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初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~  作者: 涙目
第五章 望み編

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第七話 結婚式

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 雲一つない青空だった。

 公爵邸の大聖堂には朝から多くの人が集まっている。


 貴族達。

 騎士達。

 学院の友人達。

 王家の面々まで。


 大勢の祝福に包まれながら。

 リリアナは控室で鏡を見ていた。


 純白のドレス。

 何人もの仕立て職人が手掛けた最高級品。


 けれど。

 そんなものはどうでも良かった。


「緊張されていますね」


 エミリーが微笑む。


「してないわ」


「お顔が真っ赤ですよ」


 即座に否定できなかった。

 鏡の中の自分が本当に真っ赤だったからだ。


 今日だけは公爵令嬢としてではない。


 一人の女性として。

 大切な人の隣に立つ日だった。


「時間です」


 エミリーが静かに言う。


 リリアナはゆっくり立ち上がった。


***


 大聖堂の扉が開く。


 視線が集まる。


 父に手を引かれながら赤い絨毯を歩く。


 花びらが舞う。


 祝福の拍手が響く。


 緊張していたはずなのに。


 その瞬間。

 全部消えた。


 祭壇の前に立つ人を見つけたからだ。


 レオがいた。


 正装姿のまま真っ直ぐこちらを見ている。


 昔から変わらない。


 本当に。


 何も変わらない。


 少しだけ泣きそうになった。


***


 祭壇の前で父が立ち止まる。


 レオを見る。


 長い沈黙。


 やがて。

 深いため息を吐いた。


「まったく」


 呆れた声だった。


 会場から小さな笑いが漏れる。


「最後まで貴様の思い通りだったな」


 レオは頭を下げる。


「申し訳ありません」


「謝るな」


 公爵は娘を見る。


 そしてレオを見る。


「幸せにしろ」


「必ず」


 迷いのない返事だった。


 公爵は頷き。


 静かに娘の手をレオへ託した。


***


 神官が問い掛ける。


「レオ・オルスタッド」


「はい」


「あなたは彼女を妻とし、生涯愛し続けることを誓いますか」


 会場中が静まる。


 レオは即答した。


「誓います」


 一切の迷いもなかった。


 昔からそうだった。


 この人はずっとそうだった。


 神官は笑みを浮かべる。


「リリアナ・クラインベルク」


 視線が集まる。


 少し恥ずかしい。


 それでも。

 もう逃げるつもりはなかった。


「あなたは彼を夫とし、生涯愛し続けることを誓いますか」


 リリアナは隣を見る。


 レオがいる。


 初めて出会った時。

 地面に抑えつけられていた少年はもういない。


 立派な青年になった。


 それでも。

 自分を見つめる目だけは昔と同じだった。


 だから。

 リリアナは笑った。


「誓います」


***


 祝福の拍手が響く。


 花が舞う。


 歓声が上がる。


 ルイーゼが泣いていた。


 アレクシスも顔を真っ赤にして拍手している。


 エミリーは静かに涙を拭っていた。


 国王は豪快に笑い。


 王女も優雅に拍手を送っている。


 誰もが笑っていた。


***


 式が終わり。


 二人は大聖堂の外へ出る。


 眩しいほどの青空。


 祝福の声。


 降り注ぐ花びら。


 レオは少しだけ立ち止まった。


「どうしたの?」


 リリアナが聞く。


 レオは空を見上げる。


 そして。


 本当に少しだけ笑った。


「夢みたいです」


 その言葉に。


 リリアナは吹き出した。


「今さら?」


「はい」


 本気らしい。


 相変わらず馬鹿だ。


 本当に。


 どうしようもないくらい。


 だけど。


 それが愛おしかった。


 リリアナはそっとレオの手を握る。


 レオも握り返す。


 強く。


 優しく。


 絶対に離さないように。



 春の風が吹いた。


 二人は並んで歩き出す。


 もう追い掛ける必要はない。


 もう追い掛けられることもない。


 これからは。


 ずっと隣だ。


 同じ歩幅で。


 同じ未来へ向かって。



 リリアナは隣を歩く夫を見上げた。


 初めて出会った時。


 雑草の花束を抱えていた少年。


 無茶な課題を達成し続けた少年。


 泣きながら自分を抱き締めた青年。


 その全部が愛おしかった。


 だから。


 誰にも聞こえないくらい小さな声で呟く。


「レオ……大好きよ」


 レオが足を止める。


 耳まで真っ赤になっていた。


 その顔がおかしくて。


 リリアナは声を上げて笑った。


 青空の下。


 二人の笑い声はいつまでも響いていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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