九十三話 カムイとスマホ
——ズガガガ!
——ガゴーン!
ジュラルの鉄骨と、ジェットの蹴りが激突する。
「やるじゃねぇか。少し見直したぜ」
ジェットは邪悪に笑った。
「当たり前だろ? 成長しないイケメンはイケメンじゃないからな」
「……フッ」
ジェットは思わず笑い、ジュラルから距離を取った。
——その頃、オーロたちは。
「えぇ〜、私たちガン無視でバトることある?」
「ミーらは参加資格なしってかヨ」
マリオとヒバリは呆れたように声を漏らす。
「まぁまぁ。いいじゃないですか。ピリカ〜、ピリカ……あっ、ピリカは大丈夫って意味です」
アゼルはのんびりと笑った。
「……さてぇ」
その瞬間、アゼルの目から緩さが消えた。
「トゥミコㇿの始まりだね〜」
次の瞬間、アゼルはサザメキとの距離を一気に詰めた。
「君の相手は僕がする。ヒバリちゃんたちは適当にサポートしといて〜」
「「雑用かよ!」」
マリオとヒバリの声が揃った。
「アゼルの相手は小生に任せろ。オーロ、ホイップ、サポートよろしく」
「「任せろ!」」
オーロとホイップは後衛へと下がった。
——弾丸拳。
サザメキの拳が、踏み込んできたアゼルへ滑り込む。
——ドッ!
「ぐっ……!」
衝撃を受けたアゼルは空気を吐き出し、地面に着地した。
(へぇ……予備動作なしでこの火力かぁ……)
「バフは俺に任せろ!」
——悪戯心。
オーロの固有魔法。
バフもデバフも、対象に必中で付与する能力だ。
「なるほどね〜。バフ込みの火力かぁ〜。ありがとね、木の精霊さん」
「……お前、大丈夫か?」
サザメキは困惑したようにアゼルを見た。
「え? 『あの人、困ってるでしょ? 説明しなさい?』……だってさ」
アゼルは隣の虚空へ視線を向ける。
「あ〜ぁ。僕の周りには、たくさんのカムイがいるんだよね〜。カムイには全部お見通しってわけ」
「……何を言っている?」
サザメキは眉をひそめた。
「でも、それにしても強いねぇ〜。まるで……本気で殴られたみたいだ」
アゼルは近くの木に耳を傾けた。
「あ〜ぁ、そういうことね」
そして、納得したように頷く。
『あの人の攻撃は、どんなに軽く打っても、全部本気の威力になっちゃうんだよ』
「……固定火力、だっけ?」
「……! 何故それを……!」
サザメキの目つきが変わった。
「だから、精霊さんが——」
——ヒュッ!
サザメキは説明を待たず、再びアゼルへと踏み込んだ。
(貴殿の話を理解するのは無駄。ジュラルに守られてばかりじゃいけ——)
——ジャッ!
「二度も同じ手は喰らわないよ?」
アゼルは振り上げられたサザメキの腕を掴む。
そのまま身体を回転させ、背負い投げの要領で地面へ叩きつけた。
——ドゴッ!
「ガハッ……!」
サザメキは地面に激突し、肺の空気を吐き出した。
「サザメキ!」
仲間の声が響く。
だが、マリオはすかさず地面に手をついた。
「オマエラ、よそ見するナ。オマエラの相手はミーらだ」
——地形変形。
——ズドドドッ!
マリオが手を触れた地点から、地面が次々と隆起する。
土の壁が戦場を分断し、サザメキたちとオーロたちの間を遮った。
「これで邪魔はないナ。ヒバリ、厄介なサポーターをさっさと片付けるゾ」
「言われなくてもそのつもりよ」
ヒバリはマリオと目を合わせないまま、ニッと笑った。
「ただのサポーターだと思ってると、痛い目みるよ?」
ホイップもまた、邪悪に笑う。
(ホイップクリームしか生成できなくて、攻撃力実質ゼロですよ!? ホイップさん!?)
オーロは頭を抱えた。
——泡甘濁流。
——ゴボゴボゴボッ!
ホイップクリームの濁流が、ヒバリへと押し寄せる。
(……え? ホイップクリーム!? やった〜! 舐め放——)
「危ない!」
マリオは咄嗟に土の壁を築いた。
——ドバシャッ!
濁流が壁にぶつかり、白いクリームが飛び散る。
「ちょっと! マリオ、何避けて——」
「アレ、危険」
「はぁ?」
ヒバリは楽しみを邪魔された不満を隠そうともせず、マリオを睨んだ。
「だって、ただのホイップクリーム——」
「よくわかったね? ヒゲのおっさん」
ホイップは不気味に笑った。
「そのクリーム、舐めると甘すぎて脳がグズグズになって溶けるよ」
「「……!?」」
ヒバリとマリオの顔が凍りついた。
「あ〜ぁ、もうちょっとで溶けた脳が口から——」
「ホイップさん? 平然とグロいこと言わないで?」
オーロが慌ててホイップの口を塞いだ。
「あのオンナ、いかれてるヨ……」
マリオは顔を引きつらせながら、土の壁を上空へと配置する。
——地形創造。
マリオの想像した地形や障害物を具現化する魔法。
「イカれた奴は、さっさと黙ってもらウ。ジェットに何かされても困ル」
——土石砕。
上空に出現した巨大な土の壁が、オーロたち目掛けて落下する。
「ホイップ、避けろ!」
オーロたちは咄嗟に身構え、回避しようとした。
——しかし。
「はいはい。動かないで〜」
——パシャッ。
ヒバリがスマートフォンを構え、オーロたちを撮影した。
「……?」
オーロは構わず動こうとした。
だが。
(……動けない!?)
手も、足も、指先すら動かない。
まるで身体が人形になってしまったかのようだった。
(さっきのシャッター音……!)
視線の先では、ホイップも同じように動きを封じられていた。
「いやぁ、異世界転移して、まさかスマホが私の武器になるなんてねぇ」
ヒバリはスマートフォンを片手に、楽しそうに笑う。
——画像化。
ヒバリの固有魔法。
スマートフォンで撮影された生物の動きを、強制的に十秒間、完全に停止させる。
それだけの、至ってシンプルな能力。
彼女は異世界に転移してから、わずか三日でこの魔法を習得した。
(まずい。当たる……!)
オーロは迫り来る巨大な土の壁を見上げた。
逃げられない。
動けない。
——ズドッ!
轟音が戦場に響いた。
巨大な土塊が地面へと叩きつけられ、土煙が舞い上がる。
その下に、オーロとホイップの姿はなかった。
「次回予告だねぇ。」
「ちょっとここではマジ、カムイ?と話しないで?」
「読者ついてこれないヨ……。」
「え?『私も次回予告にでたい!でたい!でたい!』も〜ぅ駄々っ子なんだからぁ〜」
((カムイって駄々っ子なの?))
『おらぁ!やった!行けた!』
「「喋ったぁああ!」」
「次回……。」
「「「怒る英雄と何も知らないもやし」」」
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