鱒釣り部 保護者会だぉ
読んで下さる皆様、心より感謝致します。
ゆっくりと物語を進めますので、気長にお付き合い頂ければ幸いです。
◆春うらら、鱒釣り部、新学期カオス開幕!◆
春うらら。
ソメイヨシノが 「今日の主役は私たちよ」 とばかりに
ひらひら、ふわふわと舞い落ちる桜吹雪。
高校の校庭は、
“満開の桜” というよりも
**“桜の花びらメーカーが暴走している現場”**みたいな有様だ。
そんな中——
◆新学期、始まる
野外活動鱒釣り部のメンバーも、それぞれ進級。
部長:宝塚里香(高2)
副部長:桜井穂乃花(高2)
平部員:市川愛生(高2)
ジュニア部員:市川明宏(中3)
平部員:田中武士(高1→高2)
ゆる〜っと、まったり〜っとした「鱒釣り部」は、
今年も やる気60%、睡眠欲40% で新年度スタートの気配。
校舎裏の部室棟の一角にある、
“ほぼ倉庫みたいな部室” では、
里香と穂乃花が会議中。
里香「今年は部員、増えるかなぁ……」
穂乃花「増えたらすごいよね、鱒釣り部だよ?地味だよ?」
愛生「(むしろ減らなかっただけ奇跡……)」
しかし!
◆ワクワクしている者が二名いた!
それが…
明宏(中3)と武士(高2)!
2人は部室の入口でソワソワしている。
明宏「今年こそ……ついに……」
武士「ついに……だよな……!」
愛生「なに?なんか始まってるの?」
明宏はキリッと胸を張る。
明宏
「決まってるじゃん!今年こそ!可愛い女子が入部するかもしれないだろ!!」
武士
「そうそう!鱒釣り女子とかレアすぎて、出会えたらもう運命レベルだから!」
愛生「……期待だけは一流だね」
穂乃花
「でも鱒釣り部だし、そんなに来ないんじゃ……?」
明宏&武士
「いや!!春は奇跡の季節なんだ!!!」
(※主張が妙に熱い)
愛生
「……桜の魔法にかかってるだけじゃない?」
里香(冷静)
「まあ、もし入ってきても、“新入生=戦力” じゃなくて“新入生=荷物運び係” な気もするけどね」
明宏「ひどくない!?」
武士「いや、僕ら去年そうだったし……」
愛生(思い出し笑い)
「そうだねぇ〜、明くんも武士くんも、“瀬で転ばない練習”から始まったよね」
明宏
「……今年の新入部員にも、もれなくやらせよっと!」
武士
「だなっ!」
愛生
「いや、そこ誇るところじゃないよ?」
そんなこんなで——
◆春の鱒釣り部、まもなく始動!
桜の花びらが舞う校庭を眺めながら、
部室の面々はそれぞれ胸を躍らせていた。
里香&穂乃花:
“今年こそ釣りに行く回数を増やしたい”
愛生:
“今年もまったり釣りしたいし、お兄ちゃんと明くんにも色々教えたい”
明宏&武士:
“可愛い新入生……来い……来い……(祈)”
春の風に流されて、
桜の花びらと一緒に、
彼らの期待もふわふわと舞い上がっていった。
今年の鱒釣り部、何か起こりそうな気しかしない!
新学期最初の部活動――
桜吹雪がまだほのかに舞う放課後、鱒釣り部の部室には、いつものゆるゆるメンバーが集まっていた。
里香は部長席で書類を整え、穂乃花は部室の片隅で新しい偏光グラスを磨き、
愛生は自分のサンリオ柄の水筒を撫で回し、
武士と明宏は「今年こそモンスター級の鱒を釣るんだ!」と根拠なしの決意表明で盛り上がっていた。
そんな日常の空気をぶち破るかのように――
ガラッ!(勢いよく開くドア)
「お〜れは釣りキチ寺ノ沢だぁ〜♪竿を握れば〜日本一の〜腕と度胸で大物狙い〜♪」
と、寺ノ沢先生が昭和のオーラをまといながら登場。
部室の入り口から、まるでスポットライトを浴びてるかのように登場し、生徒たちの目が点になる。
「せ、先生……テンション高くない?」
「もはや釣り部のマスコットキャラだよね……」
と里香と穂乃花はドン引き気味。
寺ノ沢先生は鼻歌の勢いそのままに宣言した。
「さぁ〜待望の新入部員を紹介するぞぉ!」
コツ、コツ、コツ……(足音)
部室のドアの向こうから3人の1年生が顔をのぞかせる。
そのうち2人を見た花音は――
「えっ……えっ……なんで桜ちゃんと皐月ちゃんがいるにょん!?!?!?」
花音の魂が口から出かけるレベルの衝撃。
入ってきたのは、
◆ 真鯵源蔵の孫・桜
◆ 岩志三郎の孫・皐月
そして寺ノ沢先生の紹介の最中にもかかわらず――
「キャ〜〜!!かにょんちゃぁぁん!!」
「かにょんちゃんと同じ高校とか運命しか感じな〜い!!」
桜と皐月はキャピキャピしながら花音にダッシュ。
まるで推しのアイドルを見つけたファンのように騒ぎ立てる。
花音、追い詰められたアイドル状態。
一方で、花音の心境はこうである。
(わたし、あなた達を推してないんだけど……!?ていうか、なんで同じ高校にいるのぉぉ!?怖いよぉ!!)
それを見て里香は小声でつぶやく。
「……花音ちゃんを追っかけて同じ高校入学って、ちょっと怖くない?」
「リアルにストーk――いやいや、ファンシーに言うと"忠実な子分"?」
と穂乃花が肩をすくめる。
部室の空気はカオスへ
白けた表情の愛生はサンリオ柄の水筒を握りしめながら呟く。
「……なんか部室が一気にうるさくなったんだけど」
穂乃花も同意して、
「一年生、テンション高すぎん?」
武士と明宏はというと、
「……なんかすごい子たちが来たな」
「うん、今年の鱒釣り部、絶対ヤバい年になるぞ……!」
と、なぜかワクワクしていた。
新入生が3人も来て大騒ぎになった鱒釣り部。
そのうち2人――桜と皐月――は花音にベッタリの招かれざる子分として確定。
部室はすでにワーワーキャーキャー天使界隈の祭り騒ぎである。
しかし、まだ1人、寺ノ沢先生の後ろで
もじもじ……もじもじ…… と存在感薄めに揺れている影があった。
「さぁ、お前さんも挨拶してみなさい」
寺ノ沢先生に背中を押され、モジモジ子の番がやってくる。
花音に張り付きすぎて、桜と皐月の自己紹介タイミングは
完全にスルーされていたが、そんなことは知らぬふりで、
「私たち、花音ちゃんファンの桜で〜す♪皐月で〜す♡花音ちゃんしか勝たん!花音ちゃん神推し!」
と勝手に再自己紹介を始める。
ついでに皐月がひょこっと顔を出して、
「里香ちゃんもファンだよ〜♡」
と余計な一言まで付け足す。
今はお前らのターンじゃない!!
という空気をまったく読まない2人。
「おい、モジモジ美少女の挨拶に横槍入れてんじゃねぇ!」
武士の額の血管がピキッと浮かび上がった。
今にもドンッと机を叩きそうな勢い。
隣の明宏が、慌てて肩を掴んで押さえる。
「お、落ち着け武士……ここで暴れたら本気で先輩生命終わるぞ……!」
「で、でもよ明宏! あの子めっちゃカワイイだろ!?せっかくの自己紹介なのに……!」
武士の耳はゾウさんみたいにダンボ状態。
完全にモジモジ子にロックオンである。
明宏も目をキラキラさせながら、
「確かに……あれは美少女……いや天使……?」
などと本気で見惚れていた。
そしてモジモジ子、ついに自己紹介へ!
「あ、あの……ぼ、僕の名前は…………三蜂真綾です……」
声が羽毛よりも軽い。
部室のファンの音に負けるレベルの蚊ボイス。
「えっ? 何て言ったの?」と里香が前のめりになる。
もう一度、彼は勇気を振り絞って答えた。
「三蜂真綾です……!」
すると部室の全員が固まる。
そして、最初に動いたのはもちろん里香。
「ミツバチマーヤって童話の蜂じゃん!!」
バッサリと即ツッコミ。
教室の空気が「それ言っちゃう?」みたいな静寂に包まれた。
愛生も、じーっと真綾を見て言う。
「……それに、女の子なのにズボンなんだね。珍しい。」
そこへ明宏も便乗。
「本当だ、かわいいのにスカート履いてない……もったいない……」
真綾、耐えきれず小さく震えながら言い返す。
「ぼ、僕……男の子なんです……」
部室、「えぇぇぇぇぇぇぇ!!???」大合唱。
すかさず里香が追撃。
「なるほど! 男の娘なんだね!」
「ち、違いますっ!ふ、普通の、男の子ですっ!!」
必死の否定なのに、目がうるうるしていて
どう見ても美少女にしか見えないという矛盾。
そして、部長・里香の悪戯スイッチが入る
(寺ノ沢先生が職員室に戻ったら……スカート履かせてやろう……絶対似合う……)
里香の目に、悪戯の黒いキラリが宿る。
愛生が軽く震えながら呟く。
「……里香ちゃん、なんか企んでるよね?」
穂乃花もため息をつく。
「また始まったよ……鱒釣り部の魔王モード……」
こうして、鱒釣り部には
“花音の招かれざる子分コンビ”と
“もじもじ美少年”という
クセの強すぎる新入部員たちが加入したのであった。
◆ゴホンッ!寺ノ沢先生、開幕の咳払い◆
「ゴホンッ!」
部室の混沌が一瞬で静止した。
あの寺ノ沢先生の咳払いは、天然の“反則ホイッスル”である。
「こうして無事に新入生が加わりました!」
満面の笑みで胸を張る寺ノ沢先生。
「お友達のみなさん、本年度も仲良く楽しい部活動を運営する為に――最初の課外活動は エリア保護者会 を企画します!」
「えぇーーー!?保護者会ぇぇ!?」
部員全員、驚愕のハモり。
まるで合唱部みたいに綺麗にそろってしまった。
先生はさらに得意満面で続ける。
「4月の土曜日、開催エリアは フィッシュ・オン麻生 で行います!」
ドヤァ…と背景に桜吹雪のエフェクトが見えるほどのドヤ顔。
続けて先生はプリントを配り始めた――
なぜか市川家以外に。
「お家の方にこのプリントを見せて、ぜひエリアフィッシングに誘ってくださいね!」
にっこり笑って職員室へ帰っていく寺ノ沢先生。
◆愛生の悟りタイム◆
愛生はプリントを見ながらふと気付く。
(あ…これ……源蔵さんと三郎さん、孫の桜ちゃんと皐月ちゃんを連れてエリアフィッシングしたいって言ってたやつじゃん…)
そして浮かぶもう一つの影。
(そして……沙代里さん……お兄ちゃんをたぶらかすムチムチボインの黒幕……絶対、沙代里さんが兄をそそのかして……兄が寺ノ沢先生に提案したんだ……!)
愛生の表情が暗雲モードに変わる。
(……やっぱり……沙代里さんキライ……)
部室の隅で小さく唇を尖らせた。
◆そして、寺ノ沢先生が去った瞬間――◆
「ふふふ……待ってました!!」
部長・里香が、机の下から“ある物”を取り出した。
スカート(制服)もう一着。
「たまたま予備のスカートを持ってくるなんて……私って天才すぎない?」
自画自賛が止まらない。
穂乃花は顔を覆って、
「はぁ〜…嫌な予感しかしない……」
と現実逃避。
◆真綾、運命のスカート裁判◆
里香がスカートをひらりと掲げる。
「さぁ〜真綾くん? スカート履きなさい♡」
「えっ!? な、なんでですか!?!?」
真綾は両手をブンブン振って完全拒否。
すると里香は堂々と宣言した。
「鱒釣り部男子は、入部時にスカートを履くのが“しきたり”なのよ!」
嘘である。
100%、純水レベルに澄み切った嘘である。
「えぇぇぇぇ……」と困惑する真綾。
「武士も明宏も入部時に履いたんだからね!」
武士「……え?」
明宏「……俺たち履かされてたの!?」
と目を丸くする2人だが、
「やれ、明宏・武士!」
「「イエスマーム!!」」
脊髄反射で敬礼。教育済みである。
◆部室の片隅、カーテンの向こうで事件◆
カーテンの奥で――
明宏が真綾を軽く支え、
武士がスカートを手に取った……はずなのに、
スカートを顔に当てて深呼吸していた。
「ちょ、おま……!匂い嗅いでる場合か!!」
と明宏がツッコむ。
武士は恍惚の表情で答えた。
「だって……部長のスカート……いい匂いするんだもん……!」
その瞬間、
カーテン越しに里香の“神速ツッコミ”が炸裂した。
ベシィッ!!!
「ぎゃっ!!……でも……何故か心地よい……!」
武士はなぜか幸せそうに崩れ落ちた。
(誰かこの人を止めて)
◆そして――スカート真綾、爆誕◆
ついにスカートを履いた真綾がカーテンの外へ。
その場の全員が息を呑む。
「……かわいい……」
「めっちゃ似合う……」
「女の子よりかわいいってどういうこと……?」
桜と皐月はキャーキャー大騒ぎ。
里香は得意満面。
愛生は「また面倒なのが増えた」と遠い目。
真綾は顔まっ赤で震えていた。
「ぼ、僕……なんでこうなったんですかぁぁ……」
その姿は、控えめに言って
部室を浄化するレベルの天使だった。
■女子トリオ、突然のメイク開始!
「さあ〜!仕上げはメイクよ、メイク!」
と里香が声を上げた瞬間、
桜「やるにゃん!」
皐月「モデルさん、確保〜♪」
と、完全にノリノリで真綾の両脇を固めた。
当然、囲まれた真綾は震えた。
「えっ、えっ…な、なにするんですか……?」
すでに逃げ場はない。
■周囲の反応がカオス
穂乃花「あ〜あ…出ちゃったよ、里香の“悪ノリスイッチ”。」
と、ため息。
愛生はというと、
「ふふっ、これはこれで面白いかも〜」
と完全に観客モード。
花音だけが真綾に優しく、
「ま、真綾くん、かわいそうにょん……がんばるにょん……!」
と励ましていた。
■しかし男子陣──なぜかうらやましそう
明宏「うぉっ、女の子3人に囲まれてるとか……うらやま……!」
武士「ちょ、ちょっと代わってほしい……!」
羨望と悔しさで目がうるうるしている。
■メイクという名のお絵かき、開始!
里香「動かないでね〜?はいチーク♪」
桜「この色かわいいにゃん!」
皐月「まつげ上げるよ〜!ぱっちり〜!」
女子3人はテンション最高潮。
しかも真綾の顔があまりにも整っているせいで──
“男である”という大前提を完全に忘れていた。
里香の顔が近い。
桜の顔も近い。
皐月の顔も近い。
明宏「お、おい……里香姉……顔近ない!?ずるっ!」
武士「うわぁぁぁぁッ!こんなの青春ポイント入りまくりじゃん!!」
もはや騒音レベルである。
■完成──奇跡が起こる
「できたぁぁぁぁ!!」
と3人が同時に叫ぶ。
鏡を渡され、真綾はそっと覗き込んだ。
「……ぼ、僕……かわいい……?」
自分でも気づいていないが、頬がほんのり赤い。
皐月「かっっわいい〜〜っ!!」
桜「やば、アイドルじゃん!!」
里香「これは……部の宝だわ!!」
真綾は完全に美少女化していた。
■そして、恒例の羨ましがり大会が始まる
皐月が「よしよし〜♪」と軽く肩をポン。
真綾はビクッと固まる。
武士「な、な、なんで俺じゃないんだああああ!!」
明宏「皐月ちゃん、俺にもタッチを……!俺にも光を……!」
完全に壊れていた。
■そして今日も部室は──平和だった
キャーキャーという女子の声、
男子の嘆き声、
真綾の小さな悲鳴と戸惑いの声。
全部まとめて、
「ああ、これが“鱒釣り部”」
という混沌そのものだった。
新学期最初の日、鱒釣り部は今日もきっちり平和であった。
(真綾だけは疲労困憊だったが。)
★鱒釣り部・保護者会 in フィッシュ・オン麻生
春のやわらかな陽射しの中、
今回の舞台となるのは――
フィッシュ・オン麻生
都会のど真ん中に現れた“水辺のオアシス”。
おしゃれで先進的、まさに“デートスポット兼釣り場”みたいな場所である。
……そんな場所に。
なぜか、鱒釣り部の保護者会。
どうしてこうなった。
■開幕早々、労働力扱いされる男
「ほら圭介、バーベキューの準備しなさい!」
部長・里香の鋭い指示が飛ぶ。
「はいはい……」
もはや反射で動く圭介。
保護者なのか、スタッフなのか、もはや誰にも分からない。
(俺……ボランティアって言ったよな……?)
だが手際はプロ級。
炭火、配置、火起こし――すべてが完璧。
「さすが圭介、便利ね〜♪」
と里香、満面の笑み。
(褒められてるのか、使われてるのか……)
■穂乃花ファミリー、遠足モード
一方その頃。
「わ〜い!お魚さんいる〜!」
「すごーい!!」
穂乃花の弟(中学生)と妹(小学生)は完全に遊園地テンション。
穂乃花「ふふっ、順番にやろうね〜」
まるで保母さんである。
■武士の家庭、奇跡の真逆
「本日はお招きいただきありがとうございます。」
深々とお辞儀をする武士の父。
「息子がお世話になっております。」
母も完璧な所作。
……その横で。
武士「うぃ〜っす!」
(※同一人物の家族です)
愛生(え、どうしてこうなったの……?)
■真綾母、登場──そして里香の葛藤
そして現れたのは、真綾の母。
──かわいい。
誰が見ても分かるレベルで、かわいい。
里香(……これは……強い……!)
真綾をイジりたい欲求がMAXまで高まるが、
(今日は保護者会……我慢……我慢よ私……)
珍しく理性が勝った。
だが、
(次の部活では覚悟しなさい……)
完全にフラグが立った。
■問題児(?)登場
その時だった。
「ワシ達が来たからには大漁間違いなしじゃああ!!」
ドーン!!!
効果音付きで登場したのは――
源蔵&三郎。
しかも。
フル装備のガチフィッシングウェア。
ここ管理釣り場です。
「今日は爆釣じゃのぉ!!」
「うむ!!ワシらに任せい!!」
完全に大会参加者のノリである。
桜&皐月「……は、恥ずかしい……」
孫、完全に顔を覆う。
■そして最大の違和感
愛生はふと気付いた。
(……あれ?)
(なんで……)
(あの人いるの?)
視線の先には――
ボインな沙代里。
(※なぜか普通に馴染んでいる)
■謎の参戦理由、判明
「ねぇ桜ちゃん……なんで沙代里さんいるの?」
愛生が小声で聞く。
桜は少しモジモジしながら、
「えっと……私の……従姉妹のお姉ちゃんだから……」
「えっ!?!?」
愛生、驚愕。
「うん、おじいちゃんの会社、家族経営で……
社員の半分くらい親戚なの……」
さらっととんでもない事実が明かされる。
「じゃあ皐月ちゃんも!?」
「ううん、皐月ちゃんのおじいちゃんは社員さん!」
なるほど。
親戚と社員が混ざる謎の会社構成。
■圭介の職場、判明
愛生
(お兄ちゃんの会社って……)
(ほぼファミリー企業じゃん……)
遠い目。
■そして当の本人は
「炭、こんなもんかな……」
汗をかきながら火起こしをする圭介。
その背中に、
「圭介く〜ん、飲み物もお願い〜♪」
と沙代里。
「はいはーい……」
完全に使われている。
春の陽気とともに、
フィッシュ・オン麻生
の水面がキラキラと輝く中――
釣り×バーベキューという欲張りイベント、保護者会がついに開幕した。
■現場監督・里香、降臨
「圭介、火力ちょっと弱いわね。炭、追加して。」
「圭介、それ焼きすぎ。はい、次はこっち。」
「圭介、飲み物の導線も考えて。」
「はい、はい、はい……」
完全に現場作業員と化した圭介。
しかも――
里香、一切手を出さない。
口だけである。完全に口だけである。
■なぜ逆らえないのか
それもそのはず。
里香は愛生の幼馴染。
つまり圭介とも長い付き合い。
──時は遡ること数年前。
小学生・里香「圭介、あれやって。」
中学生・圭介「えっ、なんで俺が……」
小学生・里香「やって。」
中学生・圭介「……はい。」
この構図が現在まで継続中である。
つまり里香にとって圭介は――
「ちょっと頼りないけど便利なお兄ちゃん」
というポジションだった。
■そこへ現れるもう一人の“圧”
「圭介く〜ん、こっち手伝ってくれる?」
ふわりと近づく沙代里。
(※例のボインな人)
「はいはい、今行きます〜」
素直に動く圭介。
■里香の中で何かが弾けた
(……なにあれ)
(なんであんな馴れ馴れしいの?)
(ていうか)
(私の圭介に……)
(お財布兼ATMに何してくれてんのよ)
里香、静かに不機嫌モード突入。
トングを持つ手に若干力が入る。
「……圭介、こっち優先。」
「はいっ!?」
なぜか指示の圧が増した。
■一方その頃、釣り池は平和そのもの
「わ〜釣れた〜!!」
「すごーい!!」
穂乃花の弟&妹、大はしゃぎ。
穂乃花「順番ね〜、はい、ゆっくり巻いて〜」
その姿はまるで――
天使。いや女神。
遠くからそれを見つめる圭介。
(穂乃花ちゃん……今日も尊い……)
完全に癒されていた。
■さらに癒し追加
花音は穂乃花の妹と遊んでいた。
「うさぎさんポーズだにょん♪」
「きゃーかわいいー!」
小さな子供と戯れる花音。
それを見た圭介、
(……何この空間……)
(天使が二人いる……)
軽く現実逃避。
■そして男子サイド
明宏「おりゃっ!」
武士「くっ……今のは惜しい!」
並んでキャストする2人。
それを見守る武士の両親。
母「……あなた……」
父「ああ……」
母「うちの武士に……」
父「うむ……」
母「お友達が……!!」
感動。
目頭が熱くなる母。
父は無言で頷きながら、そっと空を見上げる。
(よくやった……武士……)
■しかし当の本人は
武士「よっしゃ!次こそ釣るぞ明宏!」
明宏「負けねーぞ!」
めちゃくちゃ普通に楽しんでいた。
春風そよぐフィッシュ・オン麻生。
その片隅――。
■源蔵&三郎、突然“文学の風”を吹かす
「寺ノ沢先生、わしはのぅ……開高健の“オーパ!”を読んだ時から人生が変わったんじゃ!」
「うむ!“流れる川に魚影あり”じゃ!あれほど魂揺さぶられた本はないわ!」
寺ノ沢先生もノリノリ。
「そうそう、わかりますよ源蔵さん、三郎さん!!開高健こそ釣り文学界の至宝ッ!!」
3人の中でだけ異常に熱い空気が流れている。
■その後ろでは…
愛生・花音・穂乃花・弟・妹
→ほのぼの釣りタイム。
「わ〜釣れたにょん!」
「えへへ、すごーい!」
「わたしも次やる〜!」
そこへ桜&皐月が合流。
「かにょんちゃ〜ん!一緒にやろ〜♡」
「愛生ちゃ〜ん見て見て〜♡」
桜も皐月も――
完全におじいちゃんの存在忘れている。
■源蔵、気付く
ふと振り向けば……
孫たち:
(無)
※光の速さのガン無視
源蔵「む、むむむむ……またしても……孫に置いて行かれた……!!」
三郎「開高健の名を出して盛り上がった瞬間に……あいつらの気配がスッ……と消えた……!!」
開高健、恐るべし。
■ついに“祖父の本気スイッチ”が入る
源蔵「ここは……釣り歴50年のワシらの見せ場じゃ!」
三郎「そうじゃ!ここで鮮烈な一匹を見せ、孫の心をわしづかみにしてみせる!!」
2人はキラリと光るケースから
伝家の宝刀:愛用の投げ竿
を取り出した。
丈も太さも完全に海仕様。
「よっしゃあああ!今日はこれで大物を――!」
■その瞬間、寺ノ沢先生のツッコミ炸裂!!
「はいストーップ!!!!」
ビシィィッ!!
寺ノ沢先生、神速で止めに入る。
「桜さんと皐月さんのお爺さん!!ここは管理釣り場です!!投げ竿は禁止!!ルール違反です!!」
■祖父たち、衝撃を受ける
源蔵「な、なんじゃと……!?」
三郎「な、投げ竿が……い、いかんのか!?」
寺ノ沢先生「いかんです!!ものすごくいかんです!!」
祖父たち、動揺の極み。
■そして最大の悲劇
源蔵「こ、こんなカッコ悪い姿……孫には……孫には見せられん……!」
三郎「ワシら、釣り堀のルールも知らん老害じゃと思われる……!」
震える2人。
しかし――
孫たちの視線はすでに突き刺さっていた。
桜「……おじいちゃん……」
皐月「……ガチで何してんの……?」
冷たい。氷点下レベル。
源蔵と三郎、
孫からの氷点下レーザービーム視線を浴びて完全に石化。
空気:
――パキ……ッ
もう触るだけで割れそうな気まずさ。
寺ノ沢先生も目を逸らし、
圭介もバーベキューのトングを持ったままフリーズするレベル。
■そこへ現れたのは “草食系天使” 花音
ピョコ、ピョコ。
まるで小動物系うさぎ。
草の間からひょっこり姿を見せた花音が、
ぽや〜っとした笑顔で近寄ってきた。
「桜ちゃん、皐月ちゃん。お爺ちゃんにルアー釣り教えてあげるにょん」
その瞬間、空気が変わった。
まるで太陽が出たかのように。
■孫たち、即落ち2コマ
桜「も〜〜しょうがないなぁ〜!……花音ちゃんが言うなら仕方ないかぁ〜!!」
皐月「うんっ!お爺ちゃん、餌釣りしかやらないでしょ?私たちが教えてあげる〜!」
――え?さっきまでの目の冷たさどこ???
■祖父たち、即デレ2コマ
源蔵「お、おおおお……!?
さ、桜が……ワシに釣りを……教えて……!?」
三郎「皐月ぃ……う、嬉しいのぅ……こ、これは……ワシらの“新しい一歩”じゃ……!」
※プライドの高い餌釣り師、
通常なら“他人に教わる”という屈辱を拒絶するはず。
しかし――
孫からなら全部OK。
むしろ大歓迎。
眉毛はダダ下がり、顔は完全にデレ顔。
■即席「孫とお爺ちゃんのルアー教室」開講
桜「はいお爺ちゃん、これがスプーンって言うんだよ!」
源蔵「スプーン……?食器じゃないのか……」
皐月「こうやって巻くんだよ〜!」
三郎「おおお……すごい……すごいぞ皐月……!」
2人とも、完全に孫にメロメロ。
祖父の威厳はすでに地面の底。
花音はその様子を見て
「にょふ〜」
と満足そうに微笑み、その場をそっと離れた。
■圭介、花音天使に感謝
圭介「花音ちゃん、ありがとね。本当に助かったよ」
花音「うんっ」
うさぎみたいに小さく頷く花音。
その笑顔に圭介もつられて優しく微笑む。
……ほんわかムード。
■しかし愛生の視点は違う
愛生(……まただよお兄ちゃん……また花音ちゃんにデレデレしてる……!)
※完全に嫉妬。
兄にだけ厳しい“妹の視力100倍モード”が発動していた。
源蔵と三郎は、孫とのルアー釣りで満面の笑み。
「孫って最高じゃぁ…」という充実感で、見ている沙代里も満足げにうなずいていた。
そして始まる、鱒釣り部・保護者会バーベキュー。
■バーベキュー開始! …のはずが
寺ノ沢先生「ではまず、釣りキチ三平の核心について語らせてもらおう」
乾杯の声をかき消し、
三平講座が始まってしまう。
源蔵・三郎「うむぅ、深い……!」
(※全然乾杯しない)
一方、部員も保護者も
焼肉とジュースでほんわかムード。
そんな中、圭介は
妹の愛生や弟の明宏の様子が気になって仕方ない。
■愛生&花音チーム、今日もふわふわ平和
愛生は、穂乃花&その弟妹、花音と一緒に
まるで保育園のお姉さんみたいに遊んでいた。
花音は今日も小動物のようにピョコピョコしている。
明宏は武士と男子トークで盛り上がり、
「この二人、放っといても生きていけるな」
と圭介は安心する。
■圭介、両サイドから圧を受ける席順にハマる
右:沙代里(優しいお姉さん)
左:里香(圭介ATM保護団体会長)
中央:圭介(逃げ場なし)
まずは右から。
■沙代里の「大人の余裕」
圭介「沙代里さんが源蔵さんの姪だったなんて、びっくりです」
沙代里「ふふ、別に隠してたわけじゃないのよ。今日だけの設定だから」
圭介、苦笑。
そして左側──里香。
里香「はい圭介、お肉♡」
カサッ(黒い)
ジュッ(黒い)
——圭介の皿へIN。
圭介(笑顔なのに怖い!)
焦げ肉が今日も圧倒的存在感を放つ。
圭介「沙代里さん紹介します。僕と愛生の幼馴染の里香ちゃんです。鱒釣り部の部長なんですよ」
沙代里「うんうん、桜ちゃんから聞いてるよ。花音ちゃんと里香ちゃんの大ファンなんだって。
桜をよろしくね」
大人の微笑み。
里香「こちらこそよろしくお願いします(真顔)」
温度差、マイナス5度。
■沙代里の“軽タッチ”が事件を起こす
沙代里「もう圭介くんったら、こんな可愛い幼馴染がいたなんて」
(と軽く圭介にボディタッチ)
圭介「へへっ(照れ笑い)」
その瞬間。
ゴリッッ
圭介「痛っっ!!?」
足を全力で踏みつける里香。
里香(圭介は…私の…大切なお財布なんだから…馴れ馴れしくしないでよ!)
※口では言わないが、目が言っている!!!
■圭介、地雷を踏む(本日2回目)
圭介「あ、そういえば里香ちゃん。今日はお父さん来てないの?忙しいのかな?」
里香「パパの話はしないでっ!!」
圭介(あああああ踏んだああああ!!)
すぐに頭を下げる圭介。
圭介「ごめんごめん!悪かった!」
里香「きっと!今日もどっかのエリアで!
次の試合に向けてプラクティスしてるんだよ!
……もう!バカオヤジなんだから!!」
圭介「そ、そっか〜……ハハハハハ……」
圭介の笑いは、もはや乾ききっていた。
バーベキュー会場の片隅――
そこには、ひとりだけ“動物園のふれあいコーナー”みたいな空気を醸し出している人物がいた。
真綾である。
もぐもぐ……もぐもぐ……
肉には一切手を出さず、ひたすら野菜を食べ続けるその姿。
レタスをちぎっては口へ、キャベツをつまんでは口へ。
「……あの子、ずっと草食べてない?」と愛生が小声で呟く。
「うん、完全にウサギだな」と明宏。
「いや、名前的にはミツバチなんだけどな」と武士。
設定大混乱である。
そんな“草食系の極み”真綾の周りには、当然のように桜と皐月が張り付いていた。
「マーヤちゃん、ニンジン食べる?」
「こっちのピーマンも美味しいよ〜!」
完全に飼育員と小動物の構図である。
「ぼ、僕、普通に人間なんですけど……」
と真綾は小声で主張するが、誰にも届かない。
むしろ――
「かわいい〜♡」
「耳ついてそう〜♡」
と、どんどんウサギ化が進行していくのであった。
――そんなほんわか(?)空間の中、ついに来た。
★本日のメインイベント。
焼きそばタイム
「よぉーし!ここからは俺のステージだ!!」
なぜか無駄にテンションが高い寺ノ沢先生。
鉄板の前に立つその姿は、もはや職人というより“屋台の親父”。
ジュウウウウウウ……
豪快に麺を投げ、野菜をぶち込み、ソースをかける。
「見ろこの手さばき!これが釣りキチ流・焼きそば術だぁ!!」
(釣り関係ある?)
全員が心の中でツッコんだ。
しかし、その勢いと香ばしい匂いにより、
「うわぁ〜いい匂い〜!」
「お腹すいた〜!」
と、みんなの視線は一斉に鉄板へ集中する。
その光景はまるで――
焼きそばに群がる野生動物の群れである。
そんな中、圭介はふと視線を外す。
(……あれ、愛生は……?)
探すとすぐに見つかった。
穂乃花、花音、そして穂乃花の弟と妹に囲まれて、
楽しそうに笑っている愛生の姿。
その笑顔は、今日一番と言っていいくらい無邪気で――
キラキラしていた。
ふと、愛生がこちらに気付く。
ぱちっと目が合う。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
――そんな声が聞こえてきそうな表情。
圭介は、ふっと力が抜けたように笑う。
(あぁ……)
(今日も、いい一日だな)
釣りがどうとか、焼きそばがどうとか、
そんなの全部どうでもよくなるくらい――
ただ、妹が楽しそうに笑っている。
それだけで十分だった。
……その直後。
「圭介!焼きそば取りなさいよ!!」
と里香の声が飛び、
「圭介くん、これ一緒に食べよ?」
と沙代里に腕を引かれ、
「圭ちゃん!肉焦げてるよ!!」
と明宏に呼ばれ、
現実に引き戻される圭介であった。
――今日も鱒釣り部は、
平和で、にぎやかな保護者会だった。




