4話 春、そして入学式
本日10/25は、私、吉乃直の誕生日!一斉投稿です!(一部作品は明日になります)
紗奈が颯太の家に来てから数週間経ち、気付けば入学式の前日になっていた。
そんな中、颯太はソファーに横になっていた。
「お兄ちゃん、そんなダラダラしてると、明日が大変になりますよ?」
部屋から降りてきた紗奈が、コップ片手にそう言う。
颯太は紗奈の方を向き、じっくりと観察する。
今日はラフな感じなんだな。
紗奈の服装は、少しぶかぶかな服に、ミニスカートといった感じだ。
「可愛いよ」
颯太がそう言うと、紗奈は顔を真っ赤に染めてぷるぷると震える。
「そ、そんな不意打ちなんて卑怯ですよっ!」
そう言いながら、紗奈はコップを机に置くと、慧斗に飛び付く。
「うわっ」
勿論、横になっている颯太に避ける術は無く(避ける気も無いが)、紗奈の下敷きにされる。
二人はソファーの上で密着する形になる。
当然、紗奈の慎ましい膨らみは、颯太の体に押し付けられることになる。
あっ、柔らかい。
それはともかく。
「紗奈ちゃん、降りて」
「やーでーすー」
紗奈はそう言うと、颯太に抱き付く。
「もう、紗奈ちゃんは甘えん坊だなぁ」
そう言いながら、颯太は紗奈の頭を撫でる。
「なんだか、お兄ちゃん最近優しいです」
そう言うと、紗奈は颯太の胸に顔を押し当てる。
「そうか?前から優しくしてたつもりだけど」
「そうじゃないですよ。勿論、学校でも優しくしてくれましたけど。惚れるくらいに」
そう言った途端、紗奈は再び顔を真っ赤に染める。
「恥ずかしいこと言わせないでください!」
「理不尽!今のは紗奈ちゃんの自滅だよねっ!?」
そんな微笑ましい時間は過ぎていき、気付けば夕方になっていた。
「明日から紗奈ちゃんは三年生で、颯太は高校生なわけだが、夏希さん、颯太のお弁当お願いできますか?」
夕食の場で、仁一郎がそう言う。
「はい、勿論です♪」
夏希はそれに笑顔で返し、颯太に目を向ける。
「欲しいおかずとかある?」
「特にないですね」
颯太の返事に、夏希は「それが一番難しいのよねぇ」と呟きながらも、箸を進める。
それから夕食を食べ終えると、紗奈と颯太は自室へと戻っていった。
颯太は明日の準備を終えると、ベッドに横になる。
そのまま、枕隣置いてあったスマホを取り、ゲームを開始する。
「~♪」
颯太がゲームをしていると、コンコンと扉が叩かれる。
この時間帯に来るのは一人しかいないよな。
「どうぞ」
颯太がそう言うと、扉が開かれる。
来訪者は、やはり紗奈だった。
「お兄ちゃん、一緒にお風呂に入りましょう」
紗奈は笑顔でそう言う。
勿論、颯太はいつも通り、
「断る」
と答える。
「なんでですかぁ」
紗奈は頬を膨らませ、颯太の横に腰掛ける。
「なんでじゃない。年頃の男女は一緒にお風呂に入りません」
「いいじゃないですかぁ、私の体を隅々まで洗ってくださいよぉ~」
紗奈は含みのある言い方でそう言う。
「断る」
颯太はゲームする手を止めずにそう返す。
「お兄ちゃんの体も隅々まで洗いますかぁ」
「それは紗奈ちゃんがしたいだけだろ」
「……テヘッ♪」
「……」
「ごめんなさいそんな冷たい目で見ないでください」
「そんな焦らなくても」
そう言いながら、颯太はゲームを終了する。
「さて、行くぞ」
颯太は着替えを準備しながらそう言う。
紗奈は颯太の言葉の意味が理解できずに、黙ってしまう。
「お風呂入るんだろ?」
その言葉に、紗奈はパァと顔を輝かせ、颯太に抱き付く。
颯太は腰に紗奈を付けながら、ゆっくりと風呂場に向かった。
□ □ □ □ □
朝、颯太は単調な機械音に目が覚めた。
時間はいつも通りの六時。
颯太はベッドから起き上がると、寝間着を脱ぎ、高校の制服に着替え始める。
すぐに着替え終えると、鞄とスマホを持ち、颯太は部屋を出た。
リビングに行くと、先に起きていた夏希が、朝食を作っていた。
「おはよう、颯太くん」
「おはよう、母さん」
颯太は椅子に鞄を置くと、顔を洗いに洗面所に向かう。
颯太は顔を洗い、歯を磨いた後に寝癖を整える。
「よしっ」
再びリビングに入ると、机の上には珈琲の入ったコップが置いてあった。
颯太は珈琲を一口飲むと、テレビを点けて天気予報を確認する。
「颯太くん、紗奈起こしてきてくれる?」
台所に居る夏希が、そう言う。
「分かりました」
颯太は返事をすると、二階の紗奈の部屋に向かった。
「紗奈ちゃん、起きてる?」
扉を叩きそう言うが、返事は返ってこない。
扉に耳を当て、確認すると、「すぅすぅ」といった寝息だけが聞こえる。
「しょうがないか」
そう呟き、颯太は扉を開けて部屋に入る。
扉を開けると、女の子特有の甘い匂いが鼻孔を擽る。
予想通り、紗奈はベッドで寝ていた。
「紗奈ちゃん、起きないと遅刻するよー」
そう言いながら、颯太は紗奈の肩を揺らす。
「うへへ~……すぅ」
うん、起きる気ないな。
そう思いながら、紗奈を見詰める。
颯太はちょっとした出来心で、以前同様紗奈の頬を突く。
ぷにぷにとした頬の感触に、颯太は頬を綻ばせる。
「うぅ……あぅぁ、おはよぉ、ござぃますぅ……」
頬を突かれたことで、紗奈は目を覚ます。
紗奈はもそもそと動きながら、体をゆっくりと起こす。
「もう朝食の準備できてるから。早く降りてきてね」
「はぁ~ぃ……」
まだ眠気が抜けていないのか、紗奈は曖昧な口調で答える。
紗奈の返事を確認すると、颯太は部屋を出た。
□ □ □ □ □
朝食を食べ終えると、颯太は時間を確認する。
時刻は既に七時過ぎており、丁度いい時間になっていた。
「それじゃあ、いってきます」
「私も、いってきます」
リビングを出た颯太を追い、紗奈もリビングを出ていく。
「「いってらっしゃい」」
夏希と仁一郎がそう返したのを聞いて、颯太は少し笑みを浮かべながら玄関に向かった。
「それじゃあ紗奈ちゃん、いってらっしゃい」
「先輩も、いってらっしゃい♪」
互いに手を振りながら、自らの学校に向かった。
颯太は中学とは反対方向にある高校に向かっていった。
勿論、徒歩で行ける距離なので、颯太はゆっくりと通学路を歩いている。
それから特にイベントが起こること無く、たまにすれ違う地域の人と挨拶を交わしながら、颯太は足を進める。
それから十分程歩くと、高校の校舎が見えていた。
平和だなぁ。
高校に近付いてきたこともあり、辺りには他の生徒がちらほらと見える。
そんな生徒の中に紛れ込みながら、颯太は高校へ入っていった。
外にあった貼り紙で、自分のクラスを確認すると、颯太は校舎の中へ入っていく。
下駄箱で、新調した上靴に履き替えると、颯太は教室に向かう。
扉を開けると、教室内には既に半数程生徒が来ていた。
颯太は新しいクラスメイトの隣を通りながら、自らの席に向かう。
颯太は机の横に鞄を掛けると、すぐに席を離れる。
話しやすそうなのは誰かな。
そう思い、もう一度教室内に居る生徒を見渡す。
「やぁ、そんなに辺りを見てどうしたんだい?」
傍から見ればただ挙動不審な颯太に、後ろから声が掛けられる。
颯太は声が掛けられた方を向く。
そこにいたのは、颯太よりも少し背が高い、金髪の男子生徒だった。
「えっとだな」
颯太は少し照れながらも、事情を説明する。
「────と言うことだ」
話し終えると、生徒はニッコリと笑顔をつくる。
「それじゃあ、僕と友達になろうよ」
そう言い、男子生徒は手を差し出す。
「おう。俺は氷室颯太。お前は?」
颯太は差し出された手を握り、名前を訊ねる。
「僕は遠月卓郎。宜しく」
「宜しくな」
そうして、颯太の高校での初めての友人ができたのであった。
入学式も終わり、自己紹介兼話し合いタイムになると、颯太は卓郎と一緒にクラスメイトに話し掛けに行った。
結果、連絡先を交換したのは五人、仲良くなったのは十三人だった。
正直クラスが47人(颯太を含め)なので、多いのか少ないのか微妙なところなのだが、初日なのでいい方だろう。
そのまま帰りのHRが終わると、すぐに生徒たちは教室から出ていく。
颯太もそれに習えで、教室を出る。
校門のところで、颯太と卓郎はお互い背を向ける。
「それじゃあ颯太、また明日」
「おう、また明日」
卓郎に挨拶をすると、颯太はゆっくりと紗奈の居る中学校に向かった。
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