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第111話 冒険者たちの現在地2

ルーベルンたち、ギルバート伯の冒険者は、数の力で地下八階を探索する。

そして、遂に――。

 数を恃む。それこそが、ギルバート伯という巨大資本を背景にした、ルーベルンたちの優位性であった。

 総勢六組ものパーティを、ルーベルンの指揮の元、地下八階の探索に充てることができる。

 各隊には交信珠が割り当てられており、連携は密である。探索エリアを重複することなく、効率的に、地下八階は探索された。


 ルームガーダーの控える部屋は、容易に、迅速に発見されていった。

 発見された部屋は、既に六つ目である。


 しかし、そこから先が問題であった。


 探索を進めた先にある部屋では、ルームガーダーたるサイクロプスが、二体いる。

 それに単独で対処できるパーティは、彼らの中になかったのである。最高戦力であるルーベルン隊でさえも、サイクロプス二体を相手取るには、戦力不足だったのだ。


 最高戦力のルーベルン隊、次点のジョシュア隊――彼らは、実力ある冒険者パーティである――更に数段劣るものの比較的ましなサイロン隊、この三隊、もしくは二隊によるによるレイド体制でしか、サイクロプス二体の壁を、ルーベルンたちは越えることができない。

 そのため、同時に複数の部屋を攻略することはできなかったのである。

 ルームガーダー自体の攻略には、数の優位が効かず、結果としてヒョードルたち神殿騎士パーティに、大きな差をつけることはできないでいた。


 幸いなことに、神殿騎士どもはまだ、地下九階に到達していない。それをルーベルンが知っているのは、彼らに監視をつけているからである。


 彼らより先に、地下九階に到達する。神殿勢力は、王国にとって諸刃の剣である。彼らの力には、利用価値がある。同時に、過剰に勢力を伸ばさせるわけにもいかないのだ。神殿の力が、王国のそれを上回るようなことがあってはならない。


 ルーベルンは、騎士である。それは、冒険者ギルドの登録情報で自称しているものとは、ものが違う。ルーベルンは、騎士爵を持つ、本物の騎士である。生家もまた公爵家であって、三男の立場で継承権こそ持たないものの、生粋の貴族であるのだ。

 神殿に力を与えてはならない。それは、オルフェイシアの貴族であれば、皆がもっている基本的な思いである。


 だからこそ、彼ら――聖騎士ヒョードルたち神殿騎士に、先んじられるわけにはいかない。

 ランキング一位の座は死守する。なんとしても。

 地下九階に到達せねばならない。誰よりも先んじて。

 それが、ルーベルンたち、ギルバート伯一派の使命なのである。


 そして、運命のサイコロは、ルーベルンたちに味方した。

 五月の末日、三十分をかけて二体のサイクロプスを無力化し、開けた扉の先には――。

 階段があった。

 地下九階への、下り階段である。


 

「わわっ!」

 玲子は、けたたましく鳴る念話の音に、思わず驚愕の声をあげた。


 昼食の席である。

 思わず取り落としたサンドイッチが、運よく皿の上に落ちた。

 玲子は、ほっと安堵する。


「どうしたの?」

 北條がコーヒーを片手に問うた。


 玲子は、しっ、と唇に指をあてた。

「冒険者アラートが発令した。確認するから、ちょっと待って」


 脳裏に響くアラートを、玲子は注意深く聞き取る。

 発令された冒険者アラートは、同じ文言を繰り返していた。


「冒険者アラート、コード1。地下九階に到達した冒険者がいます」


 玲子は、大きくため息をついた。

 ついに、この日が来てしまったか――と。


 ダンジョンは地下十階が最深層である。そこを攻略されたら、もう冒険者がダンジョンに入る理由はなくなる。そうなれば、玲子たちはもう、ダンジョンで稼ぐことはできなくなるのである。当然ながら、元の世界に帰還することはできない。


 もちろん、対策は考えている。ダンジョンに新規の階層を追加するのである。そのための準備は進めてきた。しかし、実行に至るまでには、まだいくつかハードルを越えなければならない。


 それまで、持つかどうか。

 しかし、どうにか間に合わせるしか方法はないのである。


「玲子ちゃん?」

 北條が、再度、問いかけた。


 もう一度、玲子は大きく息をついてから、言った。

「冒険者が地下九階に到達した。もう猶予はないわ。階層追加に向けて、最後のスパートをかけるわよ」

次回更新は5/2の予定です。

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