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第一話 集う場所

人に表と裏があるように、世界にも表と裏がある。その、"裏"を見に行こう。……いや、彼らにとってはどちらも変わらないのだけれど。

 とあるアパートの一室に、犬と猫が住んでいた。飼い主はいるのか?いや、安心してほしい。犬と猫というのは比喩である。二人の人間が一つ屋根の下で暮らしていた。


「あー、金欲し。なー手頃な依頼ないか?」


 白髪で髪を結う男性がソファに体を預けながらそう嘆いた。黒い瞳は天井を見ている。スマホを気だるそうにポチポチいじりながら、もう一人の回答を待っていた。


 同居人がぼそっとその言葉に返事した。


「小遣いはどうしたんだよ。昨日の依頼分は。」

「ん?借金に返済した。」

「……またか。」


 はあと、ため息をつくのは黒髪の男性。白髪の男性より一回り小柄である。マスクを下げて金色の瞳をそちらに向けた。


「おまえな、まずあんな額の借金おかしいんだよ。わざわざ払う意味あんのか?」


 その言葉を受けて、白髪の男性はニヤリと笑う。ガバっと姿勢を正して言った。


「さっさとこの借金地獄から出たいんだよ。」

「……たぶん十年たっても出れない金額だが。」


 彼らは、ともに過去を抱えてシェアハウスをしている。そしてついでにお金稼ぎと称して"何でも屋"を営んでいるらしい。

 白髪の男性、名前は"柴田阿久戸"は借金を背負っているようだ。金額はなんと十億。元金でも二億という泥沼につかっている。自分で借りたのなら自業自得ではあるが、親から押し付けられたものなので何とも言えない。


 それを知っているのは同居人の"黒神琥珀"のみ。彼もまた言えない秘密があるのはここだけの話だ。


 彼らはそれぞれコードネームという名の"偽名"をつか活動中だ。阿久戸はシロと名乗っている。琥珀はネコと名乗っている。どちらも何とも安直で危機感のない、そんな名前だ。


 ネコは立ち上がると引き出しから封筒を取り出した。

「はい。ご覧あれ。」

「お、やっぱりあんじゃん。」

 ご機嫌そうにシロは封筒を開く。中にはこんな文章が書かれていた。


【こちらの猫を探してほしい。】


 その文章を見て思わず阿久戸はソファに依頼書を叩きつけた。

「俺らは犬じゃねぇ!!!」

 そんな悲しい悲鳴が辺りに落ちた。琥珀はクスクスと笑っている。

「でも、鼻はきくだろ?シロ?」

「だから犬じゃねえって。」

 否定しながらも目線はそこから外れなかった。それもそのはず、猫探しの依頼にしては高いのだ。

「てか依頼料バカ高いな。一、十、百……。」


 その依頼料およそ十万円。猫探しでこれは破格なのかそうなのかは本人にしかわからないだろう。じーっとシロは依頼書を見つめてあきらめたように肩を落とす。


「やるよ。依頼達成したら焼き肉行こうぜ。」

「……了解。」

 ネコは意外にもまんざらでもなさそうだった。




 ネコはヘッドホンを付けると再度机に向き合う。机には無機質なモニターがずらりと何かを映していた。


「まずは、情報収集だ。それは僕に任せてよ。」


 ネコは再度モニターに向き合う。

 ネコの担当は情報収集。インターネットにはびこるありとあらゆるデータの中から、必要最低限の情報を盗むのだ。いや、言い方を変えるのなら”借りる”だろうか。


 二人しか住んでいない一軒家にカタカタとタイピングの音が広がっている。シロは慣れているのかソファでその背中を見ていた。

 ふと、シロは気になったのかボソッという。

「てか、ペット探しに十万って。一般人も血眼になって探してるんじゃないか?」

 ネコのタイピング音が止まった。そしてゆっくり振り返りため息をつく。

「ちゃんと依頼書見ろよ。依頼主がかなりの有名人なんだ。」

「ん?そうなのか。」

 放り投げた依頼書を雑に拾いながら再度目を通す。そこにはちゃんと書いていた。宛先という名の依頼主の名前が。


【七代目当主。安藤美里】


 それをみたシロは顔をひきつらせた。

「うわ、最近話題の組ってやつだろ?」

「ヤクザって言ったほうが早いね。いや、金を貸し出ししている金融会社かもしれない。」

 さっきまでご機嫌に猫をどう探そうか考えていたというのに、げっそりと肩を落とす。

「そこのやつら、俺らを探してたよな。素直に依頼すれば会えるものを……いや、ばれてね?」

 それもそのはず。依頼書は封筒に入れられ、直接この家に届いている。その危機感に気づいたシロはさあっと青ざめた。


「おいおい、ネコちゃん。これやばいんじゃない?」


 しかし、そんなうろたえるシロとは裏腹にネコはのんきにパソコンに向き合っていた。片手でココアを飲んでいる。

「別にやばくない。ネットに書いてるんだもん。依頼はこちらまでって。そこを突撃する馬鹿はいないはずだ。」

「”もん”じゃないんだよ。まったく、相変わらず頭はいいのに抜けてんだよな。ネコちゃん。」

 シロはそういいながらも、知っている相方であるネコの実力を。それから自分がどこまで行けるかを。


「てか、ネコちゃん。早く地図出してよ。今すぐ行きたいの。」


 せっかちなシロの言葉にネコはピクリとこめかみを動かしていう。

「おとなしく待ってろ、バカワンコ。」

「だから犬じゃねえって!?」


 そんな悲痛な叫びが一軒家に落ちた。依頼主の飼い猫はいったいどこに消えたのだろうか。

記憶の管理者の設定見直し中にこちらを投稿します!よければ見てください!

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