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第13話「校内ライブ(1)」

大変長らくお待たせしました

今日から少しずつ連載を再開します!


ソロを見せた観客たちの反応を見た後にアリスの歌い出しから曲が始まる。


歌い出しの歌詞を聞けば観客たちはワッと歓声が上がる。

美步のブリッジミュートとダウンピッキングと、手に相当な疲労が来るはずだが、演奏している表情はとても楽しそうだ。

望んでいたものがやってきた。その嬉しさは他の3人の誰よりも感じているはず。


先に演奏する曲は日本人なら誰もが知る代表的な曲。

メロコアバンドの曲だが、そこに織りなす繊細かつ現実に寄り添っている恋愛歌詞は多くの人たちの心を突き動かし、浸透した。



アリスはこの曲でギターの出番はない。ただその分ピンボーカルとして力強いボーカルではなく、元バンドに寄り添った優しい歌い方。

しかし煽るところでは煽る、という人前に立つボーカルとしてハイパフォーマンスを見せつける。








アリスの歌う姿に盛り上がる観客たち。その様子を千景はベースを弾きながらずっと眺めていた。

自分のような存在が人前に立ち、楽器を弾き、バンドとして盛り上がりを「作る」側になる。

何者でもなかった自分が、何者かになったような気がして、眼鏡の下の彼女の眼は優しいものになっていた。



「ほら、一緒に歌って!」




アリスの煽りと共に観客のサビの大合唱を招き、千景がコーラスに入る。

人前で歌うことすらままならなかった今までの人生が嘘のように変わった。

目の前のモヤが開けた、そんな感じがしてならない。


アリスは観客を煽り、大合唱をしている最中千景の方をチラリと見る。


彼女の屈託のない笑顔が千景にさらなるやる気を引き出す。


「楽しいだろ!バンド!」



その笑顔に彼女はベースを弾く弦を強く指で弾いて回答を出した。









1曲目もあっという間に終わったところでアリスがギターを担ぐ。

日本の代表的な曲から飛ばし、会場の雰囲気も増してきたためか、ギターを担ぐだけでも「おおっ!」と歓声が湧く。

アリスは「ギター持っただけよ?」と笑いを誘う。


さてギターを持ちジャッジャッと軽く2回ほど鳴らし音の感触を確かめる。


そしてもう一度観客の方へ向く。

蜂屋と吉留はわかりやすいように盛り上がってくれいるのを見かけ、それ以外の生徒の興奮度合いも距離が近いからか熱気と汗が伝わってくる。


そういつところがアリスが音楽が好きな理由なのだろう。

するとアリスはそのままマイクで語りかける。




「次私たちのオリジナルやるね。」

「わかんなくても大丈夫。当たり前だから。」

「でもこの熱気を、みんなのストレスを、楽しいっていう感情を私たちにぶつけて!!」


アリスのMCにまた一つ観客が湧くと紗奈はハイハットでカウントを取り曲を始める。



BPMは約185〜200あたりだろう。

通常よりも少し速い、といったところか。


ドラムは8ビートを叩き、ギター2人も前を向いて弾く。

美步は首を振りながらリズムを刻みそれに合わせてアリスも「オイっ!オイっ!」と観客を煽る。


運動部が多いからか、ノリの良さというのは簡単に伝播していきそれもまた一つの大合唱になる。


ただ紗奈はこの時少し気になっていた。

前方は盛り上がってはくれているが、後ろの方をよく見ればただ立って見ている人たちや、興味関心を示さない人もいる。

怪訝そうな表情を一瞬だけ浮かべ、また自分の演奏に集中する。


十数秒弾き、ドラムのタム回しの後にシンバルを両方鳴らした後アリスの歌声とリードギターがコードを刻むのが体育館中に響く。






「善良な言葉も

悪い言葉も

その裏を解ることが

大事なんだろうな」






丁寧に歌った後に、バスドラムとフロアタム、スネアが同時に叩かれてベースとドラムが再び鳴り響く。





「それをわかった時の

キミの背中は

とてもデカく見えるぜ

成長してんだなって」






ここで更に声を大きく出し張り上げ歌う。パワフルな歌声が観客とバンドメンバーに突き刺さる。

サビ前。ドラムの複雑なパターンと共に、リードギターがブリッジミュートを始める。





「どうしても吐いてしまう

悪い言葉をな

でもそれを悪にしちゃ勿体無い

一つの『救い』だと信じよう」






信じよう、というところでアリスの歌声のノビが発揮される。ドラムはフィルインからのタム回しを発揮してスネアを連打する。

そしてここからはバンドメンバー全員による合唱。


一人一人の勇姿に、教えられたわけでもないのに観客たちはまた声をテンポに合わせて発声する。

ただ、その発声も前方の人たちのみ……だろう。






「人生なんて死ぬ前の前口上

どんな言葉を吐くかは自分次第

その言葉たちが

キミを彩り導いて

キミの色が決まってゆく」






彼女たちが選んだ歌詞の雰囲気は青春パンク。

しっとりしないどころか非常にアップテンポで、聴いていて気持ちがいいというもの。

そしてかっこよく、ライブ映えするというもの。


感情をそのまま、そしてメロディックな歌詞にしてぶつける様はまさしく「ロック」であり「パンク」だろう。



サビが終われば続けてアリスは歌う。





「喜びも悲しみも怒りも

言葉によって飾られる

それぞれの色があるから

キミが美しくなる」






すぐにサビ前へと移っていく。




「わかりきってるものでもいい

わからなくてもいい

言葉の伝え方を学べば

道が拓けたりするんだぜ」




そしてアリスはもう一度声を張り上げる。額に映る汗は、体育館の電気によって照らされている。

光輝く汗が、ぽたりと木目の体育館の床に落ちる。


もう一度サビを歌う。


観客たちは自然ともう一度拳を上げる。

その光景がバンドメンバー4人にはとても美しく見えている。

望んでいたものの光景はとても綺麗なもの。それを見れただけでも嬉しいのだ。


音が空間を揺らす。大きな波ではない、小刻みに刻んだ音の振動。

ギターの鋭い音からドラムの野太い音。

交互に体育館に響く。



さて次の歌詞に移る間、しばらくは美步のギターソロ。アリスはコードを弾いているだけだが、その分観客を煽る。


リードギターを始めたタイミングで美步は腰を反りギター弾いているところをアピールしながら弾く。

そのギターの様はところどころミスがあるものの、それを帳消しにする丁寧で力強い。


さてドラムのタイミングがズレるスネアの連打と共にタム回しで場面が落ち着く。


場面が落ち着くが、ラスサビへと続けるためにアリスのバッキングと歌声が鍵になる。


アリスは息を吸って、歌う。

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