ルナリアーナとアルバ
ジミマイが俺の体から離れ羽音のうるさい小悪魔に戻る。
「討伐かんりょーだな、よくやったぞアルバ。褒めて遣わそう」
「ありがとう、俺が至近距離で『ブラックノヴァ』をくらいそうになった時、ジミマイが意図を汲み取ってくれなかったら死んでいた」
「あん時は冷や汗かいたぜ、ジミマイ様が機転を効かせ無かったらどうなっていた事やら、ヒヤヒヤもんだぜ」
話していると砂に変わったはずのアルバの腕が生えてきた。
「あら不思議砂になった腕もすぐに生えてくる、流石は竜血のアルバだ」
「ただの呪いだよ、誇れる力ではない。そんな事よりやっとルナリアーナを助けるぞ」
駆け足で縛りつけられた壁に向かう。
俺が茨に縛られていたルナリアーナを助けようと手を伸ばした時、戦闘による劣化で壁が崩れた。太陽に照らされながらルナリアーナは白い花畑に向かって落下する。
魔王を倒して早々アクシデントとはな。ルナリアーナに伝えたいことが沢山あるんだ、こんな所で死なせるものか。
アルバは躊躇なく飛び降り、ルナリアーナの手を掴み抱き両腕で抱きしめる。
「俺に竜の翼をくれ!」
「まったく悪魔使いが荒いぜ」
ジミマイは俺の体の中へと入り込み翼を授ける。
俺はお姫様抱っこをした状態で白い花が一面に咲くお花畑に着地した。円形の花畑を囲むように湖が広がっている。
「ルナリアーナ、聞こえるかルナリアーナ」
ルナリアーナはゆっくりと目を開ける。
「アルバ様?」
ルナリアーナは視界に映る男がアルバだと気がついた瞬間、勢いよく抱きつき喉が枯れる程涙を流す。
「会いたかった、会いたかったです」
俺も一滴の涙を流す。
「俺も会いたかった」
俺はルナリアーナを強く抱きしめる。
「ルナリアーナ改めて言わせてくれ」
「え?」
「俺と結婚して下さい」
「はい、こちらこそ……ん」
俺はルナリアーナの顎をクィッと上げて発言を遮り接吻をした。
ルナリアーナは困惑した様子で頬を赤らめる。
「急にどうしたんですか……」
「好きな人と口づけするの夢だったから」
二人は目を合わせて顔を赤らめている。
「私もアルバ様と口づけするのが夢でした」
ルナリアーナは薬指を触り結婚指輪がない事に気がついた。必死に辺りを「ないない!」と言いながら指輪を探すが見つからない。
「思い出の結婚指輪だったのに……」
ルナリアーナは涙を流す。
俺は2本の白い花を縄のように編み込みんで指輪を作り、ルナリアーナの薬指に嵌める。
「宝石の付いてない花の指輪だけど、受け取ってくれないか」
「ダイヤよりずっと綺麗ですよ、お花のいい匂いもします。この指輪気に入りました。花が枯れるまで付けていようと思います」
「帰ろう、エルベス王国へ」
俺がルナリアーナに手を差し伸べると、ルナリアーナは手を取り立ち上がる。
「はい、これから魔王のいない平和な世界になるのですね」
「次代の魔王が決まるまでは平穏に暮らせるだろう。例え又魔王が現れたとしても、ルナリアーナから笑顔は奪わせない」
「また拐われたら助けに来て下さいよ?」
「必ず俺の異能力でルナリアーナを奪還してみせる」