勇者「そろそろ出勤か」⑦ 1章完
戦士「..........」
彼らは言葉なく立ち尽くしていた。
戦士はただ泣いていた。
勇者はその横顔を見て、嫌な予感がした。
魔王「そしてもう一つ重要な役職がある」
視線が勇者へ向く。
魔王「勇者。お前だ」
勇者「俺は、断る」
魔王「そうか。では貴様は“現状維持”としよう」
勇者「……は?」
魔王「だが、お前の立場はすでに決まっている」
魔王は勇者に紙を突き付ける。
そこにはこう書かれていた。
“勇者:対外調整責任者(暫定)”
勇者「...誰が決めた」
魔王「貴様らの国王だ」
その一言で、空気が止まる。
魔王「王国はすでにこの枠組みを了承している。お前たちは“魔王討伐部隊”ではない」
魔王「“魔王との定期協議窓口”だ」
勇者「じゃあ俺たちがやってた戦いは、一体なんだったんだよ......!」
魔王は少しだけ目を細める。
魔王「......プロトコル違反の演習だ」
沈黙。
魔王「だが安心しろ。役割は残る」
魔王「勇者、お前は——」
魔王「人間側との調整役だ」
勇者はゆっくりと拳を握る。
勇者「つまり俺たちは......」
魔王「そうだ」
魔王「戦争の終了後に残る、“処理係”だ」
その言葉が、やけに重かった。
外ではもう戦火は無くなるのだろう。
だが代わりに、契約と報告書と更新期限が世界を支配している。
魔王「では本日より、新体制を開始する」
魔王の声だけが響く。
魔王「勇者一行は、魔王軍統治局との連携部署へ移管」
魔王「異議は?」
誰も、すぐには答えられなかった...
RRRRRRRRRRRRR・・・・・・・
赤く染まった煙草の灰が床に落ちた。
静かな部屋に鳴り響く携帯。
勇者は携帯を拾い着信が誰か見た。
勇者「......商人か」
ピッ
勇者「俺だ。で、納期はどうだったんだ?」
商人「はぁーーもう今回だけですよぉー。特別に明後日ぐらいには納品できるみたいです」
勇者「だったら初めからそうやって段取りしとけや」
商人「はいはい、それじゃあいつも通り配達させるんで」
ピッ
勇者「.......はぁー、、、、だりぃー」
未だに着慣れないスーツの裾を通す。
ネクタイを締める。
勇者「出勤...か」
第一部完




