表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/63

第二話 カップラーメンと楽園

カップ麺でお腹が満たされると、

人は少しだけ、本当のことを話せるようになります。


世界をどうしたいとか、

誰を救いたいとか、

そんな大層な話じゃなくて。


——どこへ行きたいのか。

——なぜ、旅をしているのか。


ガラクタだらけの秘密基地で、

二人はようやく「目的」の話をします。


たぶん、ここからが本当の旅の始まりです。


四人殺した直後とは思えないほど、空気は静かだった。


「……僕が怖くないの?」


エリックは、頭に浮かんだ一番最初の疑問を口にした。


理解できなかった。


目の前で人を四人も殺したというのに、リサは真っすぐで、純粋に心配する目で彼を見つめている。


「怖い? あはは。そんなわけないじゃないですか。私を助けてくれた()()()ですよ」


リサは至極当然のように言った。


「……よせ。慈悲はいらない。僕とは関わらない方がいい。」


エリックは視線を逸らす。


「僕はきみのような純粋な魔法じゃない。ドロドロの、人を殺すためだけの魔法だ」


「これ以上僕のようになって欲しくないんだ」


それが、エリックの最大の優しさだった。


「——それ、変ですよ」


リサはきっぱりと言った。


「だってあなた、さっきまで“関わらない方がいい”って言ってた人が、今は私のことを心配してるじゃないですか」


エリックは言葉に詰まる。


「人を殺す魔法かどうかなんて、正直わかりません。でも」


リサは耳に触れる。血の跡がまだ残っている。


「私はさっきまで生死をさまよっていました。なのに今」


胸に手を当てる。


「こうして生きているじゃないですか」


「それって、あなたの魔法が私の命を残してくれたおかげじゃないですか」


小さく笑う。


「ドブみたいな魔法でも——救われた人が、ここにいますよ」


(こいつ、僕の汚い魔法が綺麗に見えたのか?)


「……理屈がずるい。あと褒められてちょっと照れるだろ」


「さっきまでかっこよかったのに情けないですね」


「……うるさい」


エリックは空腹を抑えるように腹を押さえる。


——グゥゥ……。


「あなたのお腹は本当に正直ですね」


リサはクスリと笑った。


「……この辺、夜になると治安が悪い。それに僕の拠点が近い。食べ物も少しだけある。来るなら付いてこい」


エリックはわざとぶっきらぼうに言い、返事を待たずに歩き出す。


背後で、しばらく沈黙。


(来るか、来ないか)


そんなことを気にしている自分に気づき、エリックは舌打ちした。


「怖いかどうかより、その音の方がよっぽどインパクトあります」


リサは楽しそうに付け加えながらついてきた。


しばらく海岸線を歩くと、ボロボロの小屋にたどり着く。


「……入れ」


エリックはリサを先に通す。


(ふーん。こういう礼儀はある人なのね……)


その感想は、すぐに消えた。


(なにこれ……?)


小屋の中はガラクタと魔導書だらけの、ほぼゴミ箱だった。


「これは……なんですか?」


「フフン。これが僕の最強の秘密基地(アルティメット)さ」


「名前、適当すぎません?」


エリックはどけて座る場所を作る。


テーブルに、コード付きのガラクタを置いた。


コンセントに刺さる。


「これは電気ケトルだ。お湯を沸かせる」


「魔法でよくないですか?」


「……!」


その後、エリックの講義が始まった。


「掃除機というのはなぁ……」


「日本の機械技術は……」


(長い)


「いつまでしゃべってんだ!そろそろご飯出せ!」


「すまない、僕の悪い癖だ」


エリックはカップ麺を取り出す。


「で、一応言っておくけど僕の名前はエリックだ」


「私はリサ。エリックさんの話、長すぎてお湯冷めてますよ」


リサは魔法でお湯を温め直し、麺に注ぐ。


「「いただきます」」


湯気の中、二人は麺をすする。


「うん。実に庶民的なうまさだ」


「褒めてます?」


「何百年たっても色あせない味だ」


「それ、褒めてるんですか?」


リサが箸を止める。


「で、エリックさんのこと何にも知らないんだけど」


沈黙。


湯気が揺れる。


「そうだな」


一拍。


空気が少しだけ変わる。


「食事の機会に、僕のことを教えよう」


(来る)


リサは何も言わない。


ただ見ている。


エリックはカップ麺を置く。


「僕は——」


言いかけて、止まる。


視線がわずかに揺れる。


「……いや」


小さく息を吐く。


「やめておこう」


軽く笑う。


「こういうのは、もっとつまらない時にする話だ」


(戻った)


そう思ったはずなのに。


どこかだけ戻っていない。


「……そうですか」


リサはそれ以上聞かなかった。


ただ麺をすする。


沈黙。


静かで、不思議と居心地の悪い沈黙ではなかった。


エリックは視線を落としたまま、小さく呟く。


「……そのうち、話す」


それは誰に向けたものでもなかった。


湯気の向こうで、言葉は溶けていく。


二人は、何も言わずに食べ続けた。

楽園(エデン)って知ってるか?」


「名前だけは。おとぎ話の場所ですよね?」


「そこに行けば、 過去も、因縁も、全部清算できるらしい」


「……便利すぎません?」


「だから、行く」


「理由、それだけですか?」

——十個の地図の破片。

——十二個のアーティファクト。

——一つの国に、一つだけ。


「……つまり、長旅ですね」


「そうだ。金もない」


「最悪じゃないですか!」

「次回、」


「「くだらない魔法と小さな花」」


「次回はいつかもう一回見直した方がいいぞ。」


「なんでですか?」


「なんとなくね。」


ここまで読んでくれてありがとう!

もしこの先が少しでも気になったら、☆☆☆☆☆を★★★★★にしてもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
素晴らしい作品ですね。コメントを読んで、あなたのインスピレーションの源を知ることができて、とても楽しかったです :) あなたがこのサイトに参加し、執筆に一生懸命取り組んでくれていることを嬉しく思います…
ある人にとって無価値だったり忌まわしいものや、意図しない偶然が、ある人にとっては救いになって、何も無いところからプラスもマイナも積み重ねが始まっていく。 そういう始まりが大好きだ!
お気遣いありがとうございます! とてもありがたいのですが、まずは今公開されているお話を最後まで読んでから、活動報告のQ&Aに参加させていただきたいと思っています。 作品がとても面白いので、しっかり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ