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勇者「そろそろ出勤か」  作者: 小鳥遊 佑鷹


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勇者「そろそろ出勤か」3章15話 最終話

数日後


柔らかな朝日が、村外れの丘を照らしていた


そこには、新しい墓が一つだけ増えていた


墓石には、


『リリア』


その名前が静かに刻まれていた


墓の前に立っていたのは、骸骨戦士だけだった


風が吹く


供えられた花が、小さく揺れた


骸骨戦士は何も言わない


ただ、土の上へ落ちていた一枚の葉を拾い、脇へ退ける


背には、勇者から託された剣


傍らには、二人の文字が残る手帳を収めた鞄


長い年月を共に歩いてきたものだけが、今も残っていた


骸骨戦士は鞄を肩へ掛ける


最後に一度だけ墓石を見る


それでも、何も言わなかった


静かに背を向ける


朝露に濡れた草を踏みながら、丘を下りていく


その背中は、少しずつ朝靄の中へ消えていった


どこへ向かったのか


どれほど歩き続けたのか


その後、誰と出会ったのか


知る者は、誰もいなかった


骸骨戦士の姿を見た者も、


それきり、誰もいなかった


――それから、どれほどの年月が流れたのだろう


春


名も知らぬ森の中


暖かな陽射しが木々の隙間から差し込んでいた


小鳥の声が聞こえる


若葉が風に揺れ、木漏れ日が地面の上をゆっくりと動いている


二人の旅人が、細い山道を歩いていた


長い旅の途中だった


先を歩いていた旅人が足を止める


道から少し外れた場所


木々の間から、淡い青色が見えた


花だった


春の陽射しを受け、幾つもの青い花が咲いている


旅人は珍しそうに目を細める


誘われるように、ゆっくりと道を外れた


彼らは草を踏み分ける


青い花は、奥へ進むほど数を増していく


やがて視界が開けた


森の中に、小さな陽だまりが広がっている


その中心


大きな木の根元に、何かが座っていた


古びた鎧


白い骨


「……うわ!」


先を歩いていた旅人が、思わず後ろへ跳ぶ


腰の剣へ手を掛けた


もう一人の旅人が急いで駆けつける


「どうした?」


「骸骨だ……魔物かもしれない」


「……待て」


二人はその場から動かず、しばらく骸骨を見つめていた


だが、骸骨も動かなかった


風が吹く


木々が揺れる


青い花が静かに波打った


それでも、骸骨は何も反応しない


彼らは剣へ手を掛けたまま、ゆっくりと近付く


一歩


もう一歩


やがて、その姿がはっきりと見えた


骸骨は、大きな木へ背を預けていた


長い旅の途中で休憩するように、穏やかに座っている


古びた鎧は錆び、所々が土へ還り始めていた


肩には苔が生え、


鎧の隙間からは若草が伸びている


細い蔦が骨の腕へ絡み、


小さな葉が風に揺れていた


戦った跡はない


苦しんだようにも見えない


そばには、一本の剣


長い年月を経ても、剣は鞘へ収められたままだった


勇者から託された剣


その刃が再び誰かへ向けられることは、最後までなかった


骸骨の手は、胸元の古びた鞄へ静かに添えられている


旅人は剣から手を離す


目の前にいる骸骨は、


魔物というよりも、


ただ静かに眠っているように見えた


その周りには、淡い青い花


その花は、


本来なら僧侶の村でしか咲かないはずだった


足元だけではない


前にも、


後ろにも、


右にも、


左にも


骸骨を優しく包み込むように、円を描いて咲いていた


残されていた種は、すべてこの場所で花を咲かせていた


骸骨のそばには、朽ちた小さな布袋が落ちている


中にはもう、何も残っていなかった


「なんで、こんなところに……」


彼らは、花に囲まれた骸骨を静かに見つめる


「……なんだか、穏やかだな」


「……あぁ」


彼らは知らない


この骸骨が、かつて戦士と呼ばれていたことを


勇者たちと共に旅をしたことを


村を守り、


誰かを助け、


何も言わずに立ち去り続けたことを


何十年も、


何百年も、


誰かのために歩き続けたことを


二人は、骸骨を囲む花を見つめる


やがて、一人の旅人が骸骨の前へ静かに膝をつく


胸の前で両手を合わせた


「……どうか安らかに」


やがて、祈りを終えた旅人が立ち上がる


二人は、


剣にも、


花にも、


鞄にも触れないように、


青い花を踏まないよう、来た道をゆっくりと戻っていく


二人は森を抜ける前に、一度だけ振り返った


春風が吹き抜ける


淡い青い花が優しく揺れていた

最後までお読みいただきありがとうございました!

少しでも面白いと思ったら、下の『★評価』や、『フォロー』で応援していただけますと励みになります!


この作品が初作品として、かなり練って頑張ったんですが、まだ荒いところもあるかなと思います

ちょこちょこ推敲と改稿しながらできればと思っております!


ありがとうございました!

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