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若狭の組屋さん

 若狭小浜


 敦賀から小浜は近かった。

 朝出て昼にはもう着いた。


「組屋源四郎と申します。わざわざお運びありがとうございます」


 小浜の商人、組屋の主人が挨拶をする。

 俺が例によって名刺を渡すと、


「おや、種麹を商っておられるのですか?」


 と、組屋さんは今までにないところに食いついてきた。


「俺は未来から神隠しにあってこちらに迷い現れたんですけど、元の世界の実家が種麹屋でして…」と、俺。


「なんと、未来から!? もしや未来の種麹をお持ちなのですか?」と、組屋さん。


「残念ながら、神隠しに遭った時に持ってませんでしてので、こちらに持ち込むことはできておりません」と、俺。


(あ、そうだ、放置していた米麹の培養床は、灰をちょっとまぶしたモノも、大量にまぶしたモノも、全部危険そうな色のカビまみれになったよ)


「それは残念ですなぁ。麹は何かと入り用なのですが、京の座がキツい値段言うてきはりますんで、最近はどこも酒蔵と種麹座で揉め事が絶えませんのです」と、組屋さん。


『この組屋さんには先々もお世話になりたいなぁ』


 酒、味噌、醤油の醸造は是非ともやりたいので、いずれはその話もしたいものだと思いながら、


「ハハ、その辺の話は是非ともまたいずれ。あ、そうそう、種麹の現物は持って来れていませんが、パンフレットは持って来てますので…」と、俺。


「ぱんふれっと、、、 ですか?」と、組屋さんは首を傾げた。


「今日はこれを見てもらいたくてやってきました」と、俺は銀鉱石の一つを組屋さんに渡す。


「これは、何の石ですか?」と、組屋さん。


「はい、銀を含んだ銀鉱石です。今、河原田のご領地で続々と発掘中です」と、俺。


「これが銀鉱石ですか…」


 組屋さんはしばらく考えて、


「うーん…」


 と、さらに考えて、


「磯田様…」


 組屋さんは、商談の決定権を持つ相手が俺ではなく、後ろに控えている磯田様(トクノシン)であろうと踏んだのか、磯田様(トクノシン)に向かって、


「この件、是非ともこの組屋にお任せいただけませんか。私めに少しばかり考えがございます。きっとお役に立ってみせますので」と言った。


 言われた磯田様(トクノシン)は、


「あ、ああ、そうだな…」と言って石花様(ゴローザ)の方をみる。


「お、おお、そうですな…」と言って、石花様(ゴローザ)は俺の方をみる。


 で、俺が、


「組屋さん、どちらかよいアテがおありですか?」


 と聞いたので、組屋さんは「あっ、話す先を間違えた><」って顔をして、あらためて俺の方をみて、


「これは失礼いたしました。へい、これを持って博多に行こうかと思っております」と言った。


「博多ですか? 石見(いわみ)を通り越して…?」と俺が言うのを聞いて、


「石見をご存知ですか」と、組屋さんは言った。


 続けて組屋さんは、


「石見銀山は博多の商人が中心になって開発したはりますんです」と、


『それは!!!』


 俺はノドから手が出そうなくらい食いついた。


「組屋さん、その博多の商人さんと俺らをつなげますか?」と、俺。


「へぇ、あっ、いや、つなぐんやのぉて、この組屋にお任せして欲しいです。この石を持って博多に行って、石見でその博多の商人さんがやったはることをきっちりと(払うもの払ろうて)教えてもらってきますよってに、今度は佐渡で私がそれをやらしてもらいます」と、組屋さん。


「組屋さん、お任せします。お任せしますので「灰吹き法」を教えてもらってきてください。「灰吹き法」です。石見銀山で銀鉱石から銀の抽出に使われている技術です。人も設備も何もかも全部、佐渡に持ってきてください。なんなら、その博多の商人さんと組屋さんと一緒に佐渡に来てください。儲けの配分とかも相談しましょう」と、俺。


「灰吹き法、ですか… そんな技術があるんですか? 菱田殿、ほんに聡い方ですな。へい、きっちり持ってまいります。組屋がこの件、きっちり仕切らせてもらいます」


 とミエをきる組屋さん。


 俺は持ってきていた残りの銀鉱石(四つ)も組屋さんに預けた。

 組屋さんは、


「ほなこの石はこれで買わせてもらいます」


 と、手付だとばかりに米俵を一俵持ってこさせた。

この頃の石見銀山は博多の商人、神屋寿禎が周防の大内氏の元で開発していて、これまた戦国時代逆行転生の常連さんの「灰吹法」がそろそろ輸入される頃です。

よね?(;´∀`)

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