明智光秀が居た
朝倉景鏡は信長に主君、朝倉義景の首を差し出して生き延びた奴って感じで、あまりいいイメージはなかった。
しかし実際に会った景鏡は、頭が良く、かなりのキレ者で、できる奴感がハンパなかった。
とにかく俺の話を聞きたがり、その「義景の首差し出し」の話なんかも聞かせたが、
「う〜ん、儂ならやりそうじゃ。そしてその後はどうなった?」
と聞いてきた。
「確か、せっかく生き延びたのに、すぐにどこかの戦で死んでしまって、それも不人気に拍車をかけた」
と説明すると、
「なるほど、将来語り継がれることまで考えて行動せんといかんな」
と、思案していた。
「日記や戦記、朝倉家の一族の伝記なんかを書物として残すといいですよ。脚色具合はほどほどに…」
と、俺が言うと、景鏡はニヤリと笑った。
敦賀の港から笙の川を遡って疋田の町までの物流は、川舟屋さんが座を組んで仕切っている。
小浜は傷みの早いサバを内陸に届けるための「鯖街道」があるくらい、日本海から京までのアクセスとしては最短で良港だが、港の水深は敦賀の方が深い(舞鶴の方がもっと深いが…)。
将来的に南蛮船を平戸から引っ張ってくるには、小浜よりも敦賀の方が向いている。
今回、俺が小浜を自治都市化して、酒蔵なんかを作り始めたのをみて景鏡がうらやましがっていたので、その水深の話や南蛮船の話をすると、景鏡は大野郡司と敦賀郡司を交代して、佐渡(俺)と一緒に南蛮船を迎える準備をすると言いだした。
小浜も敦賀も栄えてくれたら佐渡もより栄えられるので、協力体制が築けるのなら万々歳だ。
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「若狭平定」軍には、佐渡から鉄砲隊が50人来ていた。
最初に上洛軍に随行した30人と、小浜に陣を張ってから援軍として送り込まれた中にも20人の鉄砲隊がいた。
火薬が貴重なのでそんなにはしないのだが、それでもいざという時に不発では意味がないので、たまには演習射撃を行う。
鉄砲隊の演習射撃はみんな興味津々で、見物者はいつも超満員なのだが、その中でも人一倍熱心にいろいろときいてくるものがいた。
名をたずねると、「明智十兵衛」と名乗った。
『明智光秀じゃん!?』
俺が光秀に「撃ってみたいですか?」ときくと、
「何をおいても…」と、すっごい眼力で懇願してきた。
「鉄砲隊の鉄砲は武士の刀と一緒で、その者の魂だ!」と、鉄砲隊員にはいつも言っているので、「はいどうぞ」と気安く他人に貸すものではない。
なので、俺が持たせてもらっている鉄砲を光秀に貸して、早合(弾と火薬がセットされたもの)を三個渡した。
光秀は、パあぁあぁ! とばかりに顔を輝かせて、早速鉄砲隊のひとりに早合の込め方から撃ち方を教わって、あっと言う間に三発とも撃った。
最初の一発は右上に逸れ、二発目は的の真ん中の一番上をかすめた。
三発目は、二発目の少し下に軌道修正して的をとらえていた。
光秀は弾のおかわりがしたそうにこちらをみたが、俺が笑いながら首をヨコに振ると残念そうに鉄砲を返してきた。
それをみていた景鏡が光秀に、
「どうじゃ、戦で役に立ちそうか?」とたずねると、光秀は演習場を見渡して、
「これくらいの数があれば、とんでもない戦力になりましょう」と言った。
「この鉄砲は買い受けることはできるのか?」と景鏡。
「まだまだ自軍の分も数が足りていないので、売るのは無理です。いずれは売られるようになるでしょうが、高いですよ」と俺。
「いくらくらいじゃ?」と景鏡。
「今なら鉄砲一丁で城ひとつ、弾を一発撃つたびに米一俵ですね」と俺が言うと、景鏡は光秀の方を向いて、
「おぬし、今、三俵分の米を撃ったらしいぞ」と言って笑った。
「それはとても戦では使えませぬな」と光秀。
「いずれは馬一頭、米一升くらいにはなりましょう」と俺。
「佐渡に仕えれば鉄砲隊に入ることは叶いますか?」と光秀。
「それは叶いませんね。もし、貴方が佐渡に仕官されたら、一鉄砲隊員ではなく大軍師として迎えいれます」と俺。
「ほっ、菱田殿はこの者のことを知っておられるのか?」と景鏡。
「ええ、すごい英傑ですよ」と俺。
「そうとわかれば、手放せませんな」と景鏡。
「そうでしょう。是非とも重用なされませ。くれぐれも織田に仕官されたりせぬように…」と俺。
え? この頃は明智光秀はまだ美濃にいるだろうって?
ぃゃぁ、ほら、諸説あるし…^^;
あっ、そうそう、久しぶりに言っておこう。
登場人物については、パラレルファンタジーフィクションってことで、ツッコミはナシでお願いします、でございます。




