読書/谷崎潤一郎『痴人の愛』 ノート20180120
谷崎潤一郎『痴人の愛』1925(大正14)年
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大阪大学で教鞭をとる、東洋史学者・深尾葉子准教授は、著書『日本の男を食いつくタガメ女の正体』で、伝統的な日本の専業主婦は、亭主の稼ぎを横取りし、たいして小遣いもやらずに、飼い殺しにしてきたというご指摘をなさっている。
タガメは水棲昆虫で、自分よりも大きなカエルや小魚にひっつくつと、毒針を差し込んで、肉を液体化し、それをちゅーちゅーとすするのだ。食事が終わると獲物は、干物みたいにペタンと皮だけになる。《タガメ女》の捕食に甘んじる男は《カエル男》だという。谷崎潤一郎の『痴人の愛』は、まさにそんな、夫婦関係といえる。
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本作品は短編で全28節構成である。時代は、関東大震災のあった1923(大正12)年を挟んだ、8年間で、舞台は主に東京大森である。ちょうど《モダンガール》という言葉が流行っていたころだ。
栃木の素封家の出自らしい、有能な技師・河合譲二は銀座のカフェ《ダイヤモンド》で、15歳の女給ナオミを見かけ、将来は嫁にすべく、女中として雇うことにした。
――出だしからして、おいおい危ないぞ。
ナオミは、下層階級出自で、実家に事情を話すと、あっさりと了承されてしまった。譲二は高給取りだったので、ナオミに教養を施して、いっぱしのレディーに仕立てて、行く行くは嫁にしようとしたのだ。
この手の物語はギリシャ神話『ピグマリオ』と同じ系統だ。日本版なら『源氏物語』、オードリー・ヘップバーン主演の映画なら『マイ・フェア・レディー』に似た感じの出だしだった。
譲治はナオミのために、大森で、画家がアトリエ兼自宅につかっていた家を借りた。そこで二人は同棲し、翌年あたりには籍を入れることになる。
最初、ナオミは、『エヴァンゲリオン』のヒロイン・レイのように、どこか影のある美少女だった。譲治は彼女をタライに入れて、シャボンで洗ってやったり、着せ替え人形のように様々な服を着せたりしていた。まさにお人形のようだった。
結婚前に譲治はナオミと鎌倉に出かけた。鎌倉に出かける列車には、貴婦人・令嬢がいた。譲治は、ナオミは美しいのだが、もって生まれた気質が卑しいため、上流階級の女性達と比較すると、日輪の光ではなく、蛍光性のヒカリゴケのような印象を受ける。
譲治は、ナオミに、ピアノ、ダンス、英語を習わせた。どれもそれなりに上手く覚えた。しかし英語に関しては、個人レッスンの外国人教師の言葉の上っ面を舐めるだけで、意味を理解していない。ナオミは論理的な思考というものを持っていないのだ。
このあたりから、可憐な《お人形さん》を演じていたナオミが暴走を始めだす。
やがて譲治は、ナオミに誘われて、社交ダンス教室に入る。教室は、革命で祖国を追われた、亡命ロシア貴族の伯爵夫人が開いていたものだ。美しく成長するとともに、だんだんと下品な振る舞いが目立ってきた幼妻ナオミに、へきへきしてきた譲治は、伯爵夫人にほのかな憧れを持つようになった。
その教室で、熊谷正雄、浜田裕太郎といった不良学生に出会う。二人はやがて、夫妻の家にちょくちょく出入りするようになった。ナオミは二人をたらしこんで愛人化した。そして、鎌倉に旅行しようと譲治を誘うと、偶然を装って二人が現れ、譲治に内緒で逢瀬をしたのだ。
さすがに譲治も実情を悟って、ナオミの情夫二人の口を割らせ、ナオミを家から追い出した。だが、譲治とナオミの狂態ぶりは、会社に知れるところとなり、いずらくなって、ついに辞めることになる。そうなってみると、ナオミが恋しくて仕方がない。興信所をつかってナオミを探させていると、彼女が舞い戻ってきた。
ナオミは、譲治のコンプレックスを知りぬいていた。譲治が密かに慕っていたロシアの伯爵夫人が愛用していたのと同じ香水をふりかけ、篭絡してしまう。
忘れ物を取りに来たという口実だったのだが、そのままズルズルといつき、譲治との主客関係は完全に逆転する。譲治は栃木の財産を売却し、ナオミの言われるままに、横浜に邸宅を買った。そこで事業を始めたのだが、上手くいったかかどうかは定かでない。たぶん破滅することを予見しているラストだ。
早い話がSMストリーである。『卍』の主要登場人物である柿内孝太郎と徳光光子とをさらに過激にした、奇抜さを狙ったもので、まあ、この話をもって感動したという読者はあまりいないと思う。こんな夫婦はご近所にもそうそうはいない。読者は変な夫婦と自分とを重ねて疑似体験をして萌える。SMなSFであるところの沼正三『家畜人ヤプー』を読んだ漫画家あろひろし氏が、どこまでもいたぶられることの気持ちよさ、「ネバー・エンディング・ストリー」だともおっしゃっている。あろ氏が本作を読んでも同じコメントをなさることであろう。
――まあ、本人達が幸せなんだからそれでいいではないか。
そういう意味ではハッピー・エンドといえよう。
ちょっと似たシチュエーションに英国文豪モームの長編小説『人間の絆』というのがある。この話の主人公青年は、悪女との腐れ縁を断ち切って学業に専念し、医師となって良家の娘を嫁にする。そこに読者は感動するわけだが……。
ノート20180120
*上記記事からの性格診断*
『Personality Insights』より
https://personality-insights-demo.ng.bluemix.net/?text-sample=on
【性格特性】分析された単語1550字 : 適正な解析結果
結果/情に厚いタイプであり、合理的なタイプであり、また役立つタイプです。几帳面なタイプです: 規則正しい生活を強く望んでいます。 現状に満足しているタイプです: 概してあなた自身に満足しています。 また、圧力を受けても冷静なタイプです: 冷静で、予期しない出来事にも効果的に対処します。洗練を意識して意思決定するタイプです。生活を楽しむことと伝統の両方にあまりこだわりません. 単なる個人の楽しみよりも大きな目標を伴う行動を優先します. また人が通った道よりもわが道を行くことを大切にします。
下記のような傾向がありそうです/社会貢献のためにボランティア活動をする。ラテン音楽を好む。ドラマ映画を好む。
下記の傾向は低そうです/商品を購入するときは家族の影響を受ける。娯楽雑誌を読む。買い物にクレジット・カードを使うことが多い。
個性/知的好奇心100% 誠実性88% 協調性85% 外向性78% 感情起伏11%
欲求/理想97% 自由主義96% 好奇心91% 調和88% 仕組84%
価値/変化許容性92% 自己超越65% 自己増進11% 現状維持4% 快楽主義2%
*上記記事からの文章評価*
『文章診断ロゴーン』より
http://logoon.org/kekka.php
文章の読みやすさ:A……とても読みやすい
文章の硬さ:D……文章がやや硬い
文章の表現力:A……とても表現力豊か
文章の個性:A……とても個性的




