読書/ロマン・ロラン『ジャンクリストフ』10巻
『ジャン・クリストフ』第10巻読了。中年期の音楽家ジャン。青年期からの友人女性グラティアと最後の恋をするも、彼女は病弱な息子の介護疲れで病死。晩年、音楽家は仇敵と和解、亡き親友の弟子と交流、養子扱いである親友の息子と恋人の娘の結婚を見届け、新しい音楽の到来を予感しつつ往生する。
『新宿鮫』の大沢在昌先生が、小説の入門書 『売れる作家の全技術』の中で洋書と和書との文体の違いを、洋書は油絵で、和書は水墨画と例えていらした。洋書の文体は、和訳本でも日本人にはちょっときつい。だが音楽家の生涯を描く『ジャン・クリストフ』について、私は案外とすらすら読め、率直に感動した。
ロマン・ロランが1904年に発表した『ジャン・クリストフ』 最後のページを読みだしたとき雷雨が生じ、感想を書き終えた今やんだ。なんとも凄いBGMの中、本を閉じる。
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〈キーパーソン〉
〇グラチア……ジャン・クリストフの最後の恋人。イタリア女性。第3巻、主人公ジャン・クリストフが故郷の南ドイツの田舎町にいたころ、フランス劇団団員として訪れ彼と出会う。教養深くはないが、知的で機転がきく。オーストリアの伯爵位をもつ外交官の夫人となる。第8巻でパリのマスコミに叩かれている主人公を助ける。その後、夫は決闘により先立つ。第10巻では恋仲になるが、病的なマザコン・カマッテちゃんの息子リオネロにより妨害される。やがてリオネロが本病没すると、看病疲れから、ちょっとした流行性の風邪で死亡する。上級国民女性コルネットの従姉。貴族。
〇オーロラ……グラチアの娘。リオネロの姉。初登場11歳。母親の愛がリオネロに独占されたため、母の友人であるジャンに懐き、父親のように慕うようになる。貴族。
〇リオネロ……グラチアに最も愛された息子。初登場9歳。仮病の名優。強烈な自己暗示のためによるものか、そのうち本当に病没した。ジャンを憎み、ジャンと母親の恋路を邪魔する。貴族。
〇コルネット……ジャンの元教え子。フランス・パリの上級国民の娘。俗物的なところがジャンに嫌われ、音楽教師を辞された過去がある。他方で面倒見が良く、グラチアが高原で療養している間、コルネットは彼女の娘オーロラを預かっている。ジャンには良く思われていないのだが、ジャンに好意を持ち続け、グラチアの急死に関しては、従僕を介して伝えている。上級国民。
〇エマニュエル……詩人オリビエ・ジャンセンの弟子。第8巻の登場時点では下層民少年職工。師範大学を卒業したオリビエから学問の手ほどきを受けるが、妙に曲解して、オリビエを呆れさせる。「暴動」の際、オリビエを関わらせてしまったことは、間接的にオリビエ死に追い込む。さまざまな職を経て詩人となる。第10巻でジャンがエマニュェルの詩集を本屋でみつけたのがきっかけで、アパートを訪ねる。最初、オリビエ信奉者の彼は、オリビエに最も愛されたジャンに嫉妬からくる敵意を持っていたが、やがて親しい友人となる。くる病。隣室に恋人が住み世話を焼く。下層民。
〇ジャックリーヌ……詩人オリビエ・ジャンセン夫人。第8巻で詩人と結婚。一子ジョルジュを産んですぐに出奔。オリビエを絶望させる。オリビエの死後、更生して息子を養育する。息子が自立しかけると、宗教にはまり、慈善家の尼のカモにされる。上級国民。
〇ジョルジュ……詩人オリビエの忘れ形見。スポーツマン。病弱なオリビエとは違って健康で、各種競技で好成績を収める。多趣味で、一時はジャンの許を訪ねて、音楽家になろうと試みたが、すぐに飽きた。ジャンやコルネットの意もあり、グラチアの娘・オーロラと結婚する。上級国民。
ノート20210823




