第7話:初陣
王国軍の編隊が二手に分かれた。 半数は街への地上攻撃にに向かい、半数が覆いかぶさるようにアルマリンの妖精戦闘機へと襲い掛かった。
遠くから見ると、小鳥が群れて飛んでいるように見えるが、あの場は地獄に違いない。
もう半数は、城と街に向かったのが見える。
『戦闘機の戦いは、上を取ったほうが絶対に有利だから、A6M5の方が厳しいわ』
「ティテ。A6M5って何?」
『ん?何って。スフィアの家の戦闘機よ、A6M5零式艦上戦闘機』
「良く解らないわ。ティテは妖精なのになんで詳しいの?」
『んー?この妖精飛行機と一緒になったときから、知識が流れ込んでくるのよ』
「知識?」
『そう、操作方法や、妖精戦闘機の名前や性能とか…
王国軍はキ43-II、隼
どちらも似たような戦闘機だから、数や高さが勝敗を決めるわ』
A6M5と呼ばれた戦闘機は、ファルコンに上から降られ、攻撃によって穴を穿たれ。ファルコンの後ろにつけたA6M5は、更に後ろから来たファルコンに落されていく。
「ティテ」
『うん、行きましょう』
私たちは気づかれない高度から、機首を上げねじり込むように宙返りして降下を開始する。
『今、下で戦っている妖精戦闘機は軽戦。旋回戦を得意とする機体』
私は、左下パネルのダイヤルを回して胴体機銃を選択する。
『私たちのキ44-III鍾馗は、設計思想が違うの』
操縦桿の安全扇を解除する。
『大出量のエンジンは、速度と高度を得意とする機体』
急降下に入った機体は、速度を増してA6M5の後ろについたファルコンの目指す。
『撃つときは、指切りよ。トリガー引きっぱなしだとすぐ撃ち尽くすからね』
右や左に機体を振って逃げようとする、A6M5に光の帯を放っているファルコンに…
『てー』
「はい」
私は、教えて貰った指切りを三回行なう。
ドドド、ドドド、ドドドと機体が震えると、キ44-IIIの20mm機銃弾がファルコンを襲う。一回目は外れ、二回目は尾翼に、三回目がファルコンの翼をもぎ取る。
『機首上げーー』
操縦桿を引いて機首を上げる。
後ろを見ると、撃たれたファルコンは錐揉して落ちていく。パラシュートが開いているのが確認できる。
「良かった」
A6M5の方は翼を振って感謝を示していた。
『スフィア!』
ファルコン二機が、私を追ってくる。
『追いつけるものですか』
二千、三千、四千、五千こちらはまだ上昇しているのに。ファルコンは止まったようになり。機首がお辞儀し始める。
私は左斜め下にロールすると、下向き斜めにループする。
戦闘機動。私は思いっきり操縦桿を引く。「あ…ぐっ」身体全体に自分が何人も乗っかったような重みが襲った。椅子に押さえつけられ操縦桿を握る腕を維持できない。視野が前方に狭まっていき――真っ暗になる。
「な…に、前が見えない…」
『スフィア!ブラックアウトよ、操縦桿を緩めて!』
(緩める?押すの?この状態から?)
歯を食いしばる。
「あぁぁぁぁ!」
叫びとも呻きともつかない声を振り絞り、何も見えない世界で、私は、操縦桿を力の限り前へ押す。
視界が戻ると、目の前に静止したように見えるファルコンがいた。指切りで二機のファルコンを仕留める。
私は、パイロットが、機体から飛び出すのを確認する。
『凄い、凄すぎるわ!スフィア!』
「不思議ね、敵機の動きが良く分かるの。私の撃ったところに当たりに来てくれるのよ」
更に後ろからついてきた機体を見る。垂直尾翼が赤く塗られたA6M5だ。
「あれは…お父様?」
(私が追われているのを見て助けに来てくれたのね)
速度を合わせて並走すると、お父様は、キャノピーを開けて。街の方を指さした後に。手のひらを私に向けて押し出すようにしている。
「ティテ。分かる?」
『うーん、街を頼むって言ってる?』
街を見ると、煙が上がり、火の手が見えた。
「あああ、たいへん!」
私は翼を振ると、街へと向かう。
お読みいただき有難う御座います。
少しでも面白いと思っていただけたら、どうか★をお願いいたします。
作者が折れないため是非ご協力ください。




