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日本は三大〇〇が好き

 天文十四年、夏、今川義元が富士川を越えて北条が占拠している加東地区に侵攻した。


 加東地区は、甲斐、相模、駿河が隣接するエリアで、義元が今川家の家督争いをしている最中に北条が占拠していた。

 それ以後、公方が仲裁しようとしたり、武田も介入したりしながら、ずっと小競り合いをしていたところだ。

 今回義元は、いつも組んだり対立したりを繰り返す古河公方、山内上杉、扇谷上杉を共闘させて出陣を促した。

 諜報部門の報告ではどうやら義元の目論見は上手くいっており、三者とも旗揚げの準備にかかっている。


 以前定実(守護)様に、


「北条を討つ兵を出せ」


 と言ってきた山内上杉に


「今度このような態度をとったら、山内上杉を討つ兵を出す」


 と返事をしてもらってから、山内上杉は越後に対して何も言ってこなくなった。

 今回も越後には何も言ってきていない。

 ただ、関東の各将には号令を発しており、挙兵は数万単位になるのは間違いない。

 史実ではこの後、日本三大奇襲のひとつの河越城の夜戦(後は織田の桶狭間と毛利の厳島)に繋がるのだが、この世界ではどうなるだろうか…


 〜 〜 〜 ※ 〜 〜 〜 ※ 〜 〜 〜


 さて、ここのところの飢饉で米の出回る量が少なく、必然的に酒作りに影響が出ていた。

 米から仕込む清酒もだが、にごり酒を仕入れて作る澄み酒も、にごり酒の入手が困難で、生産量がガグっと落ちた。


 代わりと言っては何だが、完成した蒸留施設の方がフル稼働して、主に芋焼酎を作っていた。

 ワインの生産も始まっており、味の好き嫌いはあれど酒不足の世の中に出回りはじめた。


 この頃に組屋さんが京から麹座の人を何人か連れて来た。

 京では以前は北野(天満宮)の麹座が全国の麹の独占権を持っていたが、大きな酒造などが手を組んで独自の麹生産が行われるようになり、幕府やら比叡山やらを後ろ盾に独占権を争っているらしい。


 組屋さんは若狭の酒造と京の麹座をつないでいたので、麹座の人に面識があり、


「独占権とかそんなことに時間と労力を使ってないで、一度佐渡に来て佐渡を見習え」


 と連れて来たらしい。


 麹座御一行様は例によって佐渡の花街で佐渡流のオ・モ・テ・ナ・シを受けてから、翌日は河原田の蔵街に案内された。

 中村藤六(トーロク)の家の裏で澄み酒作りをはじめたから、酒蔵も味噌蔵も醤油蔵も、蔵はだいたいこちらの方にかたまって建っている。


 そしてここには麹蔵も酵母蔵もある。

 木造レンガ造りの蔵は機密性に優れ、清潔に保たれた蔵の中には、木、竹、陶器、鋳物からガラスまで、ありとあらゆる器が備えられた、それこそこの時代の最先端の研究施設だ。


「麹は誰にでも作らせればいいです。麹づくりの難しさ、面倒くささは皆さんがよくご存知でしょう。こんな面倒な思いをして作るより買った方がいいと思わせればいいのです。作りたい人に、皆さんは種麹を売ればいいのです」


 俺は麹座の皆さん方を前に演説を打つ。


「ちゃんとそれなりの授業料を払っていただければ、清酒の造り方も教えますよ。皆さんの懇意にしている酒造の杜氏さんを連れてきてください」


 これには


「いくらで教えてくれるんだ?」


 と、皆んな飛びついた。


「醤油も味噌も教えますよ。醤油麹も種麹を売ってもいいですし…」


 今日も前日のオ・モ・テ・ナ・シでも、醤油を使った料理を食べていた御一行は、醤油麹の話にも食いついた。


「佐渡まで来るのは遠いので、京に勉強のための蔵を作ってくれないか?」


 と言われたので、


「京は治安が悪すぎるので、作るにしても自領になる。越中とかに作っても遠いのは変わらないだろう」


 と答えた。

ワインは、最初は育てたぶどうの糖度が低く十分に発酵しなかったが、砂糖を追加し、種酵母も作って生産できるようになった。

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