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僕の故郷はおかしな村でしたぁ! 〜生贄?、因習村?、そんなの聞いてない!〜  作者: 柚亜紫翼


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008 - かえれなくなった! -

008 - かえれなくなった! -


ざばばばばば・・・


どしゃぁぁぁ・・・・


「よく降りやがるぜ」


「・・・」


「なぁ、昴」


「・・・」


「怒る事ねぇだろ、俺は何か間違ったこと言ってるか?」


ごろごろごろ・・・


ぴしゃぁぁ!


ずどどどどーん!


「うぉぉ!」


「・・・」


「近くに落ちたんじゃねぇのか?」


「・・・」


俺の名前は累塚誠かさねづかまこと、19歳だ、今俺は山奥にある昴の実家で奴と2人きり、夕飯の時間になるのを待っている。


外は洒落にならねぇくらいの豪雨だ、雷もやばい、ここに来てからの雨量を考えると本気で土砂災害が起きるんじゃないかと心配になってきたぜ。


雷が鳴ってるのに不思議とこの屋敷は停電しねぇ、自家発電でもやってるのか・・・まぁそんな事はどうでもいい。


隣に敷かれた布団に転がって俺に背中を向けてる昴を何とかしねぇと・・・こいつは俺がセックスを拒んだせいで拗ねちまった。


だがここは昴の実家だぞ、やってる最中に親父さんに見られたら俺は終わる・・・向こうは俺達が付き合ってるのは知ってるようだが肉体関係まで公認じゃねぇだろう。


もぞもぞっ・・・


「んっ・・・」


「勘弁してくれよ・・・」


俺がしねぇから隣で昴が一人で始めやがったぞ!。


昴は・・・まぁ、はっきり言って普通じゃねぇ、昔のトラウマで男は怖がるのに性欲は旺盛だ、俺と寝てない時は毎日一人でやってるようだ。


俺が聞いた話だとガキの頃、近隣住民からの通報で派遣された役所の福祉課だか住民課のロリコン野郎に目をつけられたらしい。


そいつは荒んだ生活をしてたボロアパートから昴を連れ出し自宅に監禁、数週間に渡ってあいつの身体を弄んだ。


その事件のおかげで出生届も出されず学校にも行ってなかった昴の存在が世間に知られる事になる・・・もちろんクソ野郎は逮捕、一時期新聞や週刊誌でも騒がれた・・・らしい。


「あっ・・・んくっ・・・」


お楽しみ中の昴を置いて俺は便所に行く為に部屋を出た。


・・・


・・・







ざばばばばば・・・


どどどどど・・・


離れの便所に続く渡り廊下に出て俺は何気なく庭を見る、斗織とおりの奴を襲った猫の事を思い出したからだが・・・どうやら居ねぇようだ。


庭の隅にレインコートを着た人影がチラリと見えた、屋敷の使用人が時々巡回してるって話だから猫が来ても追い払われるだろう。


じゃぁぁ・・・


小便を終えて古臭い水道の蛇口を捻り手を洗う、男用の便所から出ると背後に人の気配がした。


「あ・・・」


女用の便所から出てきたのはメイド服姿の秋間あきまちゃんだった、俺に出て来るところを見られて気まずいのか軽くお辞儀をして俺の前から立ち去ろうとする。


これは話をする良い機会だぜ、運がよけりゃ味見させて貰えるかもな・・・。


俺は彼女に声をかけた。


「凄い雨だね、もし時間あるなら少し話さないか?」


・・・








「ふふっ」


部屋に帰る途中、俺は思わずニヤける顔を我慢できなかった。


秋間あきまちゃんは夕飯の支度があるらしく5分くらいしか話せなかったが距離は近付いた・・・っていうか予想以上に仲良くなれた。


「お嬢様が羨ましいですねー、累塚かさねづか様のような素敵な方と恋人同士だなんて」


俺の事を素敵だと言い、付き合ってる男は居るのかという問いに・・・。


「今は居ませんよー、村の男衆は粗野だし田舎臭くてあまり好みではありません」


元々は孤児で山を降りた所にある小さな町に住んでいた秋間あきまちゃんは都会に憧れながらも当主に拾われ雇用という形でこの村に来たそうだ。


「いつかお金を貯めて都会で素敵な恋がしたいですー」


脈アリだ、都会に連れて行ってやると言って迫れば落とせる自信はある・・・昴は馬鹿だからバレねぇだろう、二股を狙ってみるか。


斗織とおりの奴は・・・別れてもいい、あいつは気が強い上に面倒臭ぇ性格だし顔は秋間あきまちゃんが圧倒的に好みだ。


帰る前に1発くらいはやらせて貰おう・・・。


・・・


「・・・」


「・・・あんっ!、誠君っ!」


ガタッ!


「でかい声で叫んでんじゃねぇ!、誤解されたらどうすんだよ!」


「ひゃぁぁ!」


部屋の前まで戻ると昴が俺の名前を呼びながらまだ致してやがった!、扉を開けたら驚いて飛び上がったが自業自得だ。


「もうすぐ晩飯だぜ、そのままで親父さんの前に出るのか?」


「下着が濡れて気持ち悪いから着替えたい・・・です」


昴は今俺の目の前で正座してる、さっきまでしてやがったから髪は乱れてるし頬が上気して仄かに赤い、潤んだ瞳で俺を見上げてる姿は正直可愛いとは思う。


「・・・だがこいつは馬鹿だ」


「ひどい!」


思わず口に出ちまったぜ・・・。


「どうでも良いから早く着替えろよ、もうすぐメイドの2人が呼びに来るぜ」


「恥ずかしいから後ろ向いててよ」


「今更何言ってんだ、俺はお前の裸なんて見飽きてる!」


そう言いつつも俺は昴に背を向ける。


ゴソゴソ・・・


・・・


「着替えたよ」


「おぅ」


振り向くと白いライン入りレギンス姿の昴が布団の上で立っている、上はダサいパーカーだし本当にこいつは色気が無ぇ・・・もうちょっと着飾ればマシになるのによ・・・。





・・・


とたとた・・・


コンコン・・・


「失礼します、夕食の用意ができましたので・・・」


部屋に入って来たのはメイド服姿の戸内どないちゃんだ、喋ってる途中で止まり視線は昴の枕元にあるティッシュの山と脱ぎたての下着に向けられてる。


「・・・」


ゴミを片付けて無ぇ昴もアレだが・・・何でそんな生暖かい目で俺達を見るんだよ!。


「誤解しないでくれ、こいつが一人で致してたんだ」


「誠君ひどい!」










ざばばばばば・・・


どしゃぁぁぁ・・・・


降り続く雨の音を聞きながら俺達は戸内どないちゃんを先頭に広間へ向かってる。


廊下を右に曲がると便所に続く渡り廊下の引き戸がある、まっすぐ進んで左に折れ、少し歩くと左手が広間だ・・・ようやくこのクソ広い屋敷の間取りに慣れてきたぞ。




かたっ・・・


「お嬢様をお連れしました」


戸内どないちゃんが障子を開けて俺達を招き入れた、既に料理が並べられていて炭火でタレを焼いたような良い匂いが漂う。


上座には相変わらず筋肉モリモリマッチョで怖そうな当主が座ってる、今日は初日と違って押翼おしよくのおっさんや桜陵おうりょうって女は居ねぇようだ。


座布団に座って目の前の膳を見る・・・今日は重箱と汁物、それから漬物と卵焼きのようだ。


「皆揃ったようじゃの、では頂こうか」


当主の合図で重箱の蓋を取ると鰻重だった、しかも身が分厚くプリップリなのが3枚も乗ってやがる、汁物はすまし汁で卵焼きに見えたのは中に鰻が入ってた・・・。


山椒のいい香りがして美味そうだ・・・東京でこんなの食ったら万札が飛んで無くなるだろう。


飯を半分ほど食った頃、当主が俺達に向かって言った。


「少し前に助兵衛すけべえの奴から連絡があった、客人は無事に市内のホテルに送り届けたのだが・・・雨でこの村への道が崩れておるらしくてな」


助兵衛すけべえってのは恐らく斗織とおりを車で送って行った睦里むつりの事だろう・・・。


「村に帰ろうとしておったら広範囲に崩れておるのを発見しての、道が通れぬから近くの町に引き返して泊まるそうじゃ、既に役所には被害状況を伝えておるが復旧に時間がかかるかもしれぬ」


便所に行った時に俺が庭で見たレインコートの後ろ姿は背格好からして睦里むつりだと思ってたが・・・人違いだったか・・・。


「じゃぁ僕達は帰れなくなったの?」


昴が当主に向かって聞いた、帰れないのは困るぜ、俺はバイトがあるしそんなに休めねぇ・・・。


「雨で工事車両を出せぬと渋っておったが儂の名で市の土木課へ早急に復旧するよう命じておるから十日といったところか・・・」


そんな権力あるのかよこのおっさん!。


表情を見て俺が考えてる事を察したのか当主が悪い顔で言った。


「なに、県の上層部につてがあるだけじゃ、県知事程度なら儂の一声で動かせるわい」


「十日か・・・」


「申し訳無いが道が通れぬものは仕方が無い、都会と違い田舎とは不便なものじゃ・・・復旧まで温泉にでも入ってのんびり待つといい」









「面倒な事になっちまったな」


「そうだね・・・僕はいいけど誠君は予定があるだろうし」


食事が終わって部屋に向かう途中、俺と昴はそんな会話をしながら歩いている。


先頭は戸内どないちゃんだ、この後はする事も無ぇから温泉に入って寝る事になるだろう。


かたっ・・・


戸内どないちゃんが部屋の障子を開けると乱れていた昴の布団が綺麗に整えられていた。


「では何かありましたらお呼びくださいませ」


俺が風呂の場所は覚えたと言ったら戸内どないちゃんは食事の後片付けがあるからと部屋を出て行った。


「昴、俺は風呂に行くけどお前はどうするよ?」


「あ、僕も一緒に行く」


「そうか・・・一緒には入らねぇからな」


「えー」


何で「えー」なんだよ!。


「男女で別れてるだろうが!」


不満そうな昴を放置して旅行鞄から下着や着替えを取り出す・・・荷物を置いてある奥の襖が少し開いてやがるな・・・。


襖の向こうは隣の部屋だが真っ暗で何も見えねぇ・・・俺は襖をそっと閉めた。







・・・


ほこほこ・・・


相変わらずこの家の温泉は最高だった、何か飲み物が欲しい・・・俺は脱衣所を出て部屋とは逆方向・・・廊下の更に奥へと向かう。


秋間あきまちゃんと話した時に温泉の奥にある使用人休憩所に行けば飲み物の自販機があると聞いていたからだ。


「でもお飲み物でしたら呼んで頂ければお部屋までお持ちしますよ」


そう言って笑った秋間あきまちゃんはとてつもなく可愛かった。


ちょっと喉が乾いただけで呼ぶのも悪いだろうし、運がよけりゃ酒を売ってるんじゃねぇかと思ったわけだ。


まだ19歳だが俺の周囲にそんな決まりを律儀に守ってる奴なんて居ねぇしあと3ヶ月もすれば20歳になる、風呂上がりのビールは最高だ、問題無ぇ!。


昴はこの後、当主と話があると言っていたから待ってなくてもいいだろう。




・・・


廊下を少し歩くと簡素なテーブルと椅子が何台か備え付けてある薄暗い部屋に出た、ここが使用人の休憩所だろう。


その奥には灯りのついた自販機がある・・・よしよし、酒も売ってるぜ。


「安っす!百円かよ・・・」


どうやら従業員への福利厚生?の一環として牛鬼家が格安で提供してるようだ・・・。


ちゃりん・・・ぽちっ


がたっ・・・ごろん・・・


自販機の見た目が田舎の道端で朽ちてそうな外観だから不安だったがちゃんと出た。


「こんな昭和に作られたみてぇな古い自販機・・・よく動いてんな」


独り言を呟きながら所々に錆の浮いたボロい自販機から缶ビールを手に取る。


品揃えは貧弱だ、辛うじてビールは有名メーカーのやつだが他には謎の缶チューハイや見慣れない炭酸飲料、怪しい缶コーヒーが入ってる・・・。


ぷし・・・


ごっごっ・・・


「・・・ぷはぁ!、うめぇ!」


俺はビールを一気に飲み干す。


「湯上がりの冷えたビールは至福・・・私も仕事が終わったら楽しむとしましょう」


「ごほぉ!・・・げふっ!えふっ!」


俺の背後から声が聞こえた!、突然だったからビールが気管に入って咽せたじゃねぇか!。


鼻から出たビールを袖で拭き後ろを振り向くと押翼おしよくのおっさんが立っていた、気配が全然しなかったぞ!。


「驚かせてしまいましたか・・・申し訳ありません」


「いや、大丈夫だ」


「あ、そうそう・・・家珠けだま様から先程お電話がございまして、累塚かさねづか様は入浴中と申し上げましたら折り返し連絡が欲しいと・・・」


斗織とおりから?」


そういえばホテルに着いたら連絡するとか言ってたな・・・。


「電話は通じるのか・・・」


「はい、もちろんでございます、有線の電話回線が引かれておりますのでご案内致します」


そう言って押翼おしよくのおっさんがポケットから斗織とおりの連絡先を書いた紙を差し出した、見覚えの無い番号だからホテルだろう。


「携帯持ってるのにここに連絡するのか?」


「はい、携帯が故障したとの事で・・・宿泊されているホテルの部屋番号も聞いております」


紙を見ると電話番号の下に842と書いてある、これが部屋番号か。





・・・


案内された場所は休憩所の更に奥・・・廊下の突き当たりにぽつりと置かれていた。


「黒電話・・・」


久しぶりにお目にかかるダイヤル式の黒電話だ!。


じーこ・・・じーーーこ・・・じー・・・


先に押翼おしよくのおっさんがホテルに電話をかける、牛鬼と名乗り部屋番号を伝えた後、受話器を俺に差し出した。


「話していいのか?」


「はい、フロントから呼び出して頂いておりますのでそのままお話しください」


とぅるるる・・・


とぅるるる・・・


ぷつっ・・・


「・・・はい」


受話器から斗織とおりの声がした。


斗織とおりか?、俺だ、誠だ」


「誠・・・」


「俺に電話したそうだな、無事にホテルに着いたのか?」


「うん・・・今市内のホテル・・・明日迎えが来て東京に送ってくれるって・・・」


少し様子が変だ、元気が無い・・・。


「俺は帰るのが遅くなりそうだ、村への道が崩れたらしくてな」


「そう・・・」


「俺のバイト先に連絡を・・・ってお前大丈夫か?」


「・・・うん、大丈夫・・・だよ」


反応が鈍いな、それにノイズが酷くて聞き取りにくい・・・だがこの声、話し方は斗織とおりで間違い無ぇ。


「バイト先に連絡入れといてくれ、十日くらい戻れないかもしれねぇ・・・連絡もしないで休んだらクビになるからな」


「・・・わかった、連・・・絡しておくね、それじゃぁ」


ぷつっ・・・


「何だよ、寝ぼけてたのか?」


俺が受話器を置くと押翼おしよくのおっさんが心配そうに俺を見てる。


「あいつ、ちょっと様子がおかしかった・・・」


そう呟く俺に・・・。


「明日迎えの者に彼女の様子を報告させましょうか?」


「あぁ、頼めるかな」


「はい、もちろんです」


俺は押翼おしよくと別れ、休憩所に引き返した。


「ビールをもう1本買って部屋で飲むか・・・」

読んでいただきありがとうございます。


趣味で空いた時間に書いている小説なので不定期投稿です、続きが気になる人はブックマークして気長にお待ちください。


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