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賞味期限1年の恋  作者: AM
第1章 お互いを知るためには
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凪音編:1話 新学期当日

ジリリリリ…ジリリリリ…

「んっ…」

ジリリリリ…ジリリリリ…

「はぁ〜…」

ジリリリr…

「クッソ…全然寝れなかった…」

今日は新学期。いつもは爆睡して目覚ましの音にも気づくことがないくらいなのだが、今日は違った。やはり緊張しているのかもしれない。どうも学年の変わり目である新学期は嫌いだ。1番嫌いなのは新クラスでの自己紹介だ。まず、自己紹介は単純に自分の名前を言うだけでいいのではないか?と思うかもしれない。だが僕はそうは思わない。自己紹介には大抵名前を言った後に、好きなもの、好きなスポーツといった、自分の好きなことや、趣味を言うのが一般的だ。だけど、僕には好きなこともなければ、趣味もない。ましてや好きな食べ物すらないから、余計にタチが悪い。新学期の朝はどうやって浮かない程度に自己紹介をするかと考えるのが、1年間で1回だけのルーティンとなっていた。リビングに行き、僕は菓子パンを食いながら朝の情報番組を見ていた。

「全国の学校では新学期が…」

やっぱり新学期の話題でもちきりだな…

「あんた、今年のクラス誰と一緒がいいとかあるの?」

母さんが、仕事の準備をしながら僕に聞いてきた。

「んー、恭平と伊崎がいれば1番嬉しいかな。」

「そう。一緒だといいわね。」

そう。この2人がいれば、なんとか1年間楽しく過ごせるだろう。神様どうかこの2人と同じクラスにしてください!と心の中で願うことにした。いや、今更願ったって遅いのかもしれない。そう思いながら登校した。

さて20分くらい歩いた先に中学校があるのだが今日は歩くスピードが遅かったのかいつもより5分遅れて着いた。玄関前に貼られている新クラスのメンバー表を見る。僕は6組か。2年間ずっと3組だった僕には6組というのは新鮮に思えた。でも1番大事なのはメンバーだ。さてさて伊崎と恭平は同じクラスかな〜。………お!伊崎同じクラスじゃん!これは今年も楽しいぞ〜。あ、恭平はどうかな?確か恭平の苗字は来栖だったはず。……お!いた!やった!願いが叶った!軽い足取りで僕はクラスに向かった。

「よお、凪音!」

「恭平!今年もよろしくな。」

「ああ、よろしく。そういえば聞いたか?」

「何を?」

「うちの担任、生徒指導の大山だってよ。」

「あいつかよ。」

「マジであいつが担任じゃなかったら最高だったのにな…」

ほどなくして教室のドアが開いた。

「あ〜い、席つけ〜。今日からこのクラスの担任になった大山です。まあ皆さん受験生ということで、3年生の生活は緩むことがないように頑張ってください。じゃあまずは自己紹介を1人ずつしてもらうぞ〜」

あー、ついにこの時間が来てしまったか。何話すかな?しかも僕の苗字は北村、わりとすぐ順番が回ってくるぞ。

「私の名前は朝倉…」

1番のやつが自己紹介しだしたな。朝倉さんか…可愛いな。

「はい。じゃあ次は北村。」

もう順番が回ってきやがったか…

「はい。僕の名前は北村凪音です。好きな食べ物はスイカです。」

もちろんスイカを特別好きだと思ったことはない。ただパッと出た食べ物がこれしかなかった。ボーっとしていたら、もうクラスの半分の自己紹介が終わっていた。

「じゃあ、次、三森。」

「はい。私の名前は三森沙月です。趣味は読書です。」

その瞬間、僕は目を疑った。いや、これは男子全員が目を疑うだろう。なぜか?それはあまりにも可愛かったからだ。いや、そう感じるのは僕だけかもしれない。でも、少なくとも僕は彼女に一目惚れをした。初めてだった。一目惚れをすることなんて。今までそんなことはしたことがなかった。自分の今の状況を整理しているうちに自己紹介の時間が終わり、休み時間になっていた。あとは全校集会でながったるい話を聞いて終わりか。そう思っていたら伊崎が話しかけにきた。

「相変わらず三森さん可愛かったな。」

「あ、あぁ…」

「どうした?凪音?なんか顔赤いぞ?」

「そんなことは…」

「あれ?もしかしてあれか?一目惚れか?」

「違うわ!」

「まあ無理もないよな。でも簡単に三森さんと付き合えるとは思っちゃあいけないぞ〜。やっぱりあの子モテるからなぁ〜」

「あぁ…」

あぁ…しか言葉が出なかった。全校集会が始まったが気づいたらいつのまにか終わっていた。やっぱりまだ一目惚れの余韻があるのかもな…

キーンコーンカーコーン

下校のチャイムだ。帰ろう。

帰ってる途中、珍しく僕は明日も学校に行きたいと思った。これも三森さんのおかげなのかもしれない。だけど……やっぱり好きになるのはやめておこう。好きになってもいいことなんてないから。一目惚れして好きになるなんて馬鹿みたいじゃないか。まだ話したこともないのに。それにやっぱり恋愛をするとなると、どうしてもあのことが脳裏をよぎってしまう。忘れたくても忘れられないあのことが……よし。もう恋愛のことを考えるのはやめだ、やめ。そうこう考えているうちに僕は家の玄関の前についていた…。

夕飯を済ませ、僕はやらなければならないことを思い出した。それは自己紹介カードを書くことだ。うちの学校には新学期に自己紹介カードなるものを書かなければならない風習がある。何を書こうか。とりあえず似顔絵から取り掛かろう。去年と同じ感じで書こう。よし、可もなく不可もない。さて、あとは特技の欄とクラスへの一言か…〈よろしくお願いします〉以外の一言はないだろう。こうすれば目立つこともなく平穏な生活を過ごすことができる。というよりか、そんなクラスのやつの自己紹介カードを一枚一枚、丁寧に見るやつなんか少ないはずだ。教師すらそんな丁寧に見ないだろう。さてと…寝るか。

風呂と歯磨きを済ませ、ベットに入った。

目を閉じた時に不意に伊崎が言っていたことを思い出した。

(あれ?もしかしてあれか?一目惚れか?)

「違うわ!違うぞ絶対に。」

もう一度自分に言い聞かせるように呟いて眠りに入った。


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