藍原様邸へ(ふたたび)
ゴローザの船で藍原様のお屋敷へと向かう。
着岸してからはまた牛を横目に見て歩きながら…
「牛は農耕用ですか?」と、俺がゴローザにきくと、
「そうじゃのう、農作業に使うのがもっぱらじゃのぉ」と、答えるゴローザ。
「肉を食べたりはしませんか?」と、俺。
「おぉ、使い潰したモノは解体して食いよる」と、ゴローザ。
「是非とも繁殖させて、日々の糧にしましょう」と、俺。
「ほう、ショーゴは肉を食うことに抵抗はないのか?」と、ゴローザ。
「ない、むしろ大好物だ」と、俺。
「ハハ、それはいい、ワシも実は好きな方じゃ。中には食ってはならんとか言う者もいるがの」と、ゴローザ。
「未来にも、食ってはならんと言う者はいますが、内蔵まで食べたり、乳も飲んだりします」と、俺。
「乳は薬になると言われておるが、実際に飲むと腹をこわす者の方が多い」と、ゴローザ。
「あぁ、一度沸かすといいですよ」と、俺。
とまあ、とは牛談義をしながら藍原様邸へとやって来た。
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藍原様邸
「ショーゴ、よく来た」
前回来た時は庭だったが、今回はすぐに部屋に通されて藍原蔵人秀貞に迎えられた。
「銀鉱石が出たと…」と、俺。
「うむ、茂三郎、藤六、持ってまいれ」
クロードが前回もいたシゲサブローと呼ばれていた家来顔のお侍様と、今回初めて見たトーロクと呼ばれた地味な雰囲気のお侍様にそう命じると、二人は片手に一塊づつの銀鉱石を持ってきた。
「あれから毎日、このような塊が数個づつ持って帰られておる。人を増やせばもっと持って帰れそうじゃと」と、クロード。
俺は塊の一つを受け取って見せてもらった。
それは白灰色の岩石だが、確かにそこここに銀色の輝きが見てとれる。
「まずは銀鉱石を銭か米にせねばなりませんなぁ」
と言って俺は佐渡の現状を確認していくのであった。
「佐渡には船持ちの商人はおりますか?」と俺。
「佐渡に船を持っている商人はおらんな。船は皆、領主様の持ち物じゃ。わしらはそれを下賜されておる」とシゲサブローこと北見茂三郎様が答える。
「越後から来る商人がおったの」と、クロード。
「越前と若狭からも時々来ます」と答えたのはトーロクと呼ばれた中村藤六様だ。
「若狭、若狭からも来ますか…?」と、俺。
『若狭は確かこれから内輪揉めで大変なはずだ… (ぃゃ、佐渡も他所のことを言えたギリじゃないが…(;´∀`) アポとっときたいなあ…』
「若狭からも来る。後は極々たまにじゃが蝦夷からも来ることがある」と、トーロク。
「佐渡に来る商人、みんなと会いたいですね。こちらからも行きたいですが。鍛冶屋や職人も紹介してもらいたいし、まずは河原田の本間様に銀鉱石を報告をいたしましょう。ご協力を仰いで「本間会議」を召集してもらいます。そこで、「佐渡不戦条約」の締結を目指します。鶴子で産出される銀は佐渡中の人が十分豊かな暮らしができる量のはずです。とにかくこれから人手がいくらでも必要になってきます。内輪で無益な争いをしている場合ではありません。佐渡が一丸となって銀山開発に取り組むのです。やらなければならないことは山ほどあります。決して争わずに、手分けしてやっていくのです。そして、一つ肝に銘じて欲しいのは、銀を掘って売って贅沢していてはジリ貧だと言うことです。銀はあくまでも佐渡を豊かにするための資本金です。使った銀は何倍にもなって返ってくるようにしなければなりません。そのための指揮を俺がとります」
と、俺は一気にまくしたてた。
「よし、五郎左、おぬしは河原田へ「明日伺う」と先触れに行け」と藍原様が石花様に命じた。
「かしこまりました」と、ゴローザ。
「ショーゴ、明日儂らと一緒に河原田様のところへ行くぞ。今日はこちらに泊まれ」と、今度はクロードが俺に言ってきた。
「はっ、了解いたしました」と言って俺は、その日は藍原様邸に泊めてもらった。
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