92 豪勢な合成
「ピコーン、ピコーン、ぴこぉぉぉんんんん!!!」
僕は夢の中でひたすらピコピコ叫んだ。名案を我が身に降臨させるために。
そんな事をしている間にもリコッテはブラに手をかける。その大きさでする意味あるの? いやいや、そうじゃない、そうじゃないんだ。そういう事を考えている場合じゃ無い。くそぉぉぉ、為す術が無い。諦めるしか無いのか?
もう駄目だと覚悟を決めたその時、僕の頭に音が響く。
ピコーン!
そして目を覚ました。命の恩人はノートPCに設定したアラームだった。どうやら7時間経過したようだ。冷や汗と心臓の激しい動悸コンボが、確実の僕の寿命を縮めていると感じさせる。助かった。色々な意味で危険すぎるぞリコッテの夢。
そして44日目がスタートした。
僕は慌ててアイボウの状況を確認する。行程は全て完了していた。すぐさま工場からアイボウを転送する。アイボウの合成結果は・・・。
「うぉぉぉ。」
呼び寄せたアイボウの姿を見て僕は思わず叫んだ。アイボウが・・・狼型ジャンクになっている。見た目は大型犬、白い毛がフサフサ生えていて、鋭い爪と牙が追加されている。尻尾が短いのは以前のままだ。アイボウは僕を見て、いつものようにその短い尻尾を勢いよくブンブン振っている。
「アイボウぉぉぉぉ。」
僕は泣きながらアイボウに縋り付いた。相変わらず僕をクンクンするのは変わらない。以前よりも遙かに大きくなった身体は、金属の堅さから筋肉の固さに変わっていた。なんかこれって悪魔を合体させるゲームを思い出すなあ。あれもダンジョンものだった。
どの程度の身体能力になったのか、第五層のフィールドを走らせてみた。・・・速すぎて目が追いつかない。雪の上を移動するペナルティーが無くなっており、自由自在に移動可能になっている。
次は障害物の木に攻撃命令を出してみる。大木を一瞬でかみ砕き、身体を使って吹き飛ばした。さらに爪による追加攻撃でバラバラに引き裂かれていく。
「すげぇぇぇ!!!」
とんでもなくパワーアップしている。これなら第五層の魔物と互角以上に渡り合えるはずだ。ウーナやスバードにも同じような事が可能なのだろうか? 今回は犬型と狼という相性が良さそうな組み合わせだった。別パターンだと失敗するという可能性も出てくる。しかしこれからのことを考えると、合成無しで進むのは無理だ。
そういえば合成素材が残っている。マザコンの核だ。フロアボスの核を合成に使用したら、いったいどういう結果になるのだろう? けっこう危険な賭になる。どうするか考えた結果、今回はやめておくことにした。とりあえずはアイボウ狼バージョンで戦ってみて、二進も三進もいかないようなら判断を下そう。
ということで第五層の探索に再出発する。今日は吹雪が少し弱い。視界が3メートルぐらいまで確保されている。どうやら第五層の吹雪は、一応強弱があるようだ。もしかしたら僕はたまたま酷い日に当たっているのかも知れない。
昨日、白狼とエンカウントした場所へと向かう。ええっと、狼って基本群れを作るよね。昨日は群れという数では無かったけど、今回も同じような状況であるという保証は無い。僕は誰にともなく祈った。そんな中、偵察を行っていたスバードが敵を捕捉する。その結果を確認する。
「うん、祈りなんてものは役に立たないね。ほうら、白狼達の大歓迎が始まるよ。いち、に、さん、し、ご、ろく・・・もう数え切れないなぁ。ははははは。」
なんだか、いつの間にか囲まれている。たぶん10匹以上はいる。いくらアイボウがパワーアップしたからといって、さすがに無理ゲーだ。前回、一匹倒したことによって、敵は警戒して包囲網を形成したのだろう。狼は頭がいいなぁ。感心している場合じゃ無いけどね。
最近、毎回言っている気がする。でも言わざるを得ないよね。いったい、どうすりゃいいんだ?




