恋の前日
憂鬱だ
4月、新学期が始まろうとしてた。だけどこの新学期の1日前は憂鬱だった。というよりかきてほしくなかったの間違いかもしれない。「それはなぜか?」と問われたら僕はなんて答えるのだろう?
受験が嫌だから? 違うな。
中学校生活が今年で終わってしまうから? それも違うな。
自問自答してても仕方ない。この憂鬱な気持ちを捨てるためになんかしよう。そう思い僕はベットから出た。さて何をしようかとリビングで考えようとしたとき、
「あんた、今何時だと思ってんの?」
あ…
「11時よ!あんた昨日9時には起きるって言ってたじゃない!」
あーあ。もうこの時点で最悪だな。
母親の説教が朝から始まった。まあ今回は昨日、母親に朝早く起きて家事の手伝いをすると明言した僕が悪い。
「まあいいわ、明日新学期で緊張してるのもわからなくはないから」
お?今回はなぜか優しいな。さては裏があるなこれは
「それで今日あんた予定あんの?」
「いや?特には…」
「そう、じゃあ勉強しなさいよ。」
勉強ねぇ
いや!それだけはいやだぞ!せっかく気分転換しようと思ったんだ。勉強してたまるものか。そうだ!こういう時はあいつに頼るか。
「あ、母さん。やっぱ今日予定あるかも」
「そう。何するの?」
「伊崎と遊びに行ってくるわ。」
「ふーん。」
といっても伊崎と約束もしてないし、ここ3ヶ月遊んでもない。さて、今から連絡したとして誘いに乗ってくれるかどうか。僕はスマホで電話をかけた。いつもはメールだが、今日は急いで連絡を返して欲しかったからだ。
プルルルル…プルルルル…
伊崎出てくれよ〜
プルルルル…プルルルル…
出てくれないと困るぞ〜
プルルルル…プルルルル…
………
プルルルル… ガチャ
お!
「おかけになった電話番号は…」
クソッタレ
なんでこういう時に出てくれないんだ。いつもは連絡を一秒もまたず返してくれるのに
はぁ〜
どうすっかな。親にはもう遊びにいくと言ったし…
あ。あいつならどうだ?あいつなら今出てくれるだろう。
プルルルル…プルルルル…
ガチャ
「もしもし?どうした凪音?急に電話してきて。」
「あ、恭平?今日遊びに行かね?」
「いいけど?珍しいな。凪音から誘ってくるなんて。」
「なんか気分転換したくて。それでゲーセンでも行かね?」
「いいぞ。じゃあ、あそこで14時集合な。」
「おっけ」
やった!遊んでくれる奴が見つかった!今すぐ準備するか。とりあえず昼飯だな。
そうこうしていたらいつの間にか13時半だった。
そろそろ家を出よう。自転車を出した。
自転車をこいでるとふと頭の中に浮かんだことがあった。そういえば恭平って彼女いなかったっけ?彼女かあ〜。彼女ねぇ…
中学生活最後の年だ彼女はやっぱ欲しいな。
柄にもなくそんなことを思った。さてそうこうしているとショッピングモールについていた。ゲーセンはこの中にある。
エスカレーターに乗って2階に上がる途中、後ろから急に声がかかった。
「お!ベストタイミング!」
「恭平か。珍しく遅刻しなかったな。」
「人を遅刻魔みたいにいうなよ。」
笑いながら彼は言った。
「てか俺金ねえ〜」
「僕もないな。」
「お前からゲーセン誘ったのにお前も金ないのかよ。」
「だってゲーセン以外やることなくね?」
「はぁ〜。わかってないな〜。ショッピングモールだったらやることはひとつだろ?」
「何をやるんだ?」
「ナンパだよ。」
「お前彼女いるだろ。」
「俺がナンパするわけじゃあない。お前がするんだ。」
「はあ?」
「お前。中学生活最後の年くらい彼女欲しいと思わないのかあ?」
お見事!それをさっき思っていた。どうやらこいつにはお見通しらしい。
「それはさっき自転車こいでてちょうど思ったところだよ。」
「だろぉ?だったら行動あるのみ!さ、やるぞ。」
「ちょっと待て。僕はやるなんて言ってないぞ。」
「大丈夫大丈夫!俺が手伝ってやるから。ほら、今流行りの街角キューピッドってのがあるだろ?」
「あんな感じにやれるのかよ?」
「俺に任せとけって。」
まあ彼女いる奴がやるのなら多少は信用できるか…
「ほら?あの子とかよくね?」
「まあ確かに。」
「すみません!」
こいつ、いかにも気が強そうな女子によく話しかけれるな。
「は?急になんですか?」
「今、友達が彼女欲しいらしくて、で、アドバイスとかしてほしいんですけど、こいつどうですかね?」
恭平は僕を女子のもとに差し出して言った。
「うーん…なんか普通…」
普通か。なんかキモいとかよりそっちの方が余計に傷つく気がするのは僕だけか?
「まあ髪型とかもっと工夫したらモテるかも。」
なるほど。髪型か。意識したことなかったな。
「ありがとうございます!それで今僕たち一緒に遊んでくれる子探してるんですけどよかっt…」
「ごめん。私今日予定あるんで」
「あ…そうですか。ありがとうございました…」
振られてんじゃねえか。
「だってよ凪音。髪型だってよ。確かに凪音髪型工夫したことないだろ?いつも短髪だし。」
「髪型に興味が湧いたことがないな。」
「この際だから髪型変えてみようぜ。」
「いや。僕は短髪が1番手入れ楽だと思ってるから。」
「ちぇ。髪型変えたらモテると思うぞ〜」
「まあ検討はしておくよ。」
その後、恭平がナンパをもう一回しようとしていたが流石に止めてゲーセンを楽しんでいた。
「あ〜遊び疲れた!」
「けどクレーンゲーム何も取れなかったな。」
「今日こそは取れると思ったんだけどな〜。」
「今日こそはってそんな頻繁にやってるのか?」
「ん?あぁ彼女とな。だって近場で遊びに行ける場所ってここしかなくね?」
「それもそうだな。」
テッテテテテンテレレレ〜テッテテテテンテレレレ〜
「お?電話だ。」
「もしもし?あ、由花?どうした?え!今からうちに泊まらないかって!?お父さんとお母さんは?」
恭平の彼女か。お泊まり会か?明日学校なのに?
「うんうん。マジで!?え!絶対行く。明日学校だからついでに一緒に登校もしようぜ!」
恭平はそういい電話を切った。
「悪い!彼女から電話あってさ、彼女の両親が今日と明日出張でいないからうちに来ないかって!ちょっと今から彼女の家行ってくるわ!いやあ〜楽しみ!」
「そうか。楽しんできてな。」
「じゃあ俺帰るわ!」
「ああ、じゃあな。」
さて、1人でショッピングモールにいても仕方がないので僕も帰るか。それにしても彼女とお泊まり会か…やっぱり年頃の男女だ。そういうこともするのかもしれない。あ〜そう考えると羨ましいような気もする。やっぱ彼女は一回は作りたいな。
そう思いながら帰路についた。
この時は知ることもなかった。この時、いや、もっと早くに自分に正直になれていたらと何度も思うことになるなんて…
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退屈だった。
「なんで?」と聞かれてもその答えすらわからない。
ただただ退屈だった。
「ん…」
もうこんな時間か…おきなきゃ…
昼は長いのに夜はいつも短く感じる。私は1人でいる時間が好きだった。ただ、なぜか1人の時間を過ごしていると無性に寂しくなることもある。いや、案外1人よりも誰かと2人で時間を過ごすことのほうが私には向いてるのかも…
「もう13時か…」
今日は予定がある。確か集合時間は15時だったっけ?昼ごはん食べよ…。そう思いリビングに足を運んだ。
「おはよう」
ママが昼ごはんを食べ終わった後なのか洗い物をしていた。
「おはよ…」
「珍しいね。こんなに遅くに起きるなんて。」
「そう?」
「昨日の夜寝れなかったの?」
「そんなわけじゃないよ。」
「そう。お昼ご飯冷蔵庫にあるよ。食べたかったら電子レンジで温めて食べてね。」
「うん。」
今日の昼ごはんはパスタだった。パスタはわりと昼ごはんの中では好きなほうだった。
昼ご飯を食べて、出かける準備をしていたらいつのまにか14時半だった。
「いってきまーす。」
「いってらっしゃい。」
自転車をゆっくりこいだ。このくらいのスピードならちょうどいいタイミングで集合場所のカフェに着くだろう。
「ふぅ、ついた。」
由花はもういるかな?
「みーもーりーん♪」
「あ、由花!」
「ごめん、待った?」
「ううん。私も今着いたところ。」
「なら良かった!ベストタイミングだったね!」
店員さんに案内され2人席に座った。
「みもりんは何にする?」
「私?私はミルクティーかな。」
「みもりん、ミルクティー好きだね〜。うちはカフェラテにしよ。」
ほどなくして注文したものが来た。
「そういえば、由花って彼氏いたよね?」
「うん、いるよ。」
「誰だっけ?3組の恭平くんだっけ?」
「そうだよ。なんで?」
「春休み中にデートしたのかなって。」
「そりゃあもちろん!楽しかったな〜!」
「いいね〜」
「みもりんは彼氏作らないの?」
「私?私はいいかな〜」
「え!なんで?せっかくこんなに可愛いのにもったいないよ〜」
「うーん。中学入ってから一回作ったし高校入ってからでいいかな〜」
「そっか〜」
そう。高校入ってから…その頃にはきっと忘れてるだろうから…
「てか、聞いてよ〜、今日と明日パパとママ出張で家にいないんだけど〜」
「そうなの?それは寂しいね。」
「ほんと、それな〜。誰か遊びに来てくんないかな?」
「うーん、恭平くん呼んだら?」
「あ!確かに!おうちデートいいね!」
「お泊まり会とかもいいよね。」
「お泊まり会!いいね!早速電話してみる!」
そう言い由花はスマホを取り出し電話をし出した。
「もしもし!恭平?今日うちに泊まりに来ない?うん、うん。あ!パパとママは心配しないで!今日と明日、2人とも出張でいないから!うん!じゃあ18時うちの家に来てね!」
「どうだった?」
「恭平めちゃくちゃ嬉しそうだった!家の片付けしなきゃ。」
「そう。良かったじゃん!」
「うん!今日ちょっと早めに帰ってもいい?」
「もちろん。」
「じゃあ16時半に帰るね!」
あとは他愛もない雑談をして16時半を迎えた。
「じゃあね。みもりん!」
「じゃあね。由花!」
そうして私は帰路についた。
この時の私は正直、恋愛なんて過去のこともあり、どうでもよかった。でも、もっと恋愛に真剣になっていればと今は思うことになった。でも後悔しても、もう遅いのかもしれない…
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