全部くれてやる
「何じゃ、ショーゴは戦はしとうなかったんじゃないのか」と、貞兼様。
「もちろんしたくはありませんが、始まってしまったのなら、できる限り被害を出さずに終わらせる方法を考えましょう」と、俺。
「兄や、この変わった格好の、何じゃ、ショーゴか、何者じゃ?」と、沢根様。
「ショーゴは未来から来た祈祷師みたいな奴じゃ」と、貞兼様。
『上手いこと言うなぁ』
「それで、如何いたす、ショーゴ」と、藍原様が話を進めようとした。
「はい、とにかく人手を集めて西三川に向かいましょう。みんな武器と銀鉱石を持って」と、俺。
「銀鉱石を持って行くのか?」と、貞兼様。
「はい、一人一個持って行きましょう」と、俺。
「銀鉱石とはどういうことじゃ?」と、わけがわからない沢根様。
「おぉ、誰か一個持ってこさせよ」
貞兼様がそう命じると、今日初めて会った矢馳様と言う、なんかいかにも寡黙ないぶし銀みたいな雰囲気のご家来が、すぐに立って出て行った。
「あ、シャベルは武器にもなりますから、鶴子の探索隊はみんなシャベル持って行きましょう。戦はするつもりはありません。大軍で向かい合って、その場で和睦いたしましょう」
(シャベルは克治さん、伝助さんの鍛冶師父娘婿と木工職人の夏弥太さんが日々頑張って作ってくれている)
と、俺が言っているうちに、矢馳様が銀鉱石を一個持って帰って来た。
「摂津守(賢密)、これが銀鉱石じゃ。事情が変わっちょると言うのは、鶴子でこれが見つかっちょるってことじゃ」と、貞兼様が沢根様に説明した。
沢根様は銀鉱石を手にとって、
「おぉ、お、おぉ、これが、銀か… 銀か…?」
と言いながら、上から見たり下から見たりしている。
〜 〜 〜 ※ 〜 〜 〜 ※ 〜 〜 〜
俺はなんとか「雨降って地固まる」的な方向に持って行きたいと思い、銀で解決作戦を話す。
「以前、佐渡守様が仰りました。圧倒的な力の差を見せて対等に接して話し合うと…」と、俺。
「あぁ、言うた言うた」と、貞兼様。
「羽茂の方々の前に銀鉱石を積み上げて、積み上げて和睦を迫りましょう」と、俺。
「積み上げてどうするのじゃ? 全部くれてやるとでも言うのか?」と、沢根様。
「はい、全部くれてやりましょう。そして、力を合せて鶴子銀山を開発しようと誘いましょう」と、俺。
「だちかん! もったいなか!」と、沢根様。
「全然もったいなくありません。内輪で戦をして一人でも大切な領民がなくなる方がもったいないことです。船大工は羽茂が一番、手がいいんですよね。船はこれからとても重要になります。何がなんでも和睦して協力体制をとってもらいたいのです。今見つかっている銀鉱石くらい全部くれてやっても大したことはありません。まだまだ掘れますし、それに銀だけじゃなくて、これから金もドンドン見つかります」と、俺。
「のぉ、こいつはこう言うんじゃ」と、藍原様。
「内輪もめなんかしてたら、越後から攻め込まれますよ」と、俺。
「なにっ!? なるほど、それは考えとらんかった。確かに羽茂は越後と姻戚じゃ。羽茂が越後を呼び寄せることもあり得るのか…」と、貞兼様が「ハタ」と気付いたかんじで言った。
「おぬし、そんなことまで考えるのか」と、沢根様。
「俺は未来から来ました。なので今後、佐渡がどうなっていくのか知っています」と、俺はどストレートを投げ込む。
「ほんに祈祷師じゃの」と、藍原様。
「聞きますか? 今後どうなっていくのか…」と、俺。
「うむ、聞かせよ」と、貞兼様。
「聞かせよ」と、沢根様も。
「では、申し上げます。佐渡はこの後、本間様同士が争い続けて、まず雑太の惣領家が没落します。その後は鶴子銀山を持つ河原田様が一番力を持ちますが、佐渡の金銀を欲しがる越後の上杉家に攻め込まれて支配されます。さらにその後は尾張の織田の家臣だった豊臣秀吉が天下を統一し、佐渡もその配下に入ります。さらにさらに、豊臣秀吉が亡くなった後に三河の徳川家康が豊臣に取って代わって征夷大将軍になり、佐渡は徳川の直轄になります。本間様のご子孫は出羽の酒田で豪商として大成功されますが、どちらの本間様のご子孫かは俺は知りません。いずれにしても、身内で争っていては、佐渡が生み出す金銀のほとんどを他所に取られてしまうのです」
俺は掟破りの未来預言を披露した。
信じるか信じないかはあなた次第です。




