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異世界でハーレムスローライフを送りたかったのに、転移した世界が妖怪の世界だった 〜妖怪が怖い俺の周りに可愛くて美人な妖怪が増えていく件〜  作者: 平元桜央
烏天狗と白狼天狗

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きっと私は、幸せになる

奈央は1人で、白狼天狗の群れを全て相手取っている。

空を飛べる白狼天狗たちは全方位からの攻撃で優位に立とうとしている。


「ひ、怯むな! かかれい!!」


「き、九尾の妖狐だと……! なぜ、伝説の妖怪が復活している……!?」


「狐どもを殺せ!!」


苦戦している様子はない。奈央は九本の尾を縦横無尽に動かし、迫ってくる白狼天狗を撃退している。


「強すぎる……! 男と烏天狗を人質に取れ!!」


何人かの白狼天狗は俺を襲いに突撃してくる。


どこで使おうかと思ったが、ここか。


「……ふん!!!」


先頭で突撃してきた白狼天狗を、思いっきり押した。


「ぐっはぁ!!!!!」


何体かの白狼天狗は巻き添えで吹っ飛んでいった。


「……!? な、何だ今の……」


「気をつけろ! この男もあの九尾の女と同じか、それ以上の力を持っているぞ!」


動揺する白狼天狗たちに、俺は不敵に笑って見せた。


「それ以上近づくなよ。どうなるかわからんぞ」


俺がな。


もう力を使ったから俺はただの人間になった。

ハッタリで乗り切るしかない。


怖気付いた白狼天狗たちを、奈央は尾の一本で倒してくれた。


戦いは、10分もしないうちに決着がついた。


白狼天狗は兵士も、住人も、子も女も、奈央の前で全員倒れ伏した。


あとは一体。白狼の長老だけとなった。


「な、何故だ……何故、貴様ら部外者がこのような真似をする!? 何故、その烏天狗1匹のために我々を攻める!?」


たった1人になって、それでもまだ、この白狼天狗は俺たちに喰ってかかる。


「そ、そいつらが、ワシらに何をしたのかわかってるのか!? 虐げられ、ワシらがどれだけの苦渋を味わったのか知らぬのか!?」


「知らねえよ」


「……は?」


「差別だとか、虐げられただとか、歴史とか、恨みだとか、怨嗟だとか、そんなもん俺は知らねえよ」


俺がここに来た理由は、たった一つ。


「ただ、俺たちは家族を守りたいだけだ」


「そ、そんな理由で……そんな理由で、我々の積年の恨みを潰されてたまるかぁ!!」


長老は声を荒らげ、俺に噛み付く勢いで迫る。


「1000年前からの因縁だぞ!! その家族とやらの烏天狗のために、我々を殺したのか!? そんな権利が貴様らにあるか!」


「何勘違いしてんだ? 誰1人死んじゃいねーよ」


「……は?」


奈央が倒した白狼天狗は全員、死んでいなかった。

倒れ、気絶し、呻いているだけだ。


「殺したいわけあるか。テメェらみてぇなクズでも、こちとら人殺しヴァージンなんだよ」


あ、人じゃねぇか。妖怪殺しだから、妖殺しか?


「お前達を、大天狗のところに連れていく。長が死んでゴタゴタしてるとか関係ねぇ。そこでテメェらは、厳正な処罰を受けろ」


長老はポカンとした後、次第に顔が歪み、笑った。


「くっ……くはははは! 甘ったるい奴らじゃ! 殺す勇気もないカスどもばかり!」


自分の命が助かるとわかるや否や、長老は綺鴉羅を睨んだ。


「見ておれよ烏天狗!! ワシは貴様らを許さん!! いずれ貴様ら一族の血は根絶やしにしてやる!!」


「おい安心するのは早えよ。まだ、命が助かったと決まったわけじゃねえぞ」


「……は?」


ペラペラと喋り始めた長老は、俺の一声でまた顔が固まった。


「い、いや、今だって、殺さないと……」


「そうは言ったが、お前らの命の決定権を持った奴が1人いるだろ。奈央」


「──はい」


奈央は落ちていた綺鴉羅の剣を、俺に渡す。


「綺鴉羅」


そして、俺は天裂を抜いて、長老の喉元へ翳した。








「お前が殺してほしいなら、全員殺すよ」


「……え?」











「お前が殺したいなら、俺がこの手を血で染めてやるって言ってんだよ」


綺鴉羅は、ここでそう言われると思っていなかったのか、激しく動揺した。


「な、なんで、零が、そんなことをするんだ……?」


「お前、殺せなかったんだろ? 村にいた白狼天狗2体」


「……!」


俺たちが黒天村についた時にいた、白狼天狗は生きていた。

父の亡骸を見て、我を忘れるくらいの怒りの中でも、綺鴉羅は、殺さなかったんだ。


「なんでなのかは知らん。でも、本当は殺したかったのに、何か理由があって自分じゃ殺せなかったんだったら、俺が殺してやる」


「そ、それは……」


呆然と黙りこくった綺鴉羅を見て、俺は目を瞑って少し笑った。


「すまん、聞くまでもなかったな」


「……!」


俺は長老の首根っこ捕まえて、仰向けに蹴り倒した。


「まずは長老、お前だ」


「ちょ、ちょっと待て狐! わ、ワシら全員殺すのか!?」


「そうだ」


「女子供も混ざっとるんだぞ!」


「テメェらもやったことだろうが」


俺は剣を振りかぶる。


「わ、わかった、は、はんせ、反省する! だ、だからや、やめ……!」


「しなくていい。もう綺鴉羅の大切なもんは戻ってこないんだからよ」


「ひっ!」


「だから、俺がお前を殺すんだ」


「ひ、ひぃ!! や、やめ……!」


長老の叫びが耳障りに聞こえた。その時。


「やめろッ!!!」


綺鴉羅の叫び声が、集落に響き渡った。

俺の剣が、首を切る寸前で止まった。


「……どうして止めるんだ?」


俺がそう聞くと、綺鴉羅は息を荒くして言った。


「お前に……命を……奪ってほしくない……」


「わかった」


俺は剣を、綺鴉羅へと差し出す。


「じゃあ、自分でやるか?」


綺鴉羅は剣を受け取らなかった。


「笑って、くれないんだ……」


綺鴉羅は俯いて、そしてつぶやいた。


「私も、殺そうとしたんだ。黒天村にいた、白狼天狗を……でも、父さんが、止めてくるんだ」


綺鴉羅の涙が止まらない。

肩を震わせて、幼子のように、泣く。


「悲しい顔をして、止めてくるんだ……」


「……そうか」


殺そうとするたびに、綺鴉羅には亡き父親が見えた。

首を振って、腕を掴んで、止めてくる。


俺の胸にしがみついて、綺鴉羅は泣いた。


「私は……弱い……父の仇すら……殺せない……」


「違う。お前のことを、父親はまた守ってくれたんだ」


その優しさで、きっといつか、誰かを救う時が来る。


綺鴉羅が泣き止むまで、俺は胸を貸した。










白狼天狗たちは、その後、零と奈央が大天狗の集落へ全員連れて行った。


結局長老も、殺されかけた時の様子を見ると、『死んでも復讐してやる』というほどの覚悟は持ち合わせていなかったようだ。


「また綺鴉羅さんに対して危害を加えてみなさい──」


「地の果てまで追いかけて、テメェらを殺すぜ」


奈央と零のその言葉を聞いた白狼天狗たちは、怯えながら頷いていた。







あれから、少し時間が経った。


『黒天村』の烏天狗たちの亡骸は、私たちで弔った。

黒天村の中央にあった広場に、全ての亡骸を埋葬し、簡素だが、墓を作った。


父も、ここに眠っている。


私たちはお供物の花を添えて、墓の前で手を合わせた。


「──」


一言だけ、伝えた後、目を開けると、隣の零と奈央はまだ祈っていた。


長い時間、2人は祈って、同時に目を開けた。


「2人とも、ずいぶん、長く手を合わせていたな」


「ん? あぁ、色々勝手に言ったからな」


「なにを言っていたんだ?」


零と奈央は2人で顔を合わせる。


「綺鴉羅のことは、俺たちに任せろ」


「貴方の大切な娘は──命に換えても、私たちがお守りします──と」


「……そっか」


この2人は、本当に相変わらずだ。

いつだって、私の事ばかり考える。筋金入りのお人よし。

でも、だからこそ、私の──


「そんな綺鴉羅は早かったな。何を祈ったんだよ」


「私は……秘密だ」


「なんでだよ」


「言うほどのことでもないからな」


私が父に言ったことは、たった一言。当たり前のことを言っただけだったから。


「──さて、帰りましょうか」


「あぁ、行くぞ綺鴉羅」


「うん。帰ろう。私たちの、家に」


「私たちの、家に」


墓の上を風が吹いた。強く強く、吹いていった。

私たちの人生を、後押しするかのように。








きっと私は、幸せになる

ブックマーク、評価ありがとうございました!

この作品はこれにて最終回となります!

他作品もぜひ読んでみてください。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

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