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僕の故郷はおかしな村でしたぁ! 〜生贄?、因習村?、そんなの聞いてない!〜  作者: 柚亜紫翼


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009 - よしわかた -

009 - よしわかた -


ずずー・・


ちゅるちゅる・・・


ずぞぞぞぞ・・・


ごっごっ・・・


「ぷはぁ・・・美味い」


「おっ、お客さんうちの味気に入ってくれたかい?」


「あぁ、とても美味かった、絶品の鶏ガラスープによく絡むちぢれ麺・・・これは自家製かな、粉にも拘っているようだ、しかもこれだけ手間がかかっているのに安い」


「嬉しい事言ってくれるねー、うちは親父の代からずっと自家製麺だよ、味と安さには自信あるんだ」


「また食べに来るよ、ご馳走さん」


ちゃりっ・・・


「700円頂きっ!、ほい50円のお釣りと次回使えるチャーシュー1枚無料追加券だ」





・・・


「仕事で来たとはいえ良い店を見つけてしまったな・・・」


私の名前は与志若太よしわかた42歳独身で趣味は全国各地のラーメン店巡り・・・。


警視庁捜査課に所属している、役職は警部補だ。


廃墟のような雑居ビルに囲まれ隠れるように佇むラーメン屋で腹を満たした私は少し離れた通りからビルの4階を仰ぎ見る。


「まだ戻ってない・・・か」


時刻は21時38分、昨日の夜から引き続きあの部屋の住人は不在だ、私はポケットから飴を取り出し口に放り込む。


タバコは10年前にやめた、公共施設はもちろん最近はどこの飲食店も喫煙者に対して厳しい。


今私が食事をしていた昭和のまま時間が止まったようなラーメン屋でさえカウンターには禁煙の文字が大きく貼ってある。


「いや、あれは味と香りにこだわる大将の方針かもしれないな」


冗談じゃなく今食べたラーメンは絶品だった、透き通ったスープに浮かぶ黄金色の油と分厚いチャーシュー・・・思い出しただけでまた食いたくなってきた。


都内にある美味いと評判のラーメン店を食べ歩いた私を唸らせる素晴らしい味だった。


・・・


・・・


ラーメンで温まった身体も少し冷えてきた、時間を見ると22時50分・・・。


この周辺で唯一開いていたラーメン屋の大将が外に出て来て暖簾を取り込み閉店の準備を始めた。


おそらく今日はもう戻らないだろう・・・いつ戻るのかも分からないここでの張り込みもいい加減飽きてきた。


この辺りは近くに交番も無く治安はお世辞にも良いとは言えない、女子高生が夜中に一人で出歩いていい場所ではない・・・。


・・・


・・・


「それにしても叔父の持ってる物件だと聞いているが何でこんな廃墟に一人で住んでんだ?・・・金はある筈だろう?」


独り言を呟いている間にもラーメン屋の照明が消え、私の周囲は小さな街灯だけになった。


時間を確認するといつの間にか日付が変わっていた。


「はぁ・・・」


歳のせいか最近ため息が多くなった気がする。


「ここは部下に任せて四国に行く事になりそうだな・・・向こうの美味いラーメン屋を調べておくか」


・・・


・・・


事の始まりは3日前、関西某所で男の死体が見つかった。


それだけなら別に珍しくもない殺人事件だが死体の状態が普通じゃなかったのだ。


猟奇殺人・・・恨みによる殺しだとしても度が過ぎている・・・。


胸から腹まで一直線に裂かれ内臓が綺麗に抜かれていた、眼球は抉り取られ性器も切断、そんな状態なのに出血は殆ど無い。


腕利きの医者による犯行だとしても手際が良過ぎる・・・ちなみに内蔵はまだ見つかっていない。


実行犯では無いだろうが関与が疑われたのは3年前に男が起こした事件の被害者・・・目の前の廃墟ビルに住む神威崎昴かむいざきすばるだ。


とんっ・・・


すたたっ・・・


スマホを操作してニュースサイトを見る・・・死体発見から3日経っても該当する殺人事件の報道は全く無い。


・・・「上」からの指示で報道に規制がかけられたのだ。


表向きは報道される事により3年前に不幸にもロリコン野郎の毒牙にかかってしまった少女の人生を再び衆目に晒して壊さないように。


実際は臓物を抜き取られた被害者ロリコンが大物政治家の子息であったからなのだが・・・。


3年前の胸糞悪い事件は親である政治家の隠蔽工作が遅れて派手に新聞やワイドショーで報じられてしまった。


そのせいで男の顔と名前をまだ覚えている国民は少なくない。


男は捕まり相応の罪を償う事になると皆が思っていたのだが・・・被害者の少女には戸籍が無く唯一の保護者である母親も児童虐待と育児放棄の罪に問われてしまう。


おかげで普通なら懲役刑となる筈だった男は親の介入もあって執行猶予付きの判決を受け普通に生活を送る事になる。


一人残された少女は親戚に引き取られた、口止めも兼ねた僅かな見舞金は払われたようだが・・・はっきり言って泣き寝入りだ。


こうして世間を騒がせた少女拉致監禁事件は次第に風化し人々の記憶から薄れて今に至る。



「交代の奴は何してんだ?」


時間になっても代わりの刑事が来ない、私は再び4階の窓を見てため息をつく。


・・・


死んだ男はロリコンのくせに人望があり勤務態度も真面目だった・・・あの男を殺したいほど憎む人間は神威崎昴かむいざきすばるしか浮かんで来ない。


だが話を聞こうと訪ねた4階の住人は数日前から不在・・・聞き込み捜査により疎遠であった親族に会う為に徳島県の実家に帰っている事になっている。


彼女はしばらく留守にする旨を近隣住民に言い残していたようだ。


スーパーの店員や階下のレコードショップ店員が徳島県の鬼牛おにべこという村に行くのだと本人から聞いていた。


「・・・与志よし警部補、交代の時間です」


背後に気配を感じて振り向くと部下の刑事が立っている、0時に交代の筈だが30分の遅刻だな。


「私は一度署に戻って明日は徳島に向かう、ここは引き続き交代で張り込んでろ」


「了解です」


「・・・それから、あそこのラーメンは美味いから一度食ってみろよ」


「嫌ですよあんな小汚いラーメン屋」


「まだまだ甘いな、見た目が香ばしい店の方が意外と美味いんだぞ」


「ラーメン通の警部補がそこまで言うなら・・・今度試してみます」


部下と別れ、捜査課所有の車が停めてある近くのコインパーキングに向かう。


バタン・・・


「疲れたな・・・」


車に乗り込んだ私はそう呟きスマホを取り出して「食うログ」のアプリを開いた。


「徳島ラーメンか・・・楽しみだ」












・・・


「徳島県警刑事課の星刃貴美音ほしはきみねと申します!、鬼牛おにべこ村へのご案内をさせて頂きますっ!」


翌日私は四国に入った、徳島県警を訪ね署長に挨拶をして協力してくれる担当刑事と対面しているのだが・・・。


「あのぉ・・・私の顔に何か付いておりますでしょうかぁ?」


「いや、失礼しました・・・与志よしと申します、村までの案内よろしく頼みます」


目の前に姿勢よく立っているスーツ姿の女性刑事を前に迂闊にも見惚れてしまった!。


凄まじい美形だ・・・歳は20代半ばだろう、不安そうに私の顔を覗き込んでいるが切れ長の目に整った眉、通った鼻筋、薄い唇は意志が強そうだ。


女性にしては背が高く胸は薄いスレンダー体型、背中まである長い黒髪を後ろできっちりと縛っていてほのかに柑橘系の甘い香りがする。


「おほん!」


再び見惚れていると私の隣で署長が咳払いをした。


「今日はもう遅いのでホテルまでお送りしますっ、車を裏に回して来ますね」


そう言って星刃ほしは刑事は署長室を出て行った、彼女が戻るまで署長と茶を飲みながら雑談をする。


私の任務は上を通して県警まで伝わっているから特に話題も無いのだが署長もラーメン好きらしくお勧めの美味いラーメン店をいくつか教えて貰った。


再び雑談を始めると話は今回の協力者・・・星刃ほしは刑事に移る。


「仕事が出来そうな感じの女性ですね」


私の言葉に署長が挙動不審になる、何で目を逸らすんだよ!。


「彼女はまだここに配属になって日が浅いので至らぬ点があるだろうが、村までの案内くらいなら出来るだろう・・・」


署長が意味深な発言をする。


「うちの署も人手不足でね、あんなのでも一応昇任試験に合格した巡査部長だ、遠慮なくこき使ってくれ・・・」


あんなのって何だ!。


「・・・彼女に何か問題でも?」


「今朝きつく言い聞かせておいたから大丈夫だ」


「何をです?」


「・・・」


「だから何で目を逸らすんだよ!」


ダメだ、署長の態度が不審過ぎてついうっかり思った事が口に出てしまった!。


コンコン・・・ガチャ


「車を用意しましたのでホテルへ行きましょう!」


「・・・さぁ与志よし警部補、長旅で疲れただろう、ホテルを予約しておいたから今日はゆっくり休んでくれ、さっきも言ったがこいつ・・・いや、星刃ほしは巡査部長は好きに使ってもらって構わないし気に入ったのならくれてやる・・・いや、東京へ連れ帰ってもいいぞ」


署長が凄い早口で私をここから追い出そうとしている!。


「署長ぉ!、それって私がいらない子みたいじゃないですかぁ!」


「みたいじゃなくてそのつもりで言ったのだが!」


「わーん!、与志よし警部補ぉ!、署長が私をいらない子だって!」


いや私にどうしろと!・・・署長を指差して泣き真似をする彼女を横目に喉まで出かかった言葉を私は飲み込んだ。










ぶろろろろ・・・


私は星刃ほしは刑事の運転する軽四輪駆動車ジムニーに乗り駅前のビジネスホテルに宿泊・・・すると思っていたのだが車は市内を離れて何故か海沿いの道路を走っている。


「署長は確かに駅前のビジネスホテルと言っていた・・・」


あと一時間もすれば日没だから空が薄赤くなってきた、遠くに本州と四国を結ぶ大鳴門橋が見えるな・・・。


ぶろろろろ・・・


きぃ・・・


がちゃ・・・


与志よし警部補、ホテルに着きましたっ!」


広い駐車場に停まり車を降りた星刃ほしは刑事が助手席のドアを開けてくれた。


「私の見間違いじゃなければここは高級リゾートホテルだと思うのだが」


「そうですかぁ、大した事ないと思いますけど」


すたすた・・・


がしっ!


「待て」


「はい?」


私はホテルに入ろうとしている星刃ほしは刑事の腕を掴んで止めた、引き戻された彼女の身体が私に迫る・・・顔が近い!。


「・・・おそらくここの宿泊費は私の部署の経費では落ちない」


「えーと、署長の指示で駅前の安ホテルを予約していたのですが・・・本庁の刑事さんを泊めるのならもっと快適なところがいいと思いまして、私の判断でこちらに変更しましたぁ」


「だがここは宿泊費が高いだろう!」


「ご安心ください、勝手に変更したのは私ですので宿泊費は私がお支払いしますよ?」


首を傾げて微笑む仕草がとても可愛いが今はそれどころではない、こんなところに泊まる理由がないし宿泊費をこの娘が負担するのも間違っている!。


「細かい事は気にしないで早く行きましょう!」


いつの間にか掴んでいた手を振り解き、星刃ほしは刑事は眩しい照明に照らされたリゾートホテル?に向かって歩き出す。


「おい待てと言っている!」


「早く来て下さいよー」





すたすた・・・


・・・


ここまで来れば仕方がないか・・・私は腹を括り彼女の後をついて歩く。


利用し慣れているのか彼女の動きには迷いが無い、案内を見るとフロントは2階にあるようだ、私達は洒落た建物内にあるエレベーターに乗る。


「お昼前に予約していたのだけど支配人は居るかしら?」


フロントで名乗りもせずに支配人を呼び出したぞこの女!。


「は?」


フロントの女の子が不審者を見るような目で私達を見てるじゃないか。


「あれ?、見ない顔だね、新しく入った娘かなぁ?」


ごそごそ


すっ・・・


星刃ほしは刑事が不機嫌そうに懐から名刺・・・だろうか?、何かを見せるとフロントの娘の顔色が変わる。


「しっ・・・失礼しましたぁっ!、支配人をお呼びしますのでしばらくお待ちくださいっ!」


とたとたっ!




すたたたっ!


「大変失礼いたしましたお嬢様っ!、お部屋は既にご用意しておりますのでどうぞこちらへ!」


全力疾走してフロントまで来たであろう支配人らしき中年男性が腰を90度に折り曲げて頭を下げている・・・私は何を見せられているのだ!。


「無理を言ってごめんなさいね、お世話になるわ」






私達は支配人の案内で客室へ向かう・・・


「お部屋はこちらになります」


扉が開けられ今私の目の前に広がる光景は「部屋」じゃなくて「家」だった!。


広大なリビングにキッチン、2人部屋だろうか・・・ベッドが2つ並ぶ寝室、窓の外は素晴らしいオーシャンビュー!。


支配人に促されて更に奥へと進み室内を見渡す、サウナもあるしベランダ?には露天風呂があるぞ・・・。


「では私はこれで失礼致します、ごゆっくりお過ごしくださいませ」


支配人が部屋を出て行こうとする・・・ちょっと待て!、もしかして彼女と同じ部屋なのか!。


「ご安心ください、私は隣のお部屋ですよー、でも夕食は1階のレストランで一緒に食べましょう!、あ、建物内にはお酒の飲めるバーもあるんですよ!」


私の心を読んだのか星刃ほしは刑事が私に説明する・・・それはさておき先に言う事あるだろうが!。


「支配人は君の事をお嬢様と呼んでいたね」


「はいっ!、ここは私の実家が経営するホテルなのですっ!」


「実家って・・・まさか星刃ほしはグループか!」


星刃ほしはグループは傘下に電機、製薬、製鉄、金融、不動産、エンターテインメントなどの関連企業を数多く持つ世界的な巨大企業だ・・・彼女はその関係者なのか?。


「そうですよー、ここはグループ傘下の星刃ほしはリゾートが経営するホテルです!」


「君は・・・何者なんだ?」


「えと・・・徳島県警刑事課所属の警察官ですけど?」


「いやそうじゃなくて!」


「私の父が星刃ほしは財閥の総帥でして・・・」


・・・私は考えるのをやめた。

読んでいただきありがとうございます。


趣味で空いた時間に書いている小説なので不定期投稿です、続きが気になる人はブックマークして気長にお待ちください。


面白いなって思ったら下のお星さまやいいねをポチリと押してもらえると作者が喜びます・・・。

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