちゃんと気を引き締めてかかれよ」と言う団長の一言の後、広成たちはぞろぞろと団長に続いていった。
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ダンジョンの中は簡素で太陽に比べると3割ほど暗いがそれなりに明るいところで思わず拍子抜けした。その訳は周りに光る苔や自然と光を発する鉱石、「光石」がある為である。
そして広成たち一行は幅6メートル、高さ7メートルはある迷路のような場所を歩いていく。暫くすると、いきなり通路の隙間からずぞぞぞぞっ、とドロドロとした液体たちと暗がりから子供のような姿をした緑肌で醜い顔の生物のおよそ70程の群れが現れた。
「よし、魔物が出たな。あれは駆け出し冒険者の相棒、銅ランクのスライムとゴブリンだ、スライムは打撃が効きにくいが液体の真ん中にある2センチくらいの核を壊せば一撃で死ぬ、ゴブリンはたまに剣を使ってる奴がいるが大体は棍棒か素手で攻撃してくるぞ。力も見た目に反してそこそこあるから気をつけろ、まずは小司たちが前に出て戦え、交代で戦闘してもらうからな。ほかのやつ準備しろよ、だが焦らずにしっかりと戦え、気を抜くな。にしてもこの数は珍しいな…」
RPGでお馴染みのあのプルプルとした外見ではなくネバネバかドロドロという擬音がぴったりと合うその不気味なスライム達は暫くヌルヌルと動いていたが、体に勢いをつけると”ビュん!!”と空を切ってこちらに飛びかかって来た。
およそ液体が出せるとは思わない音を出しながら飛んできた何体かのスライムをそのままザクっと一刀両断、又は粉砕する生徒たち、切られたスライムが再生しているが、スライムには怖がっている者は殆どいない。
「拳闘士」のスキルを持つ大武弘斗は元々空手を嗜んでいたこともあったのか打撃が効きにくいのにも関わらず拳一つで魔石や核を含めて壊したようだ。しかし返り血ならぬ返り汁を喰らって今は後ろでせっせと拭いている。
女子はあまりネバネバしているものは触りたくないのかちょっと引き気味だ。下手に飛び散らして大武の二の舞になるのはゴメンだと大抵の女子は後退りをしている。
だが訓練通りに小司たち男組が剣や拳で戦い、その間に後ろから女子が魔法を放つというフォーメーションを組みながらしっかりと戦っている。実は地獄の鍛錬の3分の1はこの練習につぎ込まれており、連携も様にはなっている。
戦闘開始から何体ものスライムやゴブリンを薙ぎ払っている2メートル程のゴーレムは長谷川がついに昨日の晩、作成に成功したと興奮気味に話していた土のゴーレムだ。
この中では圧倒的で心強く、自身の手を汚す必要もない。現在では広成との合体技を思案中、その名も植物を体に埋め込みつなぎ目を強くしたゴーレム「プラントゴーレム」だ。かなりそのまんまである。
しかしそれよりも早く、そして多くの魔物を葬っている奴がいた。
小司だ。
小司は白刃の剣を使い、光の魔法で刀身を倍ほどにも伸ばして敵を切り刻んでいる。彼が今使っているのはベルラーラの国宝である「聖剣」こと「ゲドゥラソード」だ。ベルラーラ全土の鍛冶師等から信仰されており鍛冶の神であるゲドゥラが作ったと言われるその剣は光の属性がつけられていて、自身の力を自動で全面的に強化してくれる優れ物らしい。
だがモンスターといえどミキサーにかけられたミンチの如くぐちゃぐちゃにされる姿を見るのは気分が良いものではない。
所変わって盾役である古市はこちらも国宝である盾、「ハルダン」を構えて敵の攻撃を引き受けている。見るからに大変そうな役職だが古市の体にはあまり傷がついていない。防御
それもついた瞬間からみるみる治っていく、それは隣にいる回復部隊のおかげだ。彼女たちはコモンスキルスキルだが貴重な回復役の「治療師」を持っている女子たちだった。
そして気がつけば通路にいた魔物達は全滅していた。小司たちにとっては1階程度の魔物では弱すぎるようだ。まぁレベル5の時点でステータスが平均150を超えている化物と大体80近くのステータスを持った奴らなのだ。しばらくは相手にならない魔物が殆どだろう。
「やりすぎだが良くやった。だけど魔石の回収も頭に入れておけ、あれじゃ中の魔石まで粉々になっちまう。次は他の奴らにやってもらうぞ、それと気を引き締め直せ。顔がニヤニヤしている奴が大半だぞ」
団長からの注意が入るが初の迷宮内の魔物の討伐成功に皆頬を緩めるのをやめることができない。
そこでローグ団長は切り札を使う。
「そんなことじゃこの迷宮内のトラップに引っかっちまう。この前の遠征の時にはお前らくらいの年の仲間が剣山の落とし穴にまんまと引っかかって死にかけたんだ。そいつもこんなのなら楽勝とかほざいてからすぐに落ちたんだ。いくら訓練だとしてもどこに危険があるかは分からないから以後気をつけるように」
真剣な雰囲気と凄みで緩んでいた一瞬で空気が冷える。そして全員が気を引き締ようと肝に銘じた後、特に何かあるわけでもなく広成たちは順調に下の階層へと進んでいった。
小司たちは戦闘経験はまだ無いものの、その大半がチートであるためにそこそこ楽に階層を降りることができた。
しかしやはり騎士団の人達の誘導のおかげでここまで来れたと言えるだろう、先程団長から言われた通りダンジョン内での一番の敵は罠だ。下の階に行くにつれて致死性の罠も増えてくる。
それを確認するのは騎士団の役目だった。トラップ対策専用の道具はある、が高いし分かる範囲が5メートルと小さいため、あまり性能が良いとは言えないものだった。
その為、絶対にまだ行ったことのない場所には行くんじゃないと昨日を含めると7回は言われている。
それと広成はほとんど何もやれてない、一応植物操作で服の中に仕込んであった草を動かして2~3体前衛が撃ち漏らしたゴブリンを捕まえた後レイピアで殺した。
しかし殺した途端に吐いてしまった、体液は青紫色だった為少しだけ人間に似た生き物を殺したという罪悪感が軽減されていたが…やはりダメなものはダメだったのだ。
他の生徒等はあまり罪悪感に駆られている様子は伺えない。しかし白石や長谷川は顔を顰めながら戦闘を行なっていた。
そして広成の功績は逆に言えばそれだけで、一緒の班の白石と長谷川に守ってもらいながらちまちまと攻撃、後ろで魔法の練習や植物操作を使っていた。
ネトゲだと確実に寄生型のプレイヤーだと後ろ指を指されていただろう、現実だとスネ齧りだろうか?広成もこれにはかなり心に来ていた。
しかし実戦で使用した方が魔法もスキルも強くなれていたのでまだ成果はあると言える。現に広成のレベルがこの短時間で5にまで上がっていた。
「まぁ地道に行くしかないか」と溜め息をつき魔力を回復できる魔力薬をチビチビ飲みながら小司たち前衛にくっついて行く広成。
騎士団の兵士からはちゃんと努力をしていると見られていることに気付いていないようだ。
それは広成が「植物操作」を戦闘に使用していたからである。普通は園芸師や植物園にいるような人が持っているスキルの為、非戦闘系のスキルと一般には認知されていた。
それに相手を縛る鎖の役割を担わせて、平均的な男性ほどの力は持っているゴブリンを無力化した後に確実に仕留めていたので騎士団には評価されていた。
ちなみに植物縛りはこんな事態が来てしまった時に使えるかな?と初めて戦闘で試したところ見事に成功した技だ。
しかし今の所は1体、かなりタイミングがよくて2体しか縛れず、射程も10メートル程度で自身の魔力の都合上連発もできないため魔力薬無しではあまり何回も使える物ではない。
さらに周りがド派手に強いため広成は自身をカスだゴミだとネガティブに思い込んでいる。なので褒められてもお世辞にしか聞こえていなかった。それに元来の褒められても気づきにくい特性もプラスされている。
ちなみに言うと死霊術の方は使えていない、現在「死霊視認」しか使えず。まあ素材に死体を使うと考えただけで身震いする程のビビリな広成は使わない以前に使えないというべきかもしれないが…
途中で出てきた銅は魔物のランクです。
明記するとこんな感じ
屑鉄:村人をやってる奴でも倒せるレベル(他で言うE)
銅:普通の兵士、冒険者が倒せるレベル(D)
鉄:訓練された兵士、経験を積んだ冒険者が単独で倒せるレベル(C)
銀:経験を積んだ冒険者がパーティーを組んで勝てるレベル(B)
金:ベテランの冒険者がパーティーを組んで勝てるレベル(A)
我らが団長が辛勝するレベル
白金:ベテランの冒険者が策を練って10~30の多対一の状況で勝つレベル
我らが団長が負けるレベル(S)
ガル:常人が何人束になってもかなわないレベル
伝説の勇者が倒せるレベル(SS)
これにそれぞれ+-がついて24段階、まさにピンからキリです。
こんな感じですけどまだ大雑把なんで変更すると思います。




