読書/桜庭一樹『GOSICK Ⅵ 仮面舞踏会の夜』
前回・第Ⅴ巻において、父親であるブロワ侯爵が、逃亡中の母親を呼び出すため、〈灰色狼〉の末裔である探偵役フレデリカ・ド・ブロワを修道院に移動させた。異母兄グレヴィールの依頼で、〈従者〉的な親友・九条が、フレデリカを救出すべく、列車で彼の地へと赴く。そこでは催し物の最中で、殺人事件が発生。フレデリカを奪還した九条一弥は、帰りの終列車に乗り込むのだが、〈形見箱〉なる赤い小箱を巡って、ソヴュール王国のオカルト省および科学省のエージェント達の抗争に巻き込まれる。
終列車オールド・マスカレード号のコンパートメントに腰掛けた、九条とフレデリカ。
居合わせた四人が、そこでおこる殺人事件の被害者と容疑者とになる。
被害者は〈孤児〉を名乗る少女だ。
真犯人は、〈木こり〉を名乗るギデオン・レグラント。フレデリカの父親にしてオカルト省の重鎮・ブロワ侯爵に妹を人質にとられ、仕方なく、工作員にされて殺人を繰り返す、インテリ青年だ。
ミスリードを担うトリックスターは、先の大戦で息子を亡くし気が変になり架空の公国の〈公妃〉を名乗る元女優ブリタニア・ガブリエル、運転手に入れ替わり彼が自分を殺したことにして第二の人生を歩もうとする破産寸前の炭鉱王〈死者〉ことサム・オーネルが、捜査を引っ掻き回す。
けっきょくのところ、第Ⅴ巻から物語の根幹となるアイテム〈形見箱〉を持っていた謎の少女〈孤児〉は、〈木こり〉によって、仕掛けられた毒によって殺された。殺人のトリックは、ワイングラスの底に氷の蓋をつくり、それが溶けたところで、毒がワインに滲み出てくるというものだった。
すべてを見通したフレデリカは、兄ら警察官たちが捜査で席を外している間に、〈木こり〉を妹ともども逃げるようにうながす。その際、九条に対する秘めた思いを〈木こり〉に告げる。
本巻・第Ⅵ巻は、前巻までの逸話を絡めて、物語の世界観構図を一層深めることになる。
ノート20180824
桜庭一樹『GOSICK Ⅵ 仮面舞踏会の夜』角川書店2005年




