表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「、ゲームへ」  作者: ヒト
第ニ章 骨の髄まで
PR
38/38

「腐った花」

翔の連絡先を開いてた。

「助けて、地下三階」

雪ちゃんとの再会の邪魔をして悪いが、俺だけじゃどうにもならない。何か武器になるものを探すために周辺の棚を漁ってみる。そこで丁度いいサイズの鉄パイプがあった。実際、こいつを振り下ろす度胸が俺にあるか分からないが、こうなった以上、やるしかない。

「百合さん、ここにおってくださいね」

埃の被ったドアノブを捻って、外へ出る。


そしたら足音が聞こえた。しかも、一人じゃなく二人だ。きっとコピーがここに来たんだと確信する。

覚悟を決めて、鉄パイプを握った。

「ちょこまか逃げたら駄目ですよ?ね?」

クロが突っ込んでくる。

今度はいける、今度は、今度こそは──

「ガンッ」

鈍い音と共に頭が割れたクロは消えていった。

コピーもこちらに来るのが見えた。正面からやり合うのは不利だと分かっているので、このフロア全体を使う。俺は入り組んだ通路を走り、コピーの視界から消える。


不意打ち狙いの戦法だ。卑怯だ、なんて言われても俺は生きたいんだ。死にたくないんだ。

それなのに、覚悟を決めたのに手が震えている。頭を砕く感触が鉄パイプから伝わって体に響く。怖くなって手を離しそうになった。覚悟は出来てる。それでも怖いものは怖い。

立ち向かう勇気、貫き通す勇姿が無かったんだ。でもここで悩んでいれば、それこそ死ぬ。

恐怖を誤魔化すように、またパイプを強く握った。


視界に奴を捉え、最小限の動きで背後に近づく。間合いに入った。

後は、振り下ろすだけ──

「迷ってますよ」

獣のような目が俺に喰らいついた。不意打ちはスラリと躱された。そこに強烈な蹴りが飛んできた。咄嗟に防御を取った。だが、この蹴りは腕ごと体を吹き飛ばすという、あまりにも強烈なものだった。警戒していなかったら、骨が折れるレベルでヤバい蹴りだ。


そこからコピーの追撃が始まった。

崩れた体勢で何とか攻撃を受け続けた。そのおかげで少しずつ状況に慣れてきた。

そこでようやく反撃に出る。

「当たれぇぇぇ!」

苦し紛れに振り下ろし、見事に躱された。でも今度は一撃だけじゃない!

下がったところに渾身の力で振り下ろした。

「バキッ」

左の上腕から鈍い音が響く。あの感触もお構いなしに俺は鉄のパイプを振り下ろし続けた。

コピーが頭を守ろうと腕で防御するが、それを逆手に取って肋骨あたりを狙った。骨を砕く音と金属音が静かな地下に響き続ける。力が弱くなったのを感じて、今度は頭を狙った。防御していた腕も意味をなさず、鉄パイプがめり込んでいった。


何度も、何度も、何度も振り下ろした。

いつの間にか恐怖は──

「蒼汰、やめて!!!」

突然、百合さんが俺の手を押さえてきた。

あぁ、もうコピーは攻撃できないからこれ以上はいいのか。百合さんの無事を確認するために顔を向ける。

刹那、俺の頬に強い衝撃が走る。

突然で混乱したが、それは百合さんの平手打ちだった。訳もわからず、俺は混迷を極めた。

ただ百合さんは、俺の目を覗き込むように見ていた。そこから少しの間があって、「落ち着いた?」と声がした。


その言葉に、ただ「はい」と答えた。

一連の出来事に憤りを覚えることはなかった。

混濁した意識が晴れたことで、意識は鮮明になる。

「もうあんな事、絶対したら駄目やから」

その声からは少し怒気を感じた。でも、その意味を俺はまだ理解できなかった。

殺したコピーのほうを見ると、跡形もなく灰となって消滅していた。その光景は生涯、忘れることなく残り続けるだろう。


落ち着いたのも束の間、エレベーターの開く音が聞こえた。一気に背筋が寒くなる。

自分の楽観さを呪い、またあの感情と向き合う。

「百合さん、隠れててください」

重い足を前に出そうとするが、それを百合さんが止めた。

「馬鹿、隠れるよ」

そう言って手を引っ張ってきた。その手は力強く、強引に感じた。

「離してください」

その力に俺は抵抗した。ここで引けば、奴らのほうが有利になる。少しでも優勢に立たないと、後から来る翔も危険に晒してしまう。

それに俺は──


百合さんは拒絶するように腕を強く引く。

何度も話しかけたが、ことごとく無視されてしまう。我慢できず俺は腕を振り払ってしまった。

「離してください!」

想像以上に声が出て、怯んでしまう。

そのせいで余計に頭が回らなくなってきた。

自分が何になりたかったのか。それを求める理由さえ漠然としてきた。

「百合さん、どうしてここにいるんですか?戻りますよ」

エレベーターから降りてきた人物がこちらに話しかけてきた。そして回らない頭は声の方を見て、理解できるものだけを求めた。

こいつは人じゃない。コピーだ。


俺は助走をつけてコピーに向かって攻撃した。驚くほど簡単に躱された鉄パイプは、床を鳴らし、手を痺れさせただけだった。急いで、前傾の体を起こして振り返る。

そしたら色々なものが目に入った。

でも意識は限定され、それしか認知できなかった。

俺を見下す目、俺を憐れむ目しか。

どうも、ヒトです。この作品を読んでいただきありがとうございます。良ければ感想やブックマークをしてくれると嬉しいです。誤字脱字もあったら報告していただけると助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ