冬のぬいぬい全部大会。青春の熱いきもち。その果て。
冬のぬいぬい全国大会が無事に終わり、
大会関係者達は、近くのパエリアレストランでその打ち上げ的なお疲れ様会をしていた。
「パエリアてなんやねん」
「よく知らぬが、おそらく食べ物と思われる」
「この赤い水は何事だ?」
「ヤインなる酒類でござる。」
「メニューにはワインと記載されておるぞ」
「ヤイン笑」
「ワイン笑」
夜がゆるやかに流れていって。
朝。部室。
葉隠学園ぬいぬい部は、青春の限りを絞り出し、なんと審査員特別賞。お見事。
そうして、3年生であり、部長である。
吉備津彦命。
通称ミコト部長は、この大会を以て卒業。
部長を引退。
の予定であったが、ミコト部長は、卒業するための単位が足りず、留年が決定。
もう1年、ぬいぬい部の部長を務めることとなった。良かった。ミコト部長、美しくあれ。
パン。
『ミコト部長、おめでとうございます』
喜びの、お祝いの、クラッカーの破裂音を
けたたましく鳴らしたのは
不器用ながらも、熱心にぬいぬいを愛する
柳生新左衛門宗厳(やぎゅう しんざえもん むね
よし)。2年生。剣聖。
そして、
クラッカーから発射されたリボンテープにまみれ、それでもクール真っ最中の、
『やれやれ……その発射された赤のリボンテープ、それは俺と愛しい人との小指に巻き巻きされた、運命の赤リボン。
かつてないほどシネマティックなロマンチックな今この瞬間に、やれやれ。好きが破裂する。生きている事にマジ感謝。
同じ時代に生まれたこの奇跡を、今夜、お手紙にして君に伝えよう。帰りに文房具屋さんに寄り道をして、とびきりファンシーなレターセットを購入するのさ。やれやれ。やれやれ。今すぐに好きと伝えたい。大好き。夜の帳がおりる頃、君を迎えに行きたい。君を奪ってしまいたい。
もしも許されるのならば、この想いを、星に願いを。
君が俺を見つめている。
俺のハートは限界ビート刻みまくり。
やれやれ。愛。永遠にキスしたい。』
伊藤一刀斎景久
(いとういっとうさいかげひさ。)
2年生。生涯無敗。
『ありがとう。柳生ちゃん、伊藤ちゃん。
次の大会では、絶対に優勝しようね。』
ミコト部長が美しく光の中で笑顔を見せた。
逆光とリムライトに覆われたその姿は神々しく、
イラスト化さえ困難であるほど。
さあ。
青春を始めよう。
次の、ぬいぬい部の大会は、
春のヤマザキパン杯だ!
戦え。葉隠学園ぬいぬい部!
ふわりとゆれるカーテン。
留年お祝いのパーティー。
お菓子とヤインが並ぶテーブル。
一刀斎はそのテーブルの下で、こっそりと
愛しい人の指に、そっと触れてみた。
柳生ちゃんは、ミコト部長の方を見ていたが、
誰にも秘密に
その指をそっと握り返した。
………トゥクン。




